たまには、シャッフル
  

 
「ハマチュー! こっちこっち!」
待てないとばかりに、入り口に姿を現した二人に瀬良が手を振った。
「せんせい~っ」
俺を見つけると、半泣き顔で、野原が走ってきた。
座席にちょこんと乗っかると俺の腕にしがみついて、うう~とうなっている。
瀬良がびっくりして俺を見るから、苦笑いして教えてやった。
「俺の袖に涙と鼻水付けて、声殺して泣いてんだ」
瀬良がますます目を丸くする。
浜中先生が、ぺこりとお辞儀をしながらその横に座った。
「……だいでだいぼん……」
「……ん?」
何か言った野原に、顔を寄せた。
「……泣いてないもん。……僕、そっち」
ぐししっと派手に鼻水を啜ってからそう言うと、俺の奥の座席を指さした。
「ああ、ほいよ」
席を立って、奥と手前を入れ替わって座った。
「可愛い子…ですね」
浜中先生が、何してるのか目線で聞きながら、微笑んだ。
「ええ」
俺は照れ笑いをして、野原の肩をグイと抱き寄せた。
「野原、左利きだから。必ずわたしの左側がこの子のポジションなんです」
そうでないと、腕がいちいちぶつかってしょうがない。
野原は、ぽわんとした顔で俺を見上げた。
 
「俺はどっちもだ!」
いきなり瀬良が叫んで、浜中先生を腕ごと抱きしめた。
「せっ……瀬良君!」
浜中先生が悲鳴を上げてしまった。
 
―――やめてくれ。注目の的だ……
 
「あの……今日はもうしょうがないんで、ここで何か食べてお開きにしませんか」
俺が小さい声で提案すると、浜中先生も口に手を当てて、こくこくと頷いた。
「えーっ」
生徒二人が、非難の声を上げる。
「お前ら……贅沢言うな! メシ食えるだけでも、喜べよ」
 
 
 
 
 
 
なんだかんだと食事を済ませると、レストランを出て、浜中先生にお礼と別れを告げた。
やっと各自の車に正規のカップルが収まったのだ。
 
野原が助手席に座った途端、俺の左腕にしがみついて、離れない。
「こら、シートベルト閉めろ。運転できないぞ」
左腕を振る。
「デートだったのに」
ぽそっと野原が呟いた。
「…………」
それを、聞こえないふりは出来なかった。右手で頭を撫でて、野原に謝った。
「…ごめんな。寂しかったな」
「…うん」
やっと、顔を上げた。
ずっと瀬良の顔を見ていたので、野原の柔らかい輪郭が今更ながら、とても可愛く見える。
「……野原」
「先生……」
ファミレスの駐車場でこっそり(か、どうかはわからんが)……俺は野原に熱いキスをした。
「…………はぁ」
唇を解放された野原はとろんとして、俺を見上げた。
「……せんせい。このまま帰りたくないのは、僕のわがまま…?」
「……俺の我が儘でもある。二人のわがままだな」
「…先生っ!」
嬉しそうに微笑んで、俺の腰にしがみついてきた。
「……あれ。先生の、もう大きい」
俺は飛び上がった。
「しょうがないだろ……お前が……可愛すぎて」
そこまで言って、更に飛び上がった。
「こ、こら! 何してんだ!」
ファスナーが開く音と共に、前が解放される感覚。
熱い野原の舌先が、直に俺に触れた。
「…………のはらっ!」
「先生…やらせて」
「おまえ…まだそんなの、したこと無いだろ!」
「うん、……だから今したい」
拙い舌で舐めてくる。
「…お願い」
「野原……」
俺はよたよたと車を走らせて、広い駐車場の隅っこに移動した。
いくらなんでも、さっきのトコはマズイ。
 
