「失礼しまーす」
 コンコンと、軽くドアを叩いて開けた。
 教授の部屋は、廊下の一番突き当たりなので、静まりかえっていて怖かった。
 
 細めに開けたドアの隙間から中を覗き込むと、本棚が壁中に作り付けられていて、図書館のような匂いがした。
「何をしている? 入ってきなさい」
 部屋の奥から、悠然とした声が響いた。
「…………」
 俺は思い切って、室内に顔を突っ込んだ。
 薄暗い部屋で窓を背に、正面奥のでっかい机の向こうに教授が座っているのが見えた。
「……あの、俺…」
 
 俺は留年の危機に瀕していた。
 要するに遊びすぎて、単位が足りなくなりそう……という、よくある話しなんだけど。
 うっかりしたことに、落としちゃいけない講義を、俺はサボりまくっていた。
 散々忠告は受けてたんだ。教授の講義はちゃんと出とけって。
 
「……わたしの講義を専攻しておきながら、出席しないというのは……」
 
 ふんぞり返った革張りの椅子の上で、ゆっくりと教授が喋り出した。
「……どういうことかな? ……こちらへ来なさい」
「…………ハイ」
 俺は小さくなりながら、ドアを閉めて教授の前まで進んだ。
 この教授……どっか気持ちが悪いんだ。
 目線が絡みつく。それがいやで、2・3回講義に出ただけでやめてしまった。
 白い口ひげを右手で弄りながら、俺をじっくりと舐め回すように見つめる。
「すみませんでした。悪かったです。教授……俺……どうしても単位ほしいんです…………」
 もう、平謝りだ。
 他のヤバイのも、なんとかしてくれって、謝り倒してお願いしてきた。
 あとは、この教授さえ落とせれば……
「お願いします! 教授の授業を受けたかったのは、本当なんです! やむを得ず、欠席が続いてしまって……すみませんでした!!!!」
 ガバッと、身体を二つに折って、頭を下げた。
 あんま見つめられたくなかったのもあるし、表情から演技がバレるのも困るから。
 
「……君みたいなのが、多くて困るねえ」
「…………スミマセン」
「……どうしたいの?」
「…………は?」
 
 俺は顔を上げた。
 イヤらしく光る目に、ぶつかった。
「君……どうしたいって?」
「…………」
 ──なに言ってんだ? この爺さん。
「……だから……単位を」
「ただ、くれ…………と?」
 ───は?
「君……わたしを侮辱しておいて、ずうずうしいね」
「ぶ……侮辱って……!」
 俺はびっくりした。いい年をした爺さんが、俺みたいなガキに、そんなこと言い出すなんて。
 学生一人が講義をサボったぐらいで、侮辱とか言うか?
「とんでもないです! そんなこと……」
「どう、責任取ってくれるの?」
「……え?」
「わたしを選びながら、勝手に休んで、単位だけくださいなんて……虫が良すぎると、言っているんだ」
「…………」
 
 ───それは確かに、そうだ……うう……。
 でも、責任て言われても……
 
「すみません……どうしたらいいのか…俺……」
 教授を、恐る恐る見つめた。
 また、妖しげな光を煌めかせて、教授は嗤った。
「……中川君、入りたまえ」
 ───え?
 右奧のドアがあいて、ひょろっとした人が一人出てきた。
「……中川先生…」
 長身の細身で、いつもストレートの長髪を後ろで一つに束ねている。
 教授の弟子とかいうのは、聞いていたけど……。
 先生の授業は、判りやすいし面白いから、こっちは積極的に出ていた。
 それに、俺の出席日数を気にして、何度も声をかけてくれていた。
 
