真夜中のページ・ボーイ
 
9. 迷宮回廊 
 
「うぁ……疲れた……!」
途中の休憩時間で、僕は休憩室でのびていた。
 
  
休憩室は、手前に8人掛けのスチールテーブルがあり、簡単なシステムキッチンと冷蔵庫がある。
その奧にカーテンで仕切られて、ちょっと横になれる畳スペースが二畳分ほどあった。
 
今日という今日は、そっちでノビていた。
傷んでしまうから、もちろんベストは脱いで。
 
 
―――なんか、このパターンが多いな……最近。
 
真上の二畳分しかない、四角い天井を見上げた。
こんなじゃ、身体が保たない……。
腰が変な痛みを、訴えている。
「…………はぁッ…」
そこが疼いたような気がして、慌てて溜息で誤魔化した。
――なんとか深夜のルームサービスを、辞めたいなぁ……。
昼間も、アイツに会いたくないよ……。
茶色い天井にあの男の顔がちらついて、ぎゅっと目を閉じた。
 
 
「……ん?」
頭上に投げ出した手の先に、小さな本があった。
摘み上げてみると、それは……
「うわっ! ……ポルノ小説!?」
 
河霧八雲(かわぎり やくも)のだ……!
エッチとサスペンスの王道の人!
 
――うわ……すっごいヤラシイんだよ、……これ
 
身体を起こして、座り直す。
ドキドキして、表紙を眺めた。
やっぱり、トレードマークのイラスト。下着一枚の美女だ。
乳首なんか、出しちゃってる。
新刊らしく、際どい煽り文句の帯も付いていた。
「………………」
誰のだとか、どうしてここに、とか。
そんなことより、1ページ目を開くかどうか、心の中で押し問答してしまった。
 
その時、狩谷チーフが休憩所に飛び込んできた。
「……うわっ!」
二人同時に叫んでいた。
 
――ちっ……チーフ!
 
僕は手の中の本の所在に、慌てた。
――ど……どうしよ! こんな本!
 
あわをくっている僕の手から、文庫本を拾い上げて、チーフが一言。
「これ、オレの。忘れたから、取りに来たんだ」
 
「えっ! チーフの……?」
真っ赤になりながら、聞き返してしまった。
そんなの、もうどうでもいいのに。
 
狩谷チーフは僕を見て、意地悪そうに笑った。
「なに、これ見て勃った?」
「――――!」
真っ赤になっている僕を、楽しそうに覗き込んだ。
普段、めっちゃ無愛想なのに、この人!
 
「―――あれ……」
その顔が、妙に真剣になった。
「…………?」
  
「―――おまえ……」
「………はい?」
 
まじまじと、畳に座り込んでる僕を、眺めはじめた。
「……お前さ…」
言いながらにやりと嗤うと、いきなり僕の股間に触ってきた。
「ひゃっ!」
思いも掛けないチーフの行動に、飛び上がってしまった。
 
「……似てる」
「――え?」
 
狩谷チーフの、きらりと光る目を、思わず見返した。
 
 
「須藤、変なバイト……してるだろ?」
 
――――――!?
 
「……なんの…こと……」
 
 
 
一瞬で、心が冷えていった。
 
 
「……んっ」
肩を掴まれて、キスをされていた。
あっという間の出来事で、頭が着いていかない。
「んんっ――!?」
とにかく抗うと、チーフが興奮したように頬を染めて、また僕を眺めた。
「この反応、……そっくりだ」
 
―――――――!!
 
僕はゾッとした。
まさか、まさか…と、打ち消してみたけれど……
 
瞬時に脳裏に閃いた、おぞましい光景。
あの映像…………あれが、売られたのか!?
 
 
 
チーフの目は、好奇心でいっぱいだった。
「なあ、内緒にしといてやるから、オレにもやらせろよ」
「―――――!」
 
真っ白になって動けないでいる僕を押し倒して、手首を引き抜いた僕のベルトで縛った。
 
「こうすると、胸、感じんだろ?」
「あ……」
 
シャツをたくし上げられ、尖りを吸われた。
ショックで頭がボウッとしていても、身体は身悶えた。
 
最近特に弄られているから、感じやすくなっている。
「や……」
「キスは、舌の裏が感じやすいって?」
「――!? ……んんっ…」
舌を突っ込まれ、舐り上げられた。
苦しい……
でも僕は、まだそれどころじゃなくて………… 
 
