俺、濱中貴臣(はまなか たかおみ)。高校の体育教師だ。
可愛い女の子が、好きである。
だから、体育教師ってわけじゃないけど。
バスケが好きで、……選手になれなかった腹いせみたいなもんか。
あわよくば、女生徒と大恋愛して、結婚……なんてのは、教師仲間の間でも当然上がるネタだった。
 
しかし……。
俺の目に付いたその子は、男の子だった。
 
この高校に赴任してきて以来、元々居た先生を差し置いて、ニックネームを奪ってしまった。
”ハマチュウ”
殆どの生徒が、俺をそう呼ぶ中、数人は健気に”濱中先生”って呼んでくれる。
……その中に、あの子はいた。
 
 
 
 
  
………ちっちゃいなあ。
第一印象は、それだった。
俺の胸まで、やっと頭のてっぺんが届く程度だった。
高校二年の筈だが、ヘタすると中学生だ。
 
何をやらせても、走れない、打てない、当たらない、取れない、入れられない……ナイナイの、出来ない尽くしだった。
―――うーん。……まあ、どこの学校にも一人はいるけど。
こりゃ、本腰入れて取り組まないと…。
覚悟を決めて、その子を見ていたんだ。
ところが、………笑顔。
最後は笑顔で、一生懸命に授業で使った道具を片づけている。
友達とふざけ合いながらだから、そりゃ笑顔にもなるけど。
正直、俺だったらもっと落ち込んでいると思った。
でもその子は、自分が出来ることを精一杯やって、前向きでいようとする。
その笑顔を見るたび、俺は胸が締め付けられるようになってしまった。
「野原!」
意味もなく呼んでしまう。
「……ハイ!」
怯えて返事をする。俺を見上げる目が、ハムスターみたいで可愛い。
「……これ、片づけろ!」
手近にあったボールカゴを差して、命令してしまった。
俺が言わなくったって、片づけるのに。
「……ハイィ!」
怯えて、必死にボールを集めてはカゴに入れ、また拾いに走りに行く。
俺の視野の下の方で、野原の後頭部が、ちょろちょろ、ちょろちょろ……。
噴き出しそうになるのを、何度堪えたことか。
でも、やっかいなことに気が付いた。
あの笑顔を護るヤツがいた。いや、引き出すヤツ……か。
いつも、べったりとくっついている三浦小五郎。
コイツは俺が顧問してるバスケ部のホープだった。
男前の顔をしていて、女子のファンクラブなんてのがいっちょ前にあったりして。
なのに、コイツはどう見ても……。
俺は、三浦と野原がバラバラになったチャンスを見逃さなかった。 
いきなり野原に、襲いかかってしまった。
本当は、いくらなんでもそこまで急ぐつもりはなかった。
「なんで、俺をハマチュウって呼ばないんだ?」
って聞いた時だ。
「分不相応ですから」
なんて、生意気な言葉使って、……俺を見上げた。
あの可愛い目で、キュッて鳴きそうなくらい、見つめてきた。
……後でそれを言ったら、アレは睨み付けたんです! って拗ねられたが。(睨み付けて、あれか!)
なんにしろ可愛すぎて…理性がぶっ飛んだ。
「んんっ〜!!」
俺の舌の侵入に、これまた可愛い声をあげた。
その表情からは、俺を嫌っている感じはしなかった。
「フリーなら付き合え」
どう言っていいかわからず、そんな言葉になってしまった俺の告白に、野原は小さく頷いてくれた。
 
ところがどうだ! 体育館の裏側から、校舎に戻ろうとしたら……テニスコートで、野原が三浦と抱き合っていた。
俺は、胸を掴まれて窒息死するかと思うくらい、ショックを受けた。
一瞬、あいつに…三浦にとうとう、かっさらわれたかと思ったんだ。頭がカーッとなって、胸がムシャクシャして、グランドのトラックをずっと走り回った。気を落ち着かせたいときは、走るのが一番だ。
まあ、それは誤解のようだったが…、抱き合っていたことには、納得がいかない!
その後は、どうだ。
体育館に後ろ姿だけ見せて帰っていくから、後を追いかけたら……今度は、浜中先生を一生懸命見上げて、微笑んでいた!
俺の頭はもう、何がなんだか判らなくなっていた。野原の腕を掴むと、無理矢理引っ張って行って、外倉庫に連れ込んだ。丁度鍵を持っていたからだ。
後は、強引に口で犯してしまった。
小さい野原のペニスはとても柔らかくて、可愛かった。
舌で愛撫すると、ちゃんと勃って吐精した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「センセ…」
 
 
 