 
「……このヒトね」
 教授は、入ってきて俺の隣りに並んだ中川先生を、じろりと睨み付けた。
「とんでもないヘマをしてくれて、せっかくのわたしの研究を台無しにしてくれたんだ」
「……え?」
 俺は、先生の横顔を見上げた。
 困った顔で頭を下げる頬に、サラサラと髪が掛かる。
「教授……申し訳ありません」
 何度も言ってるであろうその言葉を、繰り返しながらぺこぺこ頭を下げている。
「君……森部君て言ったね」
「あ、はい!」
「……なんでもする?」
「そ、そりゃもう!」
 俺は藁にも縋る思いだったから、チャンスがあるなら、何が何でもひっ掴んでやる!と、勢い込んだ。
「ふん……頑張りによっては、あげないでもないよ、単位」
「……はい! 頑張ります、俺……」
 言いながら、ちょっと不安になった。……何をするんだ?
「……中川君」
「──はい」
 命令と服従。
 余りにも日常的にそれが行われているように、自然に中川先生が動いた。
「え………え!?」
 俺は先生に後ろから羽交い締めにされて、動けなくなった。
 教授がゆらりと、立ち上がる。
「…………」
 ───ちょ──これは……
 
 机を避けてゆっくりと歩いてくると、正面に立って見下ろしてきた。
 教授も歳の割りには、背が高い。
 俺はのっぽ二人に挟まれた格好で、値踏みされていた。
 教授のしわくちゃな手が、首元に伸びてきた。
 今日は開襟白シャツに、エドウィン。
 一応きちんとしたカッコを心がけたんだ。これでも。
 普段のTシャツにショートパンツ&キャップというのに比べたら、遙かに正装だった。
 
 シャツのボタンが、外されていく。
「…………!?」
 目の前の、口髭だけ白い教授のその動きを、見つめた。
 ………何…すんだ?
 後ろを振り返って、俺を押さえ付けている先生を見上げてみた。
 でも顎の先しか見えない。
「………先生?」
 中川先生の顔が、俺の耳元に降りてきた。
「言うことを聞いて。……教授に逆らったら、駄目だよ」
「───あッ」
 先生の言葉を理解する前に、胸にぞわっと悪寒が走った。
 しわくちゃな指が、開けたシャツの隙間に滑り込み、直に胸を触ってきた。
「や……」
 身体を捩って逃げようとしたけど、先生の抑えている力が強い。
 半端に胸を反らすくらいしか、動けなかった。
「若い子はいいね……肌がものすごい綺麗だ」
「…………」
 ボタンを全部外すと、はだけた胸に屈んで顔を寄せてくる。
 ………うわっ! ……それは、ちょっと……!
 背中がぞわっとして、腰が抜けそうになった。
 教授の口髭が、胸に当たる。
 その下で、ざらっとした生温かいものが、胸を這った。
「…きょ……教授!?」
 ──キモイ!!
 悪寒が、身体を駆けめぐる。
 胸の突起部分を、執拗に舐め回された。
「………あ」
 すごいキモイのに、触感は最悪なのに……その動きは信じられないほど、巧みだった。
 ねちっこく尖らせた舌先で、転がすように嬲り続ける。
 羽交い締めにされて、伸ばされている胸筋が、ヒクついた。
「や……やめてください……」
 感覚に恐怖して、思わず懇願した。
「……何でもするって、言ったのに?」
 妖しげな光をたたえた目で、俺を見上げる。
「森部君……それは駄目だよ」
 頭上からも、声が降った。
「………ぁ痛ッ!」
 爪を立てられた。左胸は唇と舌が這い、右胸は指が蠢いていた。
「どうする? ……単位が欲しくないなら、別にいいんだよ」
 楽しそうに覗き込んでくる教授の目線が、俺に絡んだ。
「……………」
 ──しょうがない。
 ──背に腹は変えられない。
 俺は悔しくて、唇を噛んで……それでも、小さく頷いた。
「よろしい」
 不気味に微笑むと、教授は更に身体を撫で回しはじめた。
 エドウィンの前も開けて、シャツを引きずり出した。
「……見事な腹筋だねえ」
 腹筋の一段一段を楽しむ様に、指を這わす。
「…………」
 口髭が下っ腹をくすぐって、キモチ悪い。
「森部君……大きい声を出しちゃ、駄目だよ」
 また後ろから、囁かれた。
「……え?」
 聞き返そうとした瞬間、エドウィンとボクサーを引きずり降ろされた。
 ────うわぁ!!
 正面は広い窓。
 向かい側には別棟が建っていて、講義室が何となく見える距離だった。
 間には大きなケヤキの木が葉を茂らせていて、目隠しにはなってるけど……。
「…きょうじゅ! ……こんな……」
 せめて、後ろ向きならいいのに。
 教授は俺の前に跪くと、股間に顔を埋めた。
「あッ! ………ぁああ…!」
 思わず叫んでしまった。ざらっとした感触が、俺を包む。
 ねっとりと舐め上げて、吸い付いてきた唇で扱きあげられた。
「ぁあっ………」
 口髭がザワザワとくすぐったい。
 舌先が異様な動きで、あちこち舐め回す。
 ………嘘だろ……
 突っ立ったまま、先生に羽交い締めにされて、下を爺さんにしゃぶられてるなんて。
 この状況が、信じられなかった。
 そんでもって、背中を這い上がってくる、この感覚……
「……んぁああっ! ……やめ……っ」
 つい言いそうになった言葉を、中川先生が塞いだ。
 大きな掌で口を塞がれて、俺は首を振って抗った。
 ───やっぱ、イヤだ! ……単位なんて、クソ食らえだ!!
「んんっーーー!!」
 拘束されたまま、下は教授が追い上げていく。
 激しい扱きはないのに、絶妙な舌に誘導されて、俺はどんどん高められていった。
 ──やっ………嫌だっ……
「……ぁああ!」
 腰を痙攣させて、俺は教授の口の中にイカされてしまった。
 ────!!
 一瞬の絶頂感と入れ替わって、もの凄い嫌悪感。
「………くぅ……」
 塞がれた口から、悔しくて嗚咽が漏れた。
「若い子は……元気があるね」
 教授が立ち上がって、嗤った。
 唇を舐め上げている舌先が、妙に光っている。
「…………」
 口を押さえられたまま、放心したように教授を見つめた。
 ……これで、単位……もらえるのか?
 
