俺は、中学校の体育教師になったばかり。
念願の母校に赴任ができて、憧れていた教員ライフをエンジョイし出しだ。
エンジョイったって、1年目は判らないことだらけを闇雲に突っ走って、あっと言う間だった。
……そして2年目にして、悩みに直面していた。
「鷹杉、どうした?」
「あ、武藤先生……」
武藤先生は、俺が在学中、体育を担当していた先生だった。
俺はこの先生に憧れて、教員になろうって決めたんだ。
 
誰もいなくなった職員室で、一人悶々と課題を抱えていた俺に、話しかけてくれた。
「先生。俺…実技の方はすごい自信があるんです。でも……」
クックッ、と先生が笑った。
「……何ですか?」
あれから、10年経っていた。
もともと男前の先生だったけど、今はいい感じにダンディーになっている。
40に差し掛かるとは思えない、鍛え抜いた筋肉は、今も健在だった。
「……いや、あんなに手に負えない、悪戯坊主だったのに」
先生は懐かしそうに、目を細めて俺を見た。
「そんなきちんとした言葉で、喋ってるから」
また、笑い出す。
「もう、またそれですか…」
初めてここに来て挨拶した時も言われた。それから時々、同じようなことを言う。
…まあ、よっぽどの悪ガキだったのは、自覚があるけど。 
 
「教え子が、こんな立派になって帰ってくるのは、いいもんだな」
俺も、笑顔を返した。
「先生がまだ在籍してくれてて、俺、嬉しかったです」
もういなかったら寂しいなあと、思っていた。
「それより、どうしたんだ? こんな時間まで」
他の先生たちは、とっくに帰ってしまっていた。
5月の空はやっと薄暗くなって来ているけど、もうかなり遅い時間だった。
隣のデスクのイスを拝借して、武藤先生は俺の横に座った。
今はジャージを脱いでいて、捲り上げた黒いTシャツの肩から褐色の腕が剥き出しになっている。
……カッコイイ筋肉だよなー……
見惚れながら、溜息をついた。
俺は筋系だから、筋肉はあるけどガチムチの先生ほど身体のボリュームは無い。
「今年から、実技だけじゃなくて、保健の授業も担当になったんですよ」
「ああ、そうだな」
「教科書読んだり、黒板に何か書くのも、嫌いなんですけどね」
「鷹杉は字が汚かったな」
また、目を細める。
 
「……内容が、問題なんです」
茶化す先生を横目に、俺は席を立って職員室の端に向かった。
「コーヒー淹れますね。……俺自身、ちゃんと授業なんか、聞いてなかったから…どういう気持ちで教えたらいいか判らないんです」
保健体育。……要するに、性教育だ。
子供にとって、大事な通過点だから、きちんと授業をしたいと思う。
「……でも、女の子とかいるし。俺、恥ずかしくて…ちゃんと生徒の顔が見れなくて…」
「からかわれるんだろ? 生徒に」
「……そうなんです。俺が照れてんの、判っちゃって」
情けなくて、後ろ頭を掻きながら、笑った。
せいぜい俺の胸までくらいしかない、小さな子供たち。
騒いでいる言葉を聞いていると、興味ばかりが先に立って、知識なんてないから、危なくてしょうがない。
 
「鷹杉も小さかったのにな。こんなに育って」
先生がいつの間にか、後ろに立っていた。同じ高さになった俺の顔を見る。
「俺……先生に憧れて、身体鍛えたんですよ」
俺も負けじと、見返した。昔はかなり短かった髪を、今は後ろに掻き上げて固めている。
俺はいかにも体育会系ってふうに、サイドは短くしていた。まあ、前髪はちょっと長めに。
「……先生の保体の授業……今になって、ちゃんと聞いて置けばよかったって、後悔してますよ」
棚にあるマグカップを取ろうと伸ばした手首を、いきなり後ろから掴まれた。
「今からでも間に合うぞ。教えてやろうか」
「……え?……」
振り向いた俺のすぐ目の前に、先生の顔。
身体を絡め取るように、抱きすくめられ、膝を崩された。
「…あっ!」
状況が判らないまま、俺は床に押し倒されていた。
身長は並んだけれど、厚みは武藤先生の方が断然ある。
俺は、組み敷かれるように床に両腕を張り付けて、抑えられていた。
 
