僕のお仕事 index
12.堂目さん  
1.2.3.4.5.
 
 

  
会社のビルに着く頃には、だいぶ落ち着いていた。
車を降りて歩くこともできた。
9階にエレベーターが着くまでの間、中の鏡で身なりを整えた。受付嬢の綾ちゃんに変な顔をされないように。
「お帰りなさ~い」
綾ちゃんが、にっこり出迎えてくれた。
「あれ、可愛いショートダッフル!いい色ねーっ」
目を輝かせた。でもすぐに眉を寄せる。
「なんでそんなGパン穿いてんの?合わないよ~」
けらけら笑っている。
僕も実は気付いていた。備品の服にも、こんなふつうのGパンなんかない。
エレベーターに映っていた僕のこの格好は、相当アンバランスだった。
でも、今日のこと考えると、汚れてもいいものを選んでくれてたんだと気付いた。
「いいの!これから合うのに穿き替えるんだから!」
笑って、奧の廊下へ走った。
ふと振り返って光輝さんを見ると、綾ちゃんと親しそうに何か喋っている。
……綾ちゃんて、誰とでも仲いいよな。
なんとなく、そんなことを思った。
シャワールームに飛び込むと、バスにお湯を張るべく、シャワーのバルブを最大にひねった。
早く熱いお湯に浸かりたかった。体内を洗い流したかった。
廊下に顔を出すと、ちょうど光輝さんが来た。
「ね、光輝さんも一緒にお風呂、入ろう?」
僕は光輝さんの、シャツの袖を引っ張った。
きっと同じように、身体が冷え切っていると思ったから。
「いや、俺はいいよ。」
ビックリした目で僕を見た。我に返った僕は、恥ずかしくなってしまった。
あの湯船に一緒に入ろうなんて、誘ってしまったのだ。
真っ赤になった僕に、光輝さんは笑いながら早く入ってこいと促してくれた。
「今日、約束したろ。早く出て飯を食いに行こう」
「はい!!」
僕は目を輝かせた。
お湯に浸かると、どれだけ身体が冷えていたか判った。
手も足もじんじんして、芯まで温まるには時間がかかってしまった。
それから……。僕はちょっと困っていた。
気持ちは絶頂に達していて、満足しているのだけど……。
身体が、不満足を訴えている。
下半身が重く、このまま今日を終わらせるのを許さない。
どうしよう……。自慰をして、出してしまえれば楽にはなると思う。
でも、それはなんとなく嫌だった。
僕は、お湯の中のそれに触ってみた。
「あっ………」
どれだけ刺激を欲しがっていたのか。ちょっと触っただけで、お湯の中で跳ね上がった。
やば……。血液が集まっていく。
これじゃあ、シャワー室から出れない。
「……………」
僕は、覚悟を決めて、処理をすることにした。でも、どうしよう。
ちらりと脳裏を掠めるのは、光輝さんだった。
うわ―っ!
僕は思いっきり、頭を振った。
すぐそこにいるのに、そんなこと出来ない。
でも……。光輝さんを思い浮かべた瞬間、また大きくなっている。
他に思い浮かぶような対象がいない。
どうしよう……。僕は本当に泣きたくなった。
その時、シャワールームのドア越しに声が響いた。
「おい、巽!長いな。大丈夫か?」
――――!!
こっ、光輝さん!
僕はビックリして、返事が出来なかった。
「おい?入るぞ?」
ガチャッという音と共に光輝さんが飛び込んできた。
僕は、長湯と羞恥と驚きで、茹タコみたいに真っ赤っかになっていたと思う。
「……………っ」
見上げた顔はさぞかし醜かっただろう。
光輝さんは、激しく眉根を寄せて、顔を顰めた。
「なにやってんだ!完全にのぼせてんじゃないか、さっさと出ろ!」
脇の下に手を差し込んで、僕をお湯の中から引きずり出そうとした。
「!!」
あっ、駄目!!
「やっ、光輝さん……っ」
僕は抗って手を振り解くと、またお湯の中に身体を沈めた。