「……中川君」
「──はい」
 さっきと同じ、命令と服従の合図。
 教授はゆっくりと元の椅子に戻って、ふんぞり返った。
 中川先生は、羽交い締めにしていた腕を離すと、当然の様に胸を抱き締め直して、俺の身体を触ってきた。
「──!? ……先生?」
「抗ったら、駄目だよ」
 ………駄目って……
 先生はさっきから、それしか言わない。
 完全にはだけた胸に手をは這わす。
 教授とは違う、滑らかな手の平。
 乳首を摘んだり、指先で転がしたりして、刺激する。
「………ぁ……」
 嫌でも、反応してしまう。
 エドウィンとボクサーは膝下までズリ下げられていて、股間は教授に丸見えだった。
 
「んっ」
 先生の唇が、俺の首筋を噛んだ。
 サラサラの髪の毛が、顔に掛かってくる。
「ぁ……せんせ……や……」
 キツく首筋を吸い上げられ、うなじや耳を舐め回す。
 蠢く手も、胸や腹の愛撫をやめない。
 ……ぅぁ………ぁあ……
 腰に刺激が集まっていく。胸を撫で回されるたび、身体が跳ねて熱くなった。
「森部君……がまんしてね」
 また、耳元で囁かれた。
「……せんせ……!」
 今イッたばかりで萎えているのを、掌中にされた。
 温かい先生の手のひらの中で上下されて、俺は震えた。
 ……冗談! ……先生まで、何でこんな……
 俺は、再び熱く脈を打ち出した自分のモノを、その感覚を、持て余した。
 