 
「ん……」
野原の小さい口は、後ろの蕾を思わせて、俺を興奮させた。
可愛い舌先が、くびれを舐めたり、先っぽから根元までを行ったり来たりする。
でも……やっぱり、イクまでは無理だな……
一生懸命の野原の頭に手を置くと、優しく撫でた。
「野原、もういいよ」
「……」
「そんな顔すんな。充分気持ち良かったぞ」
「でも…最後までやってない……」
悲しそうな顔をする。
「俺が……野原の顔を見ながらイキたいって、思ってるから、身体が我慢しちゃってるんだ」
「………」
「ごめんな、大変だったろ」
首を横に振る。
「……野原。俺、もう我慢は出来ないんだ。もう一働きしてくれないか?」
「……ハイ! なんですか?」
授業の時の片づけみたいな、返事をする。
俺は笑って、野原のズボンの前を開けた。
「これ全部脱いで、俺に跨って」
「!! ……もしかして、初めての時の、あれ……?」
「ああ……イヤか?」
「ううん、やる!」
野原は、下を全部脱ぐと、俺と向かい合って腰に跨った。
ハンドルが邪魔な分、身体を俺にしがみつかせている。
「……そのままな」
「………あ」
突き出している蕾に、舐めて濡らした人差し指をあてがった。
くん、と力を入れて少しずつ埋め込んでいく。
「………んんっ」
目の前に野原の顔があって、可愛く顰められる。
「こっちの方が、全然好みだ」
空いてる方の手で頬を撫でながら、蕾に指をもっと差し込んでいった。
「あっ、あぁっ」
小さく左右に腰を振って、逃げようとする。それを先回りして、指を増やしていく。
「んっ、せんせ……」
はぁっ、はぁっ、と熱い吐息が俺に掛かる。
「野原……」 
一生懸命俺の言うことをきいて、言う通りにやろうと努力する。
授業も、セックスも。
それでも足りないとばかりに、何かしようとして……
「ん……せんせ……」
野原の準備ができた合図だった。
俺の突っ走りで、痛い思いはさせたくない。野原が自分で大丈夫だと思ったら言わせるようにしていた。
野原の蕾に、俺の熱くなっているモノをあてがった。
「いいぞ、そのまま、腰を落とせ」
「……ハイ」
はあ、と熱い息を吐きながら、野原が腰に力を入れた。
垂直に身体を起こせないから、初めての時みたいにすんなり入っていかない。
それでも頑張って、俺を飲み込んでいった。
「あっ、あぁ……」
押しては返しを繰り返すたび、声をあげて喉を反らせた。
「……野原」
俺も下から手伝い、全部を野原に埋め込んだ。
「せん…せ…熱いです……」
苦しそうに、眉を寄せている。その顔に胸が締め付けられる。
頑張り屋の野原。可愛くて、愛しくて……どんなに抱き締めても飽き足らない。
「ああ。俺、どんどん熱くなる。野原が好きで……好きで、好きで……体中が熱くなる」
潤んだ瞳を捕らえて、目を細めた。
「――っ!! 先生! ぼくっ…、僕も先生が大好き!」
そう叫んで、胸にしがみついてきた。
「んぁあっ……」
繋がった蕾が刺激を受けて、受け止めた腕の中で喘いでいる。 
「くっ……おい、無茶すんな、大丈夫か?」
「…ダイジョウブです…すみません。……僕、嬉しくて」
「…………」
「ここに来るまで、浜中先生とずっと喋ってたけど……違うんです。どんなに優しく笑ってくれても、頭を撫でてくれても……僕が呼びたいのは先生で……横に居て欲しいのは、濱中先生なんです」
…………何!? …頭を撫でた!?
俺はそのキーワードに、すぐ引っ掛かった。……また、無防備に、隙を見せたな…
嫉妬の炎が、俺の中で、欲情に変わる。
「あ! ……せんせっ!?」
急に激しく腰を使い始めた俺に、戸惑いの声をあげる。
「んんっ、あぁっ……」 
胸にしがみついて、突き上げられる衝撃に必死に耐えている。  
「野原…野原…」
「せんせ……激しすぎ……ああっ」
可哀想だと、ちらりと思うけれど、やはり止められない。
「野原、そのままでいいから。背伸びしないで、出来ることだけやっていけばいいんだから」
腰を動かしながら、野原の唇にキスをした。
「ん……はぁ……」 
「もう、絶対、俺以外の前で、泣くな!」
「………!」
「いいなっ!?」
「……はい。ごめんなさい……ぁッ、…あぁっ」
俺の嫉妬という情欲は、さらに腰を激しく打ち付けさせた。
「……野原…野原――!!」
熱い熱い迸りが、野原の中で弾けた。
「…………くぅっ!」
思わず呻いた。俺自身、まったくコントロールが利かなかった。
……しまった!
野原を導いてやれなかった。俺だけイッてしまって、野原を取り残してしまった。
「…………」
俺の腕の中で、身体を熱くしたままうち震えている野原がいる。
俺は、シートのリクライニングを完全に倒して、寝そべった。
「野原……俺のを抜いて、そのまま上に上がって来い」
「…………はぁ」
熱い吐息と共に、俺を吐き出すと、身体を上に上げてきた。
「そのまま…俺を越えて、後ろのシートに上半身を乗っけろ」
「……え!?」
驚いて俺を見る。顔が真っ赤で、額に汗がキラキラと光っている。
その汗を拭ってやって、また唇に軽いキスをした。
「気持ちよくさせてやるから……早く」
「せんせい……」
何でも一生懸命言うことを聞くけれど、さすがに恥ずかしいのか戸惑っている。
「ごめんな、置いてけぼりにして。ちゃんと、してやるから」
「…………」
目を潤ませてコクンと頷くと、腰が俺の顔の前に来るように、身体をズリ上げて跨った。
目の前に捧げ出された野原のそれを、俺は大事に口に含んだ。
「アッ……」
ビクンと、野原が揺れた。
背中を丸めて、後部座席に腕を突いて身体を支えている。
俺は、口内で舌先を尖らせ、丁寧に野原のペニスを舐め回した。唇は大きく上下させて。
「あっ、ぁあっ……せんせい……先生っ!!」
腰が逃げようとするから、しっかりと捕まえて、しつこく舐った。
「んっ、…んっ……あぁ、先生……いくっ!」
激しく腰を痙攣させて、俺の口の中へ白濁を飛び散らせた。
「……はぁ」 
「野原……大丈夫か?」
口の中のモノを飲み下して、野原に声を掛けた。無理な体勢をさせてしまって、心配だった。
「……大丈夫じゃ……ないです」
「!……野原?」
身体を引っ張り、抱き寄せて顔を覗き込むと、その顔は涙でぐしょぐしょだった。
「おい!?」
「先生…先生…」
胸にしがみついて泣き続ける。
「ごめんな、口でイクの、嫌だったか?」
フルフルと首を横に振る。
「身体、どっか辛いのか?」
「……ちが……ちがう…」
俺の頬に掌を当てて、泣きながら俺を見た。
「すごい、気持ちいいの……ぼくばっかり……」
それが嫌なんだと泣きながら、唇に吸い付いてきた。俺は小さな舌を受け入れ、反対に攻め込んで吸い上げた。
熱い口付けの後、唇が離れると、熱っぽい目で俺を見つめてきた。
「僕、先生が大好き……先生の……僕もしたいよぉ」
「野原……」   
「先生、教えて……」
 