バシャンっとお湯が飛び散る。光輝さんがそれを浴びてびっしょり濡れてしまった。
「あ……、ごめんなさい………!」
慌てて謝る。見上げた光輝さんは、静かに僕を見下ろしていた。
うわ……怒らせちゃったかな……。
片手で、顔に跳ねた水滴を拭って、髪の毛を後ろに掻き上げる。
おもむろに、バスタブの縁に付いている排水のボタンを押し下げた。
「あ……」
その場でしゃがんで、視線の高さを僕に合わせる。
「おまえな、なんかあったら言えって言ってるだろ?」
「………」
「あんなモニタした後、どうなるかなんて、俺にはすぐわかるんだ。助けを呼べよ」
「!………光輝さん」
「自分で処理できるなら、それでいいと思ってたけど……」
手を伸ばしてきて、僕の頬を撫でる。
「こんな茹タコになってまで、我慢してるなんて思わなかった。」
片眉を上げて、ちょっと笑う。
「あんま、心配させんな」
「………ごめんなさい」
光輝さんの掌が冷たくて、気持ちよかった。
その手と反対の手を、光輝さんはバスタブの中に垂らした。
半分ほど残っているお湯に浸ける。
「あっ……それ」
袖を捲り上げたその腕に、無数の爪痕を発見した。
三日月型に、引っ掻いたような痣や、食い込んで腫れたような痕が浅黒い腕にきざまれている。
さっき、公園で僕が付けてしまった傷だ。
「ごめんなさい……。こんなになっちゃって」
そっと触って、謝る。
「こんなん気にすんなって」
笑って僕の手を払う。
「それより、俺が簡単に処理してやっから、そしたら飯、食いに行こうな」
「!」
「嫌とは言わせないぞ、さんざん待たせやがって」
お湯が完全に抜けたバスタブから、僕を引き上げると、角の便器にスラックスのまま座り、その膝の上に僕を跨がせた。僕のびしょ濡れの背中が、光輝さんのシャツに張り付く。
備品のローションで掌を濡らし、後ろから腕をまわして僕のペニスを握った。
開かされた脚の間で揺れていたそれは、大きく脈打った。
「ん……」
「こんなにしたままで……。辛かったろ?」
ヒヤリとしたローションの感触のあと、光輝さんの掌の暖かさが伝わってきた。
「ぁ……はぁ……」
ゆるりと、上下に扱き出す。
本当はこんなに勃ってはいなかった。
そんなこと光輝さんには言えないけど。それは光輝さんのせい。
「ん……あ……はぁ……」
くちゅくちゅとローションの水音が、厭らしく響く。
腰から這い上がる疼きのせいで、背中が仰け反る。
「……巽」
耳元で囁かれた。
「ッはぁ……」
熱い吐息。ドクンと音を立てて血流が早くなる。
「こ……、こおき…さん」
腕にしがみつくように、項垂れた。僕の付けた爪痕が浮かぶ腕。傷が視界に入ると、妙に興奮した。
僕が付けた、僕の証。
「っあ……」
光輝さんの反対の手が、僕の後ろに伸びた。指を蕾にあてがう。
散々刺激されていたそこは、すぐに熱をもつ。
ただ軽く揉むだけで、充分快感を生み出した。
「あぁ、あぁ……はぁっ、こお……きさ……」
さらに第一関節が蕾の中に差し込まれた。
「んんーっ」
「巽……」
「ぁ……こおきさん………もう、いく」
激しく上下に扱かれて、後ろも指を差し込んだまま。
もう、僕は何も考えられない。快感を貪り、腰を揺らしてさらなる快感を欲する。
「ああ……っ」
吐精感と共に、絶頂を迎えた。
身体が痙攣して脱力する。全体重を光輝さんに預けた。
「光輝さん……気持ち……いい」
薄れる意識の中で、そう呟いた気がした。
僕は結局そのまま寝てしまった。
   
                                           

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