 目の前で、ふん反り返った教授が、俺を観察している。
 晒してる裸体を上から下まで、……特に恥ずかしい部分を……舐め回すように眺めて。
 
「………くぅ………」
 ───あり得ない!
 こんな状況で、すぐ勃つなんて……
 でも、先生の指も動きが異様で。
 先端をなぶりながら、括れを擦る。きゅっと押すように鈴口を刺激しては、裏スジを撫でる。そうしながらも全体を、後ろの指3本で根本からしぼるように扱き上げられた。
 
「ぁ……ぁあ……」
 先生に抱えられた状態で、膝がガクガクして……
 ………やだ……いやだ……
 これじゃあ、教授の視姦の前で、イカされてしまう。
 しかも、正面は講義室が見える窓。
 そんな恥ずかしいこと、絶対嫌だ!
「…ぁああ! ……先生……! やめ…やめてくださ……ッ」
 抗って、腰を捩ったけど遅かった。
 また口を塞がれ、激しく扱きあげられる。
「…んっ………んんーーっ!!」
 ビクンと腰を震わせて、俺は教授のデスクに向かって、思いっきり吐精してしまった。
 
 
「──────」
 
 
 ………最悪だ……
 
 余りに酷いと思った。
 いくら単位がほしいからって……俺、ここまでやるつもりはなかったのに……
 
 涙が頬を伝っていて、それを中川先生が拭ってくれた。
「よく頑張ったね」
 首を屈めて、頬にキスをくれた。
 サラサラストレートが、また俺の首に流れる。
 
 
「……中川君……それで済むなんて、思ってないよね?」
「───はい?」
「君へのお仕置きも、兼ねているんだよ、これは」
「…………」
 先生の身体が、強張るのが判った。
 
「…………何を……」
 声が掠れている。
 俺に寄せている綺麗な顔は、真っ白になっていた。
 
 
 
「ヤリたまえ」
 
 
 一言。
 ただ、それだけだった。
「………?」
 見上げると、先生は蒼白になった顔をこっちに向けた。
「……ごめんね、森部君」
「………は?」
 ────!!
 いきなり唇を塞がれた。
「んんっ! ………ちょっ……」
 抗って身体ごと引き剥がすと、1歩下がった。
 だけど、ジーンズが脚に絡んで、それ以上は逃げられなかった。
 すぐ横にあるサイドテーブルに手を突いて、身体を支える。
 このテーブルの上にも、本が山積みになっていた。
「……先生?」
「……教授の命令は……絶対なんだ」
 困った目で俺を見下ろすと、それだけ呟いた。
「君もだよ……森部君」
 革張りの椅子にふんぞり返っている教授が、厳しい声を発した。
「…………」
 
 
「ヤラれたまえ」
 
 
 ………たまえって……
 笑うトコじゃ、ないけど……
 あんまり滑稽なセリフな気がして、緊張がイキすぎて、つい口の端が上がった。
「……よかった。余裕だね」
 先生も俺に近寄りながら、口の端を上げた。
「泣き叫ばれても、困るから……」
 ───余裕……? ………んなワケ、あるかよ!
 俺は蒼白になりながら、ブンブンと首を横に振った。
 
「………あ」
 テーブルに追い詰められるようにして、先生に捕まった。
 手首を引き寄せられ、すっぽりと腕の中に抱き締められた。
「見えないよ」
「……すみません」
 先生は俺を抱き締めたまま、身体を少し回転させた。
 教授に俺の背中を見せる格好で、抱き締め直す。
 尻が丸見えになるように、シャツの裾を背中の上の方まで捲り上げられた。
 ───うわぁ……
 教授、どんな顔でこれを見てんだろう…。さっきとは違う恥ずかしさで、顔が熱くなる。
 