「先生………濱中先生!」
 
「―――!!」 
胸元で、大きい声で呼ばれ、我に返った。
「ああ…、すまん。……考え事してた」
「考え事? なんかヤラシイことですね〜」
ベッドに横になっていた俺の脇に、ちょこんと身体を割り込ませ、一緒に横になっていた野原。
じっと俺を見上げている。
「ヤラシイって……」
「目元と口元が、にやけてます!」
顔を赤くして、俺の胸を軽く叩いた。
俺は笑って、こともなげに言った。
「ああ……おまえとの、初エッチ」
 
「!!」
びっくり顔で、ますます俺を見つめる。
 
「……………」
その頬を両手で挟んで、俺は顔を近づけた。
野原も身を乗り出してきた。
潤んだ瞳で俺をじっと見た後、そっとその瞼を閉じる。
 
……野原。
何をするにも、俺の前では一生懸命な、野原。
俺だけを見つめるこの目を、もう疑ったりはしない。
嫉妬に狂って乱暴にしてしまったことを、とても後悔していた。
 
優しく唇を触れあい、小さな野原を啄んだ。
「ん…」
可愛い声で、くすぐったがって薄くその口を開く。
俺は誘われるように、そこに舌を這わしていく。
「んん…」
身体が熱くなっていく。腰が疼く。
野原も熱くなっていく。
「野原……今日も、かわいい」
寄せてきた腰に手を回し、指を後ろに這わせた。
 
 
 
「…ぁ……濱中先生……」
解しもそこそこで、小さな野原の蕾に俺の熱くなっているモノを挿れていく。
「あ……あぁ……」
俺の首にしがみついて振える。
「野原……」
俺は欲望に任せて、腰を動かし始めた。
「っあ! ……センセッ……」
激しく仰け反り、悩ましげに眉を寄せた。
「せんせ……激し……あぁ!」
久しぶりだった俺は、動きを止められなかった。
 
俺と野原は、時々門外で待ち合わせて、メシを食ったりホテルに入るようになっていた。
体育祭も無事終わり、学校では余り接することはなくなったが、外でこうして会えると思えば、我慢が出来た。
ところが最近、職員会議が重なり、野原と外でも会えなくなっていた。
今日、久しぶりにこうして身体を抱きしめていたのだ。
 
「先生っ…ぁっ…すごすぎる……」
野原が、悲鳴を上げた。
「野原……」
壊しちゃいけない…と思いつつも、止められない。
野原のペニスにも手を伸ばして、掌に包んだ。
「あっ……」
「野原……ごめんな」
俺一人気持ちいいようで、謝りながら野原の身体も高めてやった。
「ん……せんせ……あぁッ」
俺の手の中で震える野原は、数回の扱きで吐精した。
俺も我慢できずに、野原の中に熱い迸りを放出した。
「んっ! …熱い」
腰を震わせて、しばらく俺の熱を堪能してくれた。
苦しそうに瞑っていた目をうっすら開けて、潤ませた。
「久しぶりで、……僕…我慢…できなかったですぅ……」
恥ずかしそうに、野原が見上げる。
「…俺も」
言いながら、唇にちゅっとキスをした。可愛くて食べてしまいたい。
ホントにそんな言葉を使うことがあるんだと、目の前の子ネズミを見つめた。
「…先生」
熱っぽい目で、見上げてくる。
「野原……そんな目で見るな…」
もう一発、やっちまうぞ。
……そこは自制して、野原の中から抜き出た。
 
「……先生。僕、こんど濱中先生とどっか行きたいです」
シャワーを浴びて、着替えながら野原が言った。
「ああ、いいな。どこがいいんだ?」
「遊園地!」
「――はっ!?」
定番すぎる、そして俺のガラではない。一番嫌な第一候補に、思わず唸った。
それをどう解釈したのか、野原はちらりと悪戯っぽい目で見上げて。
「あはは、うそです。そんな子供っぽいこと言わないです!」
舌を出して、笑っている。中学生にも見える、その顔で。
「……おまえなあ」
ほんとに、食べてしまいたい。首に腕を回して、抱きかかえてしまった。
「まあ、なんか考えとけよ」
「はい!」
 
 
 
 
 
 
 