「ちょ……先生?」
「手取り足取り、実践を交えて、教えてやる」
「や……いいですっ……そんな」
俺は、焦った。……何言ってんだ? この先生!
俺はとにかく、このポーズが嫌だった。
顔の両側で抑えられた手首が、びくともしない。
股の間に入り込んだ先生の身体のせいで、俺の両脚はハデに開脚している。
「もう誰もいないから、大丈夫」
「! ……そう言う問題じゃ…」
外はかなり暗くなっている。
光々と照らす蛍光灯が、薄闇の中に室内をくっきりと浮き立たせているだろう。 
立ち上がっていれば、窓外の校庭を突き抜けた更に向こう、大通りから姿が見えてしまう。
そんな開け放たれた、空間で、こんな格好……。
俺だってどっちかって言うとゴツイ方で、こんなふうに押し倒されるのは、もの凄い抵抗があるし。
―――それに…実践って……?
 
「警備員はいるから、大声は出すなよ」
「……は?」
対応しきれない俺を面白そうに見下ろしながら、武藤先生は、俺のズボンに手を掛けた。
「……やっ? ……せんせい…」
自由になった片手で、その手を阻止ししようとした。
俺もジャージにTシャツ一枚だった。
力の強い先生の手は、簡単に俺のTシャツの裾を引きずり出して捲り上げた。
「―――!!」
いきなりの衝撃に、一瞬呼吸が止まった。
――――ぁあっ!?
胸に鋭く冷たい刺激。
針で刺されたかと思うような鋭さが、一瞬走った。
その後の、異様な感覚……。
「…んぁあぁ……!」
不意を食らった俺は、思わず悲鳴を上げてしまった。
「鷹杉」
「――!!」
中学時代の頃の様に呼ばれて、俺は生徒に戻ったような錯覚を起こした。
蒼白になって、先生を見上げる。
10年という年季は刻まれているけれど、まだまだ男前の先生。
日に焼けて褐色の肌。
存在感のある、分厚い身体。
 
「……せんせい……」
ふと、その目が笑った。綺麗な二重が細まる。
「そんな怯えた顔するな。ただ教えてやるだけだ」
「……………」
「あと、テストだ。教師として、どのくらい知識があるか」
「………はぁ?」
また、ふっと笑う。
「今のここ、何て言う名称だ?」
「えぇっ! ………あッ」
また、舐められた。
腰に変な刺激が来て、俺は呻いた。
「や……先生……やめ……」
動かせる左手で、先生の右肩を押し返した。顔を引き剥がしたくて。
でも、その身体はビクとも動かなかった。
先生の舌が、ぬらぬらといつまでも、這い回る。
「……んぁあ…」
「答えるまで、やめない。もちろん、正解でないとダメだ」
ちょっと顔を上げて、楽しそうにそんなことを言い出した。
「……そんな!……ぁああ!」
激しく、喘いでしまう。
………ぁあ……ちょっと、待って………
……せんせい……
刺激が強すぎて、思考が纏まらない。
しかも恥ずかしくて、口になんか出せないだろ!?
「……早く。この、尖っているところは?」
「―――――!!」
俺は、唇を引き結んだ。……あらぬ声が出そうだし。
腰を捩ってしまうのが嫌で、力を入れて、全身で踏ん張った。
先生は、ますます笑った。
「………下が、元気になってきてるよ。この状態をなんて言うんだ?」
「!!」
 
