「俺とアイツ」夏シネマ
 

 
「やめ……やめてっ! 加藤!!」
俺の這い回る手と舌に、困惑声を上げる。
 
カオにも戸惑いしかなくなった。俺はまたリオに、あの目つきをさせたかった。
「ぁあ……!」
萎えている小さなモノを掌で包んだ。
上に向けて、下から揉み上げる。
「……ぁっ……はぁ……」
「リオ……羨ましいって言ってたろ。板谷部長のこと。……親友っていいなって」
反対の手でつんと尖った胸を摘みながら、耳元で囁いた。
ビクンと背中を反らせて、唇を震わす。
「んぁぁっ………やぁ」
「俺、リオとそうなりたいんだ」
「……!!」
真っ赤になった目を、俺に向けてきた。
「し……しんゆうって、こんなこと、しないよねっ!?」
叫んだ唇を、また塞いだ。佐倉先輩みたいに、舌を入れて中を探る。
「んんーーっ!」
その間も、胸と下の愛撫はやめない。上下させている掌の中のモノが、少し硬くなってきた。
リオに跨っている俺の方はもう、完全に上を向いて、ヤツにもそれは伝わっている筈だ。
「…はぁ……んぐっ……」
唇を離すと、タオルを咥えさせた。
胸、脇腹、腰骨…と舌を這わせて、唇が下腹部に辿り着いた。
ゆっくりと、扱いていた先端を舐め上げる。
激しく腰がゆれる。
「んんーーーっっ!!」
鈴口まで口に含んで、その下を輪にした指で扱く。だんだん唇を降ろしていって、指と入れ替えていく。
リオは俺の口の中で、すぐに硬く大きくなっていった。
―――温かい……脈打ってる……
生のリオに、俺は興奮が収まらない。
息遣い、熱、汗の臭い…スクリーンからは想像でしか伝わってこなかったそれを、今体感している。
扱く唇が、早くなってしまった。
「んんっ、……んんっっ…ぁあああ……!!」
ビクンと大きく震えて、口の中が熱く弾けた。
「――んっ」
喉の奥まで熱い液体が届いて、俺も小さく呻いた。
勢いで、全部飲み干した。
――はぁ……
身体を起こすと、あのフィルムの最後の顔が、そこにあった。
目を閉じて、幾つもの涙のすじを頬に伝わせている。
頬は真っ赤で、胸は激しく上下していた。
俺はまた耳元で囁いた。
 
「俺は、脅して入部させようなんて…もう思ってない」
涙はまだ、頬を伝い続ける。
「これで嫌われても、親友どころか、ダチでなくなってしまっても…」
 
「……お前が欲しいんだ」
 
 
 
 
「………」
  
濡れた睫毛が、微かに動く。
薄目を開けて、潤んだ瞳が俺を視界に入れた。
「部員勧誘みたいなことばっか、言ってきたけど……俺、わかった」
「…………」
「画面映えするお前の顔、フィルムに収めたかった……」
汗が光る額の髪を掻き上げて、紅く染まってる顔に微笑んだ。
「………その顔、俺だけがファインダから見つめて、独り占めしたかったんだ」
「…………?」
リオはただ、眉を寄せた。
「俺、お前が好きみたいだ」
「――――っ!!」
タオルの奧で息を呑んでいる。目を見開いて、凝視してきた。
「んんっ!!」
リオの答えなんかいらない。聞きたくない。
――今は、ただ手に入れてやる!
俺はまた胸を舐め回し、手を下に降ろしていった。
指を後ろの閉じた部分に這わせて、奧を探る。
「……んぁああっ!」
腰が嫌がって、揺れた。
「リオ……」 
身体も下げて、舌をそこに入れた。
「……んぁっ…、ぁあ……」
脚を広げさせ、俺の愛撫で腰を揺らせて。
リオが…熱くなっていく………
舌と指と入れ替え、さらに奧を探る。
「……ぁあああっ」
背中を仰け反らせて、指を受け入れていく。
「…リオ……リオ……」
俺はもう我慢出来なかった。
熱い滾りを取り出して、あてがった。
「んんーーーっ!!」
恐怖の声で嫌がる腰を押さえ付けて、無理矢理押し込んだ。
「んんーッ!! ……んぁぁあああ!!」
目をぎゅっと瞑って首を振っている。
辛そうな顔に、汗が幾筋も伝っていった。
俺は強引に全部埋め込んだあと、しばらく動けなかった。
―――すげ……あったかい……
口を塞いでいるタオルを、外してやった。
手首の拘束も解いた。
「リオ……」
俺はリオの背中に手を回して抱き締めると、ゆっくり腰を動かし始めた。
「いたっ……痛い……加藤…!」
喘ぎ喘ぎ、そう訴えてくる。
その声さえ、愛しい。生の声だ。
「…熱い……お前のなか…」
俺は夢中で腰を動かした。
「…ぁッ…ぁああッ……!」
頭を抱え込んで、痛がるリオの声を自分の荒い呼吸で掻き消して。
「痛ッ……痛いッ……! ……バカッ……加藤のバカッ……!!」
――はぁッ……はぁッ……
気持ちイイ……。腰がどんどん高まっていく。
リオの中は、俺が動いているのに、扱かれている感じだった。
「…ぁあっ! …ぁああ……ぁああ……」
胸の中の息も、かなり熱くなってきて……。
腹の間にある、萎えていたリオのそれも、また大きくなっていた。
「リオ……」
それを掌中にして、殊更激しく腰を打ち付けた。
「あッ…あッ…、かと……かとうッ……」 
仰け反った小さな口が、俺を呼んだ。
―――リオ……
キスも夢中で繰り返す。
―――ぁあ…ぁああ……イク……
「んぁ……あぁッ、…ああぁッ!! ……いく…かと……イク…イクッ…!!」
ドクンッ! と、リオの中で俺が弾けた。
リオももう一度俺の掌で、イっていた。
 