「……ぁ……ぁあ!」
 先生の手が、後ろに伸びた。
 尻を割って、指を奥に這わせてくる。いきなりの刺激に、俺は仰け反って腰を振った。
「……いいね」
 満足そうな声が、背後で響く。
「や……先生…離して……」
  胸の中で抗うと、先生の顔が降りてきた。
「覚悟を決めて。森部君。……僕は最後までヤルよ」
 耳元で囁かれたその声は、弱々しいけれど、迷いはなかった。
「ごめんね」
「………あぁッ」
 指が中に押し込まれる。でも全然入らなくて、圧迫感と痛みだけが、腰に響いた。
 
「口開けて」
「…んぐっ……」
 先生の指を口に突っ込まれた。二本の指が、俺の舌を探しては絡んで来る。
「んっ……んぁ……」
 唾液でべとべとになった指を、もういちど後ろにあてがう。
 教授によく見えるように、反対の手で尻が割り開かれた。
「………ぁあああ!」
 指がずるりと、突っ込まれた。凄い異物感…。
 
「やぁ……せんせ……」
 
 必死に先生の胸にしがみついて、俺は身体を支えた。
 指、熱い……。硬いし、なんか挟まってる感じが、すっごい…変……。
  
「ぁっ…ぁあっ……ぁあッ……」
 二本の指を、凄い勢いで出し入れしてくる。
 突き上げられるたび、気持ち悪いだけじゃない、異様な感覚が生まれてくる。
 ────うぁあ……嫌だ……やだ……!
 先生にしがみつきながら、教授に見られていることを思うと、ぞっとした。
「せんせ……お願い………やめて……」
 はぁはぁと、喘ぎながら掠れた声で懇願した。
「森部君…みっともないことを言っていると、ヤラれ損だよ」
「………え?」
「教授を喜ばせないと……単位はもらえない」
「………!!」
 ここまでして、最後まで犯られて……
 それで、何にもならないのは………
 混乱する頭で、俺は必死に拒否してしまう身体を抑えた。先生の胸に顔を押し付けて、言葉も塞いだ。
「んっ…んん~っ……」
 先生の指が3本に増やされ、内蔵が捲れ上がって出てくるんじゃないかと思うほど、擦られた。
 反対の手もまた、前を握ってくる。
 後ろを出入りする指のせいで刺激され、硬くなってきていた。
「……んぁああ……」
 後ろへの挿入と前の扱き上げが、ダブルで俺を襲う。
 腰がおかしくなっちゃうんじゃ……恐怖するほど、熱い。
 
「……あッ」
 
 先生が不意に、色っぽい声を上げた。
「───!?」
 胸にしがみつきながら見上げると、苦しそうに綺麗な顔を顰めている。
「…………教授……」
 はぁ…と吐息を吐きながら、俺の後ろの教授を見つめていた。
 いつの間にか背後に立っていた教授は、俺の股の下から、先生の股間を揉んでいた。
「続けなさい」
「………はい」
 先生は悶えながら、いっそう俺をいじくった。
「……んぁッ……ぁあっ───!!」
 いきなり、目の裏に火花が散ったような快感を受けて、俺は、思わず甲高いよがり声を出してしまった。
「……いいね」
 背後で、教授が喜ぶ。
「……ぁあ、……ぁああッ」
 先生の指が、俺の中で蠢く。
 立っていられないほどの快感が、何度も何度も腰を襲う。
「や……やぁ……なに……」
 ───何してんの…先生……
 神経に直接触るように、びんびんと弾かれる快感。
 突っ込まれた指がそこを擦るたび、俺は嬌声を上げた。
 勃っちゃった熱いのが、どうしようもなく疼く。先生の手の平にねだるように、擦りつけた。
 それでも散らし切れない快感に焦れて、腰を思いっきり振ってしまった。
「ぁ…せんせ………やば……や……ぁああ!」
 扱く手が激しくなる。止まる様子はまったくない。
 俺は、まっしぐらに絶頂を目指していた。
 …んぁ……イク………イクッ……ぁあああ……っ!
 あと、もう一擦り………ってところで、いきなり動きが止まった。
「んんっ!? ……ぅぅ………はぁ……!」
 ぎゅううっと搾られるような感覚を下っ腹に感じながら、急降下していく快感に困惑した。
 吐息だけを繰り返す。
 