もう俺は恥ずかしくて、顔を上げていられなかった。
俯いて、首を振る。
「……く……んんっ…」
胸の刺激がどんどんエスカレートしていく。
腰への疼きが高まっていく。
「早く答えないと、マズイことになるぞ?」
「先生……じゃあ……離してください……」
情けなく声を震わせながら、俺は睨み付けた。
「離さない」
平然と突っぱねられてしまった。
「……先生……」
床の冷たさが、熱くなる身体を思い知らせる。
「ほら、この尖ってる所は?」
抑えられている右手が、脇から震えた。
………ぅ……ぁあ……。
俺は、覚悟を決めた。
身体の名称を呼ぶことぐらい、なんだ。
それより恥ずかしいことに、俺の身体はなりかねなかった。
「……乳頭です。その周りは乳輪――総じて、乳首…」
片方だけ舐め回されて、完全に突起している。
俺は、顔が真っ赤になっていくのがわかった。
「……正解。じゃあ、ここは?」
胸から、脇の方へ舌を滑らせた。
「んっ……はぁ」
「喘いでないで、答えろ」
――――!! ………先生……
俺は睨み付けながら、震える声で答えた。
「右側腹部……右季肋部(みぎきろくぶ)……臍部…下腹部……陰部…」
―――ちょっと、待て! その下は……
先生の舌は、ジャージと下着を引き下ろしながら、どんどん下がっていく。
「せ……先生、それ以上は……もう!」
先生の肩を押して、やめさせようと抗った。
「これからが、本番だろう? 生徒に何を教えるつもりなんだ?」
「……そんな」
「ほら、ここは?」
「……ぁあっ」
半ズリになった下着の中に手を突っ込まれた。
「陰部を、上から丁寧に説明しろ」
「ぁあっ……!」
大きな掌で、全体を掴むように握り込んで、優しく揉み出した。
………うあ、ぁあ……!
大きくなってしまったそこは、既に上を向いていた。
腰骨まで引き下ろされたボクサーパンツの端から、先端が覗いている。
「……………」
 
俺の腰が、また疼きだした。
ヤバイ……早く答えないと……
でも、さすがにそこは恥ずかしい。
 
「ぁ……く……」
無情に先端から根本…袋までを揉みしだく動きに、腰が捩れた。
「ん?」
楽しそうに聞いてくる。呼べと言わんばかりに、指先でボクサーからはみ出ている毛を摘んで引っ張られた。
俺は―――もう一度、覚悟を決めた。
唇を舌で湿らせて、先生を睨む。
楽しそうな目にぶつかった。
「………陰毛…」
「正解」
指がまたボクサーの奥にもぐりこんだ。
「んぁ………そこは……陰茎……ペニス」
「正解」
裏筋を伝って、先端に触れた。
……ぁあ……
「……き…亀頭…」
はぁ…と、息が漏れてしまった。
「正解……ここは?」
下着からはみ出している先端の割れ目を、親指の腹で優しく擦り上げる。
ぞくりと、背中を何かが這い上がった。
「アッ……」
激しく腰が捩れた。先生の指は、俺を離さず付いてくる。
「―――に…尿道口……」
「正解……隠語では?」
………なに……?
「ここのこと」
割れ目を執拗に、擦り続ける。
「ぁあっ……や……す…鈴口?」
「正解……ここは?」
括れの淵を、人差し指の腹がなぞる。ゾクゾクと背中に、快感が走る。
「んくっ……、カリ…です」
「正解……凄い……ぬとぬとに、濡れて来たよ」
俺の先端からは、透明な液体が溢れて、先生の手を淫猥に光らせていた。
 