―――気持ちいい……リオん中……
 
いつまでも脈打つ俺。…気持ちよくて、リオから出れない。
 
 
「へたくそっ」
上から、声が降った。
「……ヘタクソッ!!」
もう一度叫ぶ。
「…………」
俺はリオの胸に押し付けていた顔を、持ち上げた。
潤んだ目が、俺をきつく睨み付けてくる。
「板谷先輩の指テクは……最高で…気持ちよかった」
顔を真っ赤にさせながらも、唇を震わせた。
「でも、加藤は痛いだけだった!」
「…………」
「何度もそう言ってんのに、加藤…ちっとも聞いてくれないっ」
涙目で、泣き声で、文句を言ってくる。
…………。
「……ごめん」
聞こえてたけど……夢中で、優しくなんてできなかった。
「……ごめんな」
もう一度言った。
「………………」
目を合わせて、2人で顔を赤くさせた。
「いいから、ぬいてっ!!」
リオから出る時、きゅっと締め付けられた。
「……んっ…」
小さい声を漏らして、眉を顰めている。
その顔に、見惚れた。
 
「リオ……。俺、お前が好きみたいだ」
 
また、言ってしまった。
「……さっきから、”みたい”って、なにっ!?」
赤い頬を膨れさせて、目を吊り上げて怒鳴ってきた。
俺はちょっと狼狽して、視線を彷徨わせた。
眼鏡を押し上げて、リオを見つめなおす。
「だって……さっき、自覚したから。……自分でも驚いてんだ」
目を丸くして、見返してくる。
「ぼ……僕は好きじゃないよ! 加藤なんか!」 
 
「…………っ」
ちょっと、ズキンときた。
そりゃ、そうだ。こんなコトして…… 
「……俺は好きだ…。脅してでも、リオが欲しかった。……心も…身体も」
 
……あの先輩たちみたいに、ずっと一緒に居て欲しいと思ったんだ。
 
「痛くして…ごめんな」
真っ赤になって、言葉を無くしたリオに、もう一度謝った。 
 
「………へたくそッ!」
無遠慮に、また言ってくる。
俺はちょっと悔しかった。
……板谷先輩の、指テクって……
黙らせたくて、腕の下のリオを、胸に抱え込んだ。
「……わっ……加藤…!」
「一年間、毎日ヤッてりゃ、上手くなる」
抱え込んだ頭に囁いた。
「………えっ?」
慌てた声。
「その間に、お前は俺を好きになる」
「なっ……何言ってん……」
藻掻いて起こした顔に、もう一度キスをした。
 