「……ああ。ホテル、行こうな」
「…うん!」
嬉しそうに、泣いてた子ネズミが笑った。 
  
 
 
 
でも俺は、してもらうより、する方が好きだった。
 
明るい場所で野原の全裸を見たら、理性を無くしてしまって。
嫌がる野原を抱え込み、さっさと後ろに指を差し込んでしまった。 
「あっ……ああっ……せんせ…」
解し直しの愛撫に、よがって悶える野原。
「野原……かわいいよ」
耳に囁きながら、強引にならないようそっと、野原に自分を埋めていった。
「んっ……はぁ…」
俺をくわえ込んで、大きく息を吐いている。
そんな仕草の一つ一つが、みんな愛しくて……
「野原……口なんか、今度でいいから……このまま、一緒に…」 
腰がもう、止まらない。
「んっ…んんっ……先生、激し……ああぁ!」
背中を仰け反らせ、腰をビクンと跳ねさせた。
 
 
「……先生…うそつきですぅ」
荒い呼吸の中で、ぐったりと身体をベッドに横たえて、訴えてきた。 
「ごめん…野原見たら…抑えられなくて」
横で添い寝をすると、尖らせた唇にちゅっとキスをした。
赤面して黙った野原に、真っ直ぐ視線を合わせると、俺は瀬良との約束を実行した。
 
「野原…して欲しいこと、したいこと、お互いいっぱいあると思う」
「…………」
「だから、ゆっくり。時間を掛けて、それをやっていこうな」
「……せんせい」
「野原が……もし嫌でなかったら、お前が卒業しても…いろいろなこと、教えてやりたい」
「…………」
「野原と、ずっとずっと……ずっと一緒にいたいんだ。出来る限り、俺の側に居て欲しい」
「……はい! 僕も!」
新しい涙。唇も震えている。
「僕も、ずっと先生と一緒にいたいです!」
きらきらした目が俺を見つめる。
「……大変だぞ」
「……はい」 
「きっと、すごい辛いことが、たくさん待ってる」
「……はい」
「……きっと、辛い選択を強いられる」
「……よく、わかんないけど……ハイ」
「こら!」
「あはは、…先生、僕、辛くなりそうだったら、必ず言います」
「………ああ」
”じゃあ、頑張ろう”のキスをした。
嬉しそうに目を細めた野原は、唇を嘗めながら、小首を傾げて俺を覗き込んだ。
「――だから。……先生も辛かったら、絶対僕に教えてね」
「……ああ、必ずな」
「うん、約束。相手を想っての我慢ていうのが、一番すれ違いになりやすいんだから!」
「………!?」
俺は、目がまん丸だ。
「……なんだ、それ。どっから、そんな……」
「えー、車の中で、浜中先生に……」
「―――――――」
俺の治まっていた、嫉妬=性欲が、頭を擡げた。
瀬良が言ってた精力絶倫も、あながち間違っていないかもしれない。
くだらないことを思い出しながら、俺は小さな身体を引き寄せた。
 
「……せ…せんせい?」
「もう一回、ヤル」
「むっ、ムリですぅ…」
 
野原をこれ以上泣かせない。
初めて抱いたとき、散々泣かせてしまったから後悔した。
……それなのに。
 
俺の苦悩と矛盾は多分ずっと続く。
野原が横にいてくれる限り、それは嬉しい悲鳴だった。
 
抱き寄せた小さな身体を、ぎゅっとさらに抱え込んだ。
体温を、鼓動を総て共有するくらい、激しく。
 
今後は、こいつをずっと笑顔でいさせたい。
たとえ泣かせてしまっても。辛いことがあっても。
その後は、必ず笑顔を取り戻させる。
――――そう誓って。
 
 
 
「さあ、野原。もう一発!」
「……せんせーっ!」
 

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