「――それは…カウパー線液。精子が含まれているから、性交する時はこれが出る前に、コンドームを絶対装着すること!」
 
腹に力を込めて、授業で生徒に言うように武藤先生に、言ってやった。
大事な部分だから、恥ずかしがってなんかいられない。……これを怠るヤツらが多くて、危険なんだ。
「…………」
先生は目を細めて、指を動かした。
裏筋を行ったり来たりさせる。
「大正解。……このヌルヌルは、いつ出る? その状態をなんて言う?」
……ぅぁ……はぁ……
「……勃起したとき……」
「……正解……続けて」
指が下着をまさぐり、下の袋の方へ辿っていく。
先生の手のせいでボクサーパンツの股間部分が膨らんでいて……
半端にずらされているジャージのズボンが、太股を少しだけ見せているし。
………なんか…、…エロいカッコ……してんな…俺……
普段と違う目線、職員室の床の片隅で。
武藤先生の褐色の腕が、浅黒い俺の腹に触れているのも…妙に興奮する。 
先生の指が焦れたように激しく動いた。
「…あッ…や……」
「鷹杉…続けろ」
「………ハイ……そこ…は……陰嚢……その中に睾丸が入っていて、精子を作り出している…」
………ん…ぅうっ……! ……ああ…
ボクサーの中で。袋の裏から鈴口まで、一気に撫で上げて、なで下ろす。
完全に反り勃っている俺のモノは、その度、ビクンと揺れた。
息が……熱くなる……
「ん……勃起は……男性が女性に性的興奮を感じると、海綿体に……血液が集まって陰茎が膨れあがる……はぁ…」
先生の指は、俺がどう喜ぶかを知っているように動き回った。
―――先生……それは…マズイ……
腰が、震える。……身体が熱くなっていく。
目を細めて、喘ぎそうになる身体を静めた。熱い吐息で深呼吸を繰り返す。
そんな俺を、先生は楽しそうに、じっと見下ろす。
「それから?」
「……はぁ……カウパー線液が…尿道を通るとき、精巣から出てくる精子と交じってしまうから………アッ…センセ……、危険。絶対…侮ってはいけない………んっ」
最後は上擦ってしまった。握り込んで上下に扱き出すから。……それでも俺は、先生の目を睨み付けながら最後まで説明した。
子供同士の迂闊なセックスによる、悲劇を防ぐ。それは、俺の大事な役目だ。
この項目は、決して言い淀んでいてはいけない。そう思って、きちんと勉強していた。
 
「……大大正解」
 
先生の目は優しく微笑み、口元も綻んだ。
………あ、今ホントに褒めてくれた。
俺は、興奮の中で微笑み返した。
「でもな、鷹杉」
「……ハイ?」
「性的興奮は……男同士でも起こるんだ。ソレも言っとけ」
「!!」
俺の身体が、実証している。
「………はい……」
真っ赤になったまま、俺は素直に返事をするしかなかった。
「―――あッ!」
指が……先生の指が、後ろを…まさぐった。
「…………」
先生の呼吸も、何となく荒い。言葉にはせず、目線で促された。
「……ぁ、……せんせ……そんな押さないで……」
……んぁっ!
ぐいっと、時々押し込んでくる、先生の指。
冗談なのか本気なのかわからない。ヘタすると入ってしまいそうで、嫌だった。
「……そこは……アナル……肛門…です」
熱い息になってしまう、俺の言葉。
先生の首筋で、渦巻く。
右手は床に固定されたまま、体重を掛けてのし掛かられている。
俺は自由になる左手で、先生の右肩を押して、二人の間に何とか空間を作っていた。
「………ぁあ! ……先生……」
「……正解」
「やめ……やめてください!」
もう迷わず、指が入り込んでくる。
肉壁を内側にを押し込むように、グイグイと圧迫して。
俺の液体が、滑りを手伝っている。
………うぁああ……嫌だ…こんなの……
突然の異物感に、身体全体が拒否した。
背中は仰け反り、腰は捩れ……後ろは排出しようと、押し返す。
吐き気が、込み上げてきた。
 