「…………せんせい?」
 見上げると、熱っぽく潤んだ先生の目が、俺を見下ろしていた。
「…君で良かった」
 微かに呟いた声は、俺にもやっと届く程度だった。
 ────?
「………んっ」
 唇が押し当てられた。
 いきなりキスしてきて、俺のだらしなく開いてた口に舌を侵入させる。
 ───ちょ、ちょ……!
 驚いて振り払おうとしたけど、やっぱりしっかり捕まえられてて、逃げられない。
 丁寧に丁寧に、やや放心してる俺の咥内を舐め回し続けた。
「ん…ふ………」
 わざとぴちゃぴちゃ音を立てるように、口を大きく開けながら、舌を舐め取り絡ませてくる。
「いいね。……実にイヤらしい」
 教授の、喜ぶ声。
 
 そのまま背中を抱え込まれて、横のテーブルの上に上半身を押し倒された。
「────!」
 積み重ねてあった本が崩れて、床に数冊落ちたけど、気にしてる余裕なんかない。
 冷たくて硬い板を背中に感じて、俺は震えた。
「森部君……」
 ささやく唇が、首、鎖骨、胸……と、下がっていく。
「あッ……はぁ……」
「ん……ぁああぁ………」
 俺の喘ぎと、先生の喘ぎが、時々重なる。
 横に立っている教授が、先生のズボンに手を突っ込んで、後ろをまさぐっていた。
「ぁあ……教授……許して下さい……」
 俺を押さえ付けながら、先生も悶えて仰け反った。
 ……先生……色ぽい……
 サラサラの髪が乱れて、俺に落ちてくる。
 日に焼けた俺の肌を触る先生の白い手が、妙に生々しい。
 
「……はぁ…」
 乱れながらも、俺を攻める先生。悩ましい顔しながら、赤い舌で乳首を舐めてくる。
 しつこく舐められて、俺は机の上で背を反らした。
 ピリピリ、ゾクゾク…あちこち這う快感が、たまんない。
「んぁ……ぁあッ……!」
 また、後ろに指が入ってきた。
 片足を抱え上げられ、そこがよく見えるように、開かされて。
「いいね……実にいいね」
 興奮する、教授の声。
 楽しそうな教授の顔が、霞んだ視界の端に映った。
 
 ……俺…こんな喘いでる姿を、教授に視姦されている……
 
 さっきは恥ずかしくて嫌なだけだったのに…なんでか、興奮してきてる自分がいた。
 体内で、高みを求める。
 熱くなった身体を、もっともっと、と………
「せんせ……俺……」
 後ろの指を、ぎゅと締めてしまった。
 ………うわ……恥ずかしい………
 真上にある顔を見つめながら、真っ赤になった。
 先生は、ズボンから引き抜いた俺の両脚を抱え上げると、腰ごとテーブルの上にズリ上げた。
 自分の前も開ける。教授に触られまくっていた先生のそれは、もうでっかくなってそこにあった。
「……教授……入れます」
「……早くしなさい」
「───はい」
 俺を無視した遣り取りを済ませ、先生は、大きいそれを抜いた指の変わりに、押し込んできた。
「……うぁ……ああっ……!」
 ───デッカッ! ……キツイ………ああぁ…!
 強引に抜き差ししながら、押し込んで来る。
 あまりの圧迫感と異物感に、快感は吹っ飛び、腰を揺らして逃げた。
「センセ……イタ……むり………」
 はぁはぁと、首筋に熱い息を掛けながら、俺はまた懇願していた。
「僕に…委ねて……」
 先生も、俺にのし掛かりながら、苦しそうな顔で言う。
 次の瞬間、不意に仰け反って、綺麗な喉を晒した。
「──ぁあっ……教授っ!」
 教授の指が、先生の後ろに突っ込まれていた。
「………ぅぁっ!」
 そのせいで、俺の中の先生がグンと大きくなった。
「……いいよ、そのまま」
 興奮した教授の声に、先生が反応する。
 腰を動かし始めた。
 ………あッ……ぅぁああッ………!
 でっかい先生の熱くて硬いのが、容赦なく俺を擦り上げる。
 内蔵を持って行きそうな勢いで、ピストンされた。
「……ああぁ! ……ぁあっ、………ぁああっ!!」
 