「…………かとー…」
 
「俺は、お前しか見ない。他のヤツを撮影したって、俺が見つめるのはお前だけだ」
「…………」
「だから、その笑顔を……俺だけにくれ」
 
頬を染め直したリオは、困ったように眉を寄せた。
「でも……上映したら、僕の笑顔…ばらまくことになるよっ!」
「……ふ」
俺は嬉しくて、つい笑った。
「なに、なんだよっ?」
――脈がある答えに、気が付いてないのか?
腕の中で、強がって睨み付けてくるその眼を、じっと見た。
「………過去の目線なんて、どうでもいい。そんなもの全校生徒にくれてやるよ」
「………!!」
「生のリオが、いつも俺を見ていてくれるなら、それ以外いらない」
「……なま! ……なまって……なんだよっ」
「うるさい。だから、映研、入ってくれ」
「………ヤ〜ダ〜!」
―――強情なヤツだな。
「なんで、そんなに嫌がるんだよ?」
起きあがると、リオの身体も抱き起こした。
正面に向き合って、ベッドの上で座り込む。
痛そうに顔を顰めながらもなんとか座り込んだリオは、ちらりと俺を見上げると、恥ずかしそうに視線を落とした。
「……先輩たちに嵌められた時は……ただ、悔しくて」
「……うん」
「加藤もそんな卑怯な手を使うヤツかと思ったら、余計腹が立って……」
「うん…」
また上目遣いに見上げてきた。
「僕……、無責任に入部しても、責任もてないよ」
「………?」
「僕、飽きっぽいから……趣味なんて持てないほど、なんにも集中しないからさ」
「…………」
「一生懸命、もの凄く真剣に取り組んでる加藤に、悪いと思って。………迷惑かける」
「……そんなこと」
―――どんな、深刻な理由があるのかと思えば……
「……え〜?」
「そんなことかよ!」
俺もリオも目を、丸くした。
「……僕は、真剣に悩んでんのにっ!」
「そんなん、問題ない! 振りをすればいいんだ」
「………フリ?」
「そ、振り。映画を好きな振り。演技が好きな振り。そう言う自分を演じてみるんだ」
「……え〜?」
「そのうち、頭が騙されて、本気でそう思いこむから」
「………なんだ、それ。そんなんでいいの?」
リオの顔が、やっと少し笑った。
「事実、俺はそうやって変われた」
「…………?」
「リオの前では、何かと話しかけて、必死に笑顔作ってたけど」
手を伸ばして、ベッドサイドの棚に置いてある、今は使っていない眼鏡を掴んだ。
「ホントは、口数の少ない、黒縁眼鏡のイモ男だったんだ」
先輩達が、変わるキッカケを作ってくれた。
懐かしく思いながら、眼鏡をかけ直した。久しぶりに掛けたガラスレンズは、ずっしりと重かった。
「えっ…うわ……」
リオは、無遠慮に顔を顰めた。
「お前……少しは気ィ使えよ」
「あは……ごめん。だって、ほんとに違うから」
「…………」
俺は眼鏡をかけ直した。改めて、今の眼鏡の軽さを実感する。
「うん、こっちが加藤だ」
無邪気に笑うリオ。
……可愛すぎるだろ。
俺は、また欲望を滾らせてしまった。
「もう一回……」
「………え?」
「リテイクだ。……リオは、早速俺を好きな振りだ。そっから、始めろ!」
「……や……やだっ…」
抗うリオの手首を押さえた時、赤く擦れた跡が視界に入った。
ズキンと、胸が痛くなった。
「俺…先輩の真似して、もっと上手くヤルから」
「えっ! いいよそれは……」
「………?」
急に赤くなったリオを、見下ろした。
「だって……抱き締めたり…囁いたり……それは、僕…気持ち良かった」
「……リオ」
「……そこは、加藤がしてくれたこと」
手首を掴まれたまま、下を向いてしまい、つむじだけ俺に見せている。
―――うわ……俺、もう…止まんねーかも
「……キスは?」
顔をよせて、唇を近づけた。
「!! …や〜っ!! 佐倉先輩の方が、断っ然、上手いっ!!」
首を捩って逃げようとするのを、むりやり捕まえて舌をねじ込んだ。
「んんっ〜〜!!」
かなり強引に、嫌がらなくなるまで、口の中を舐め回した。
「ん……ん………」
最後は、ピチャピチャと軽い音を立てて、お互いの舌を絡め合った。
「………はぁ……」
「……合格?」
息の上がったリオを覗き込む。
真っ赤にした頬で、可愛く頷いた。
「………リオ」
抱き締め直した腕の中で、俯いたままリオが小さな声で呟いた。
(……僕ね、先輩たちにあんなことされてから……困ってたんだ)
そう言って、小さく肩を震わせた。
「…………リオ」                
「で……でも、…加藤のこと、好きってわけじゃ…ないよ!」
俺は無言で抱き締めた。
もう言葉はいらない。一年掛けて、テクを磨くだけだ!
俺は懲りずに、リオの身体に手を這わせた。
 
「……ぁあッ、……カトーッ!!」 
 
 
 
 
 
――こうして、俺たちの高2の夏は終わった。
無理矢理キスした2人きりの部室も、この部屋でのことも……俺はずっと忘れない。
来年の夏は、きっと笑える思い出になっているはずだから。
素敵な先輩達に、感謝を込めて――
 
 
 
 
 
エピローグ
 
「あれだよ、功一が目に付けたコ」
「はあん、………かわいいね」
 
俺とリオは、2年の教室の入り口から、中を覗いていた。
3年のネクタイをしている俺たちを、奇異な目で見守る下級生達。
 
功一の横で、静かに座っている子。
ストンとした髪の毛が、さらさらと動くたびに揺れる。
白目なんてないほど、真っ黒い大きな瞳。前髪の隙間からも、はっきりわかる綺麗な二重。
一見、大人しすぎる気はするけれど、ハイライトを当てた時の顔を想像すると、絶世の美少年になること請け合いだった。
 
「コウ!」
リオが呼ぶと、嬉しそうに功一が気が付いて、すっ飛んできた。
「部長、副部長!!」
「どうよ、落ちた?」
俺が聞く。
「ダメです、アイツ…恥ずかしがってて」
そう言って、3人で見つめた先には………
 
 
可哀想な子羊が、怯えた目で、俺たちを見返していた。
 
 
 
 
「加藤……合宿が、楽しみだね」
ベッドの中では、キミタカと呼んでくれるようになっていた。
そのリオが、瞳を煌めかせる。
「……ああ、映研の夏がまた、始まるな」
 
 
俺たちは、あの山奥の合宿所で浴び続けた、嵐のような蝉の声を、思い出していた――――
 
 
 
 
THE END 

続編 /8ミリ / 長編SS短中編