その声、イイ
 
8 (番外編)
 
「ん……」
(トオル)
 
「…………」
(トオル、愛してる)
 
「……ん、たか……あき?」
俺は、優しい囁きで目を覚ます。
 
耳元で囁く、高明の声。
俺はその声に、頭も身体も痺れてしまう。
「んっ」
唇を塞がれた。
……まだ目が覚めきってないのに。
「あっ、たか……」
身体を触ってくる。
「や……、まだ嫌……」
俺の言うことなんか、聞きやしない。
何年も、俺の枕元で囁き続けた高明。
俺より、朝がめちゃくちゃ早い。
 
「透、愛してる」
耳に唇を押し当てて、囁きつづけながら、身体を撫でる。
「やっ……喋るな……」
肩を竦めて、顔を剥がす。
その唇は、首筋、鎖骨とキスを繰り返しながら、胸に降りていく。
「あっ……」
敏感なそこを、舌先で舐め回す。
「やっ、やめ……高明、……やめろッ」
俺は必死に拒否する。
でも高明は許さない。
「何年、待ったと思う?」
「……んんっ」
「毎朝毎晩取り戻す。一日だって、許さない」
俺の後ろに指を運ぶ。
「あぁっ……」
ようやく、俺の身体も起き出す。
 
「ヤラシイ……、透の身体、こんなに反応してる」
後ろに指が少しづつ入って行く。
ぴくぴくと痙攣して、指を押し返してしまう。
「お…お前が、こんな毎日弄るから…」
 
初めは辛かった異物感と圧迫感、指1本でさえ嫌だったのに。
「あッ……んんーっ」
今は……凌駕する快感が……
「ちゃんと、声出して」
 
「……はぁ…」
 
「そうそう、透もイイ声なんだから」
「……高明」
俺は涙目で、紅潮してる男の顔を見上げる。
指が入りきって、動きだす。
 
「……あぁっ」
 
「透、…気持ちいい?」
「……うん……うん…」
 
 
指を入れたそこから、背中をぞくぞくとはい上がる快感。
危うく、ポイントに触れそうで触れない、卑怯な焦らし。
俺ははがゆくて、腰を振ってしまう。
「高明……俺…」
もっと刺激がほしい。
……早く、高明が欲しい。
 
「言葉にして、透」
唇にキス。
「ん……」
 
俺は、薄目を開けて、この意地悪を見つめる。
「透、……その目、堪らない」
ぎゅっと俺を抱きしめる。
「透が欲しい……」
「ん……、俺も…高明が……ほしい」
 
熱いキスを繰り返しながら、高明は、俺に入ってくる。
「あぁ……、はぁ……」
声を我慢することを、許してくれない。
……熱い塊が、俺の奥まで入ってくる…
触れる全てを擦りあげ、刺激する。
 
「あぁ、あぁ! ……高明! 高明!」
俺は堪らず、声を上げる。名前を呼ぶ。
腰を中心に身体ごと揺さぶられる。
何も考えられない。
打たれる快感だけが、波のように襲う。
 
「イイ……イイよ……」
「もっと……、もっと良くしてやる」
「あっ!」
俺の前を握る。
腰の動きに合わせて、上下に擦る。
「はあっ、んくっ」
息継ぎもできなくて、俺はしゃくり上げ始める。
 
「透、トオル……可愛い」
高明はそんな俺を、抱きしめる。
 
「ぁ……んん、たか…あき……!」
「……トオル!!」
二人は同時に昇り詰めた。
熱い迸りを体内に感じる。
掌が、俺の白濁を受け止める。
 
これも初めは辛かったけど……今は、反対に、嬉しくさえ感じてしまう。
 
  
「ん……はぁ……」
ずるりと、異物が俺から抜け出た。つい声が出てしまう。
「あっ……」
高明が、俺の萎えてるのを銜えた。
「なに……、やめろよ」
俺は、焦る。今、イッたばかりだ。
残りの液体を吸い出すように、口内で吸い上げられた。舌を絡ませて、鈴口を刺激する。
「嫌だって……」
身体を捩って逃げても、すぐ捕らえられてしまう。
コイツは、ガタイがデカい。掌もデカイ。俺はどうやったって、逃げられない。
また指が、後ろに入ってくる。
 
「あっ、あぁ! やめ……高明…」
 
来るはずのない、高みへの波。快感という激流に再度、襲われる。
今度はダイレクトに、ピンポイントを刺激してくる。
「あぁっ、高明、……やめて、やめろって…」
嫌だ、嫌だ! 2回もすぐにいくはずないんだから!
羞恥と闘い、腰を振ってしまう。
結局俺は、快感の波に翻弄される。
 
「透、イッて。オレの口に出して」
そう言って、いっそう俺のものを唇で扱く。
「ん……はぁ…、あ、あ、あ、……たか……ぁきっ!」
俺は言われるがまま、口の中にイかされてしまった。
 
「も……やめろって…」
俺は、痙攣したまま懇願する。
飲み干してなお、吸い上げを止めてくれない唇に。
「指……抜けよ……」
後ろを責め続ける、憎たらしいヤツに。
「お願いだからさ……」
 
「透……可愛い」
またそっとキス。
やっと後ろの責めも、抜いてくれた。
 
「馬鹿……高明の馬鹿野郎ッ」
俺は泣き出してしまった。悔し泣きだ。
「ごめん、透、ごめん!」
「俺、会社行けない……。今日も大変なクレーム処理が、あるのに……」
泣きながら、そう訴える。
朝っぱらからクッタクタにされてしまって…。腰もガタガタだ。
「歩けねえよ……くそったれ!」
 
「早く、そんなとこ、辞めさせてやる。」
 
いつもそう言う。高明は。
「早く、オレが会社を立ち上げて、お前を呼び寄せる。それまで、待っててくれな」
 
待ってるよ。そんなの、いつまでも待ってる。
でも、それとこれとは、話しが違うだろ!
俺は、いつまでも泣きやめなかった。……悔しくて。
すっかりコイツの術中に嵌ってしまってる自分が、悔しくて。 
 
 
 
 
そんな朝を、いつの頃からか繰り返すようになって。
俺たちは、二人の時間を歩き出せたんだ。
 
 
高明、……今は本当に、お前が好き。……お前と向き合えて、良かった。
透、愛してる。……お前が声フェチになってくれて、良かった。
 
 
―――うん、高明……ホントお前…その声、イイ。 
 
 
 
  
END      
長編SS短中編