混乱した頭を、纏めようと必死だった。
―――そんなこと、あるのか?
―――アイツ、それをネタに僕を脅してたくせに……
―――ていうか、あんなの、ほんとにバラまかれたんだとしたら……
 
 
「胸はないけど、ここはその通りだな。透けるようなピンク。尖った先は、白いハイライトをちょんと付けたような艶……」
舌先を尖らせて、胸の先端を突いてきた。
「んうぁ……あぁ……」
再び吸われて、身悶えた。
腰がゾクゾクし始める。
  
―――ちょ……チーフ!?
やっと頭が冷静になってきた。
 
「ピンクの割れ目ってのは」
スラックスの前を開けると、手を突っ込まれた。
中で半勃ちになっているものを取り出される。
「ここのことだよな」
親指の腹で、鈴口をさすられた。
「や…やめ……」  
 
「すっげー綺麗……お前、ホントに女みたい」
「…………!?」
 
どんどん興奮していく、チーフの目。
興味津々で、僕の痴態を観察する。
 
―――何か、おかしい……
僕は違和感を覚えた。
 
あの映像は、犯っているところを足元から固定で撮っていた。
ワインは始めに飲まされてたけど……
濃厚なキスシーンなんて、映って無かったはずだ。
 
 
―――狩谷チーフ……?
 
 
「挿れると甘くて高い声で、鳴くんだってな」
「……や…」
ゾッとした。
チーフの目の色が、恐い。
挿れるって……まさか……
 
「あっ……やああぁ!」
脚を広げられ、指が無理矢理入ってきた。
僕は縛られた手を解こうと、必死に揺すった。
――こんなとこ、誰かに見られたら!
でも、休憩はローテーションだから、まだ誰も来るはずが無かった。
 
「うるさい! ……静かにしろ」
口を掌で塞がれ、顔を覗き込んできた。
「バラすぞ! アレがお前だって……皆にバレてもいいのか?」
「――――!!」
黙らざるを得なかった。
「でも、……甘い声は……聞かせろよ」
また、にやりと嗤う。
  
―――――!!
 
数時間前に、アイツに指でイカされたばかりだった。
でも、解されていたそこは、すんなりとチーフを受け入れてしまった。
熱い滾りが、どんどん僕の中に入ってくる。
  
「あッ……ぁああ………!」
「すげー……すげー気持ちいい……」
  
僕の上で、チーフは夢中になって腰を振りはじめた。 
擦られる感触が、数時間前の快感を蘇らせる。
 
「や……あぁっ……ああぁ……!」
僕は突き上げられるたび、喘ぎ声を出してしまった。
「須藤…イク……イクッ……ぅああッ!!」 
 
「…………ッ!」
 
下腹が熱い……。 
チーフだけ僕の中でイクと、抱きついてきた。
「……お前……サイコー……」
僕は首を振って、まだ抵抗を示した。
涙が畳に零れる音が、聞こえる。
 
「今度はオレが、イカせてやる」
湿った舌で唇をぺろりと舐めて、その口の端を上げた。
―――――!!
「……いい! やめてください、チーフ!」
僕の声なんかまるっきり無視して、身体を下げたチーフは膝の間に屈み込んだ。
 
「……んっ!」
ビクンと腰が跳ねてしまった。
生温かい舌に包まれて、気持ち悪い。
「ぁあっ……やぁぁ……!」
扱き上げられたら、どうしょうもない。
ズボンは完全に脱がされているので、脚を開くことに躊躇はない。
膝を外側に押され、根本から開いたそこがどんどん高められていく。
 
―――やだ……嫌だっ……!!
 
手首の拘束が歯痒かった。
身悶えても、チーフの責めからは逃れられない。
「やめ……チーフ………」
限界がきて、僕はやっとそれだけ言った。
涙声になってしまった。
―――あっ…………もう……… 
 
「…ぁぁ……んぁあっ!」
チーフの咥内に吐精させられてしまった。
  
 
 
「…………はぁ……」
 
泣きながら、足元のチーフに視線を向けた。
悔しいのと、何でこんな事になったのかという困惑と……早く解放して欲しい……
そんな、懇願の目で―――
 
「そんな表情も、そっくりだな……すげぇ」
「…………?」
下から見上げてくるチーフの顔は、頬を紅潮させて、好奇心一杯に目を輝かせている。
 
 
「オレ、めちゃくちゃ興奮する……」
「あ……」
 
 
もう終わったのに……
チーフは僕の身体を舐め回して、あちこちを吸い上げて赤紫の痣を付けた。
 
 

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