 ───うあぁ……うあぁ──!!
 
 手首を押さえられ、テーブルに固定された状態で、大開脚した脚は、宙を蹴った。
 体内の奥深くまで、先生が入り込む。
 肉壁を抉っては出て行き、また入ってくる。
「…あぁッ、…あぁッ、……んあぁッ………」
 ───センセ……すごい───すごい……
 未知の違和感が、だんだんイイ方に変わっていく。これって、……気持ちイイの?
 口の端からは、飲み込めない唾液が垂れた。
「……んっ」
 その口を口髭が覆った。
 ───教授!?
 先生の後ろを指で犯しながら、唇は俺を貪っていた。
「……ん……んんっ」
 苦しい……気持ち悪い舌が入ってくる。
 それでも腹の中の熱がもっと、俺を襲う。嫌悪も続かなかった。
 
「んっ……んぁあああ!」
 前を握られた。
 もう、どっちの手かなんて、判らない。
 激しく上下して扱かれた。
「…んん! ……んんーーっ!」
「あぁ……はぁ……」
 先生の喘ぎも、激しくなる。
 ……や…もう、ダメ…いく……イク……
「……ぁぁ……教授……きょうじゅ………」
 ……あぁ、先生……せんせいっ………!!
 
「……んっ……ぁあああッ……!!」
 ドクン
 と、心臓が跳ねて、腰が震えた。
 
 どっちかわからない手の中に、俺は白濁を飛び散らせていた。
 ………ん……熱い……
 体内の先生も、痙攣している。
「…………はぁ…」
 涙目で、先生を見つめた。
「………がんばったね」
 にっこり笑ってくれたその顔に、俺は照れて笑い返した。
 まだ繋がっているせいで、快感がそこに燻っている。
 
 ……教授は、許してくれるんだろうか。
 俺は、そっと目線を教授に向けた。
「────!」
 教授は、先生を許していなかった。
 先生の後ろを犯している指は、動き続けていた。
「きょ……教授…もう……」
 喘ぎながら、先生は首を振った。
 俺の中の先生が、ピクピクと震え出している。
「君はわたしの数年間を、台無しにしたのだよ。こんなことで、許すと思っているのか?」
「すみません……でも…でも………許して下さい……」
「もう一度、イキなさい」
 ぐいっと、先生に指を押し込んだらしい。
「ぁあ! ……はぁっ……!」
 また顎を反らせて、先生が喘いだ。
「ぅぁあッ………」
 先生が悶えると、俺も辛かった。
 また芯を持ち出す、先生の熱いモノ……
 