 
「先生……濱中センセ〜っ」
ぶすったれた声で、野原が俺の後ろを付いて歩く。
午後の授業も終わり、生徒がバラバラと帰っていく。その中を縫って職員室に戻る所だった。
「野原……」 
首を下に傾けなければ視界に入ってこない、その顔を睨み付けた。 
「そんな声出したって、駄目だ」
「……そんな顔したって、ダメですぅ」
泣きそうな顔で言い返してくる。
最近、特に忙しくてまともにデートできていなかった。
野原が寂しがって、校内で俺につきまとってくるようになった。
俺だって、同じなんだが。……いや、俺の方が我慢してるぞ。最近のオナニーの回数は半端じゃない。
「………」
思い出すと、ムラムラしてきてしまった。
「…野原。絶対、声、出さないか?」
屈んで、野原の耳に囁いた。
「え?」
「いいから、来い!」
その手首をひっ掴むと、すぐ横にあったドア…職員室の2つ手前のドアを開けて滑り込んだ。ノブに掛かっていた札を「使用中」にひっくり返して、内側から鍵を掛けた。
そこは、生徒の生活指導や、先生同士の簡易な会議室に使ったりと、マルチに解放された個室だった。正面奥の壁には、小さな天窓が一つ。畳にして、2畳分くらいしか床スペースはない。小さな机とパイプ椅子が2客置いてある。
椅子を隅っこに追いやり、机の上に野原を押し倒した。
「……せっ…先生!?」
大きい声を出したから、俺は慌てて野原の口を掌で押さえた。
「…静かにしろ。ここでヤッてやる」
にやりと、笑ってしまった。
「や…ダメです…こんなトコ!」
真っ赤になって、首を振り出した。
「すぐ済むから。誰か来ないうちに、さっさとやっちまおう」
野原の制服に手をかけた。
「や! 先生っ…ダメです!!」
「―――!?」
その悲鳴と同じような声が、聞こえた気がした。
「野原――しっ!」
野原の口を掌で押さえて、耳を澄ました。
壁の向こうで、激しい物音がした。
人が倒れ込むような……
 
『……なんでだよっハマチュウ!』
『……ダメです…瀬良君……こんなとこで……』
  
――――!!
俺と野原は見つめ合った。
「えっ!?」
その瞬間、驚いた野原の身体がバランスを崩して、机から滑り落ちた。
「あっ!!」
俺たちも派手な音を立てて、床に転がってしまった。
「痛っ…野原、…大丈夫か?」
「ハイ……すみません…」
野原の無事を確認した後、今更ながら、耳をそばだててみた。
「…………」 
何も聞こえない。
俺は野原をそのままにして、ドアをそっと開けて、顔を半分出してみた。 
「――――」 
そこには同じように、隣のドアから顔を半分覗かせた、瀬良がいた。
 
 
「うわ―――っ!!」
 
 
俺と瀬良は、同時に大声を上げた。
「先生!?」
野原が心配して飛んできた。
「あ、こら! 顔出すな!」
叫んだけど、遅かった。
 
「……………」
二つの並んだドアから、それぞれ2つづつ、半分だけ顔が出ていた。
 
 
「………ハマナカ先生」
 
 
俺と浜中先生は、見つめ合って、同時にお互いを呼んでしまった。
どっちも、顔が真っ赤で。
 
「ナニ……してんですか? …先生」
俺は百も承知で、声を掛けた。ナニか言わねば、この場が収まらない気がして。
 
「…先生こそ」
にっこり、微笑みで返されてしまった。
 
「……ナニも」
俺は負けじと、にっこりした。
 
「僕もです……では」
笑顔のまま顔が引っ込み、ドアがパタンと閉まった。
俺も野原を押し込めて、ドアを閉めた。
 
「びっくりした…びっくりした……!」
野原が、目を丸くして何度も言っている。
 
―――俺もだ!!!
 
まさか、あの浜中先生がそんな…。
あの、瀬良がなあ………。 
 
 
そんなこんなで、俺の秘密と浜中先生の秘密は、共有になってしまった。
かと言って、そのことを敢えて会話したりなんかしない。
お互い何も無かったみたいに接して、日々は過ぎていた。
 
 
そして、やっと野原とデートの日取りを決めたというのに、またまた職員会議が入ってしまった。
ホントは日曜か祭日に会えればよかったけど、なるべく早くということで、平日の午後に予定を組んでいたのだった。
慌てた俺は、職員室を見回した。
会議に出ない、山口先生が目に付いた。特選科目で家庭科を担当している。
「スミマセン、山口先生!わたしを訪ねて生徒が来たら、ここに行ってるようにお伝え願えますか?」
走り書きをしたメモを握らせた。
「はいはい」
「必ず、ずっとそこにいろって、伝えてください!」
「はいはい」
初老の山口先生は、にっこりと笑って頷いてくれた。
俺はホッとして、会議室に向かった。
 
もう中止は、無しだった。今日もまたキャンセルなんて、言いたくない。
いい加減ほんとうに、野原を泣かせてしまう。
それは可哀相で、嫌だった。
 

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