 ………ちょっと待て!
 俺、とばっちりじゃねえ!?
 熱くなりかけた身体に、冷静に問い掛けた。
「先生のヘマ」に俺がこれ以上、付き合う必要は……
 
「センセ……俺……も…ヤダ…」
 早速、訴えた。声が掠れて、自分でも痛々しい気がする。
「……ごめんね。……それはムリだよ」
「その通り。君ももう一度イキなさい。イクときはわたしを呼ぶように」
 ───えっ!?
 教授を仰ぎ見ると、「はやくしなさい」と、顔を顰めた。
 ………ちょ……
 俺が一番ゾッとしたのは、教授を呼べってとこだった。
「…………」
 俺は先生を見上げて、助けを求めた。
 先生は、哀しそうに微笑んで、首を横に振った。
「ん……」
 ピストンが始まる。
 さっきより腰を高く抱えられ、俺は更に奥底まで貫かれた。先生が出した液体のせいで、滑りが違う。
 ………うわ
 もうダメだと思ったのに。もうムリだって……
「ぁああっ……せんせ……せんせー……」
 丁寧に丁寧に、優しく突いてくれる。
 擦れすぎて、痛い。
 でもそれ以上に、打ち付ける振動に快感が湧く。
 乳首にも舌を這わて、舐めてくる。
「ん…んぁっ、ぁあっ、……先生…きもち…いー」 
 はぁ…はぁ…と、吐息を熱くさせていきながら、先生を見つめた。
「……僕も……」
 それだけ言うと、唇を塞がれた。
「ん…」
 変わりに指が胸をいたぶる。両胸を痛いほど摘んでくる。
 
「…んッ……んん……」
 ……ぁあ…ぁ…すご……口と胸と後ろ……3点攻め……
 ───センセー、上手すぎ……
 
 あんまり気持ちよくて、思わず先生を見つめた。
 薄目を開けた先生と、一瞬目が合った。先生の色っぽい目に興奮して、俺も応戦し出す。
 舌を絡め返した。
「いいね、いいね、盛り上がってきた」
 横で喜んでいる教授にも、ちらりと目線を送った。
 ────こうやって、何人の生徒を食い物にしてきたんだ、この教授は…………
 中川先生の”仕込まれ方”も、尋常じゃない。
 先生が生徒の相手をさせられて、きっとテクを上げたんだ。
「ん……んッ、…んッ……」
 キスを続け、舌を絡め合ったまま、先生は激しく俺を突いた。
 腰は激しいけれど、優しい愛撫、優しいキス。
 先生の手と舌は、さっきとは違うやり方で、俺の身体を熱くしていった。
 何度目かの起立も、先生が包んでくれた。熱い手の平が、どんどん俺を高めていく。
「んぁ……んッ、…んッ……!」
 ──うわ……すげ……ぁああ………ああっ…………
 ───い……イク……せんせ……いく!!
「…きょうじゅ…」
 申し訳程度、一回だけ呼んだ。
 
 ………ん、ぁああぁぁっ……!!
 ドクンッ
 
 何度目かの放出。もうそんなに出なかった。
 ……ぁあ……はぁ……先生……
 見上げると、さっきと同じように微笑んでいる。
「………付き合わせて、ごめん」
 はぁはぁと弾む息で、こっそり囁く。
「………うん」
 気持ちよかったから……俺も笑い返した。
 ……でも、なんにしても……今度こそ、許してもらえるのだろうか……
 
「……………」
 俺と先生は、教授を見た。
 
「君たち、いいねえ。実に、イイ」
 喜ぶ教授のその手には、スゴイものが掴まれていた。
 ───────!?
「次は、これを二人で入れ合うってのを、やってもらおうかな」
「…………………」
「それとも、これを入れたまま、講義に出てもらおうか」
 
 目眩が俺を襲う。
 ───俺は、人生で最大の後悔をした。
 単位を……出席日数を、ナメたら、絶対いけないってことを。
 要注意講義ってのの忠告を、きちんと聞いておけばよかった……
 ───来年は、絶対、気を付ける。
 心にそう誓った。 
 二度と、ごめんだ。こんなの!
  
 ぐったりと言葉もなく、俺は教授を見ていた。手の中のモノも。
 …………マジで……勘弁。
 疲れすぎて、ぼんやりと先生に視線を移した。
 先生も、教授の手の中のモノを見つめていた。
「……………」
 ……目が…その目が、妙に光っている気がする。
 
 
 
 トクンと、俺の中で、先生が脈打つのを感じた。
 
 
 …………先生?
「…………」
 
 …………俺、さすがに、もうムリだよ……?
 
 
 
 
 -終-  


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