「……鷹杉」
真っ青になった俺に、先生はもう一度呼びかけてきた。
「…………」
俺は応えられず、目線で文句を付けた。
「続けろ」
――――え!?
「……なに……」
……あっ………ぁあっ……
押し出すより、押し込む力が、勝っている。
下半身ごと突き上げられるような圧迫感が、俺を襲った。
「あぁぁ! ……やっ………先生!」
押し返していた先生の右肩にしがみついてしまった。
腸の中で、指が暴れる。
「ほら、ここは?」
「……はぁ……」
楽しそうな声に、腹が立った。霞む目で、精一杯睨み付ける。
声とは反対に、あまりにも無感情の先生の目がそこにあった。真っ直ぐな目線に射竦められる。
「…………直腸」
「正解」
はぁ…と熱い息を吐きながら、俺は喉を反らせた。
余りに近い、先生の顔。
どんどん近づいてきて、怖くなった。
「もう一つ、教えてやる」
「………?」
……あ………
奥まで突っ込まれた指が、抜き差しを始めた。
「やっ……やめてください……もう」
腰を捩っても、こう体重で抑えられていては逃げようがない。
「男の身体はな、ホルモンによる性欲と、外的刺激による勃起と、二通りの性処理の仕方がある」
「…………」
授業のように、淡々と説明する先生の声……。
でも、指は暴れ、あらぬ所を突きだした。
「……ぁあッ」
びくっと腰が揺れて、大きな声が漏れてしまった。
………何……刺激が……
目がチカチカとした。
「ここは? ……名称は知ってるはずだ」
「………」
唇を噛んで、首を捩った。声なんか出したら、また喘いでしまう。
先生の指がそこを掠めるたび、勃ち上がってる前のモノが震える。
高まっていくそこの感覚に、俺は恐怖しだした。
「く……ぁあ……」
どうしても、声が漏れる。
抑えられてる右手首が痛い。……身体が……熱い……
「や……先生」
………マジで………
「……お願いです………」
「答えろ」
「―――!!」
無情な声に、俺はもう一度、下唇を噛んだ。
「……前立…せん………ん、ぁああぁ……!」
出し入れが、早くなった。
今度こそ、やばい。
俺の身体は、もうそれだけを、目指し始めていた。
「…正解」
少し、優しい声で返された。
「性欲の大小は、個人差がある。そこに羞恥は付きものだ」
「…ぁあ……くぅ……」
「でも、性欲そのものが本能であり、望まなくとも、こうやって勃起させられるメカニズムもある……」
そこで言葉を句切ると、俺をじっと見つめてきた。
 
「―――――」
…………先生?
 
「だから、いちいち恥ずかしがっていることは、ないんだ」
「…………」
「堂々と、語ってやれ。生命の営みの凄さを」
「………んぁ……」
「人間が、生き繋いでいくことにどれだけ貪欲か…この性欲から、よく判るよな」
口の端で笑った。……俺は、笑えない……
「…………」
「それを”理性”で抑制出来るのが、”人間”なんだってこともな」
………理性。それがあるから人間……俺は笑った、先生、いいこと、言う。
「……ケダモノ……」
「ん?」
「こんなイキなり、俺を襲ってる先生は……ケダモノだ……」
潤んでしまう目で、睨み付けた。
先生は、目を見開いて、俺を見つめ続けた。
「先生……指……外してください」
イキそうになるのが……怖い。なんだって、こんな……
「これは実習だ。まだ終わってない」
「ん…ぁあぁ……!」
指が増えたのか……圧迫感が増した。
「やめ……やめて…ください」
切れ切れ、懇願した。体中で、快感を追ってしまう。足先をばたつかせた。
指を受け入れて、奥で搾って……前への刺激を欲する。
………冗談じゃない! ……そんなの、ご免だ!!
イヤラシイ音を立て続けるのも、俺の身体が悦んでいるようで、羞恥を煽る。
「やめてもいいけど――このまま…放置は、辛いよな?」
「…………」
……それは、そうかもしれないけど――
こんな高められたら、はい終わりって訳にはいかない……
「最終的に、どうすることが性処理だと言える? その行為の呼び方は?」
「…………」
滲む視界の中で、先生を捉えた。
それを言えば、解放してくれる……?
 
「こんな実習……俺……嫌だ……」
泣きそうな声に、なってしまった。
 
先生の顔は、何を考えているか判らない。ただ俺を見下ろす。
動けないのが、悔しい。抜いてもらえない指が、歯痒い。
俺だって体育教師なのに。体力自慢でこれまで来た。
人より強いことが、俺のステイタスだったんだ。
……なのに、反応しまくって、悶えてる―――それが、一番嫌だった。
「……射精……睾丸で作られる何億もの精子を……」
……くっ………また……指増やした……
「……あっ…、ぁぁああぁ………!」
先生の肩に置いた手に、力を込める。はぁはぁと息も乱れる。
「――吐精することによって、性欲を……収める……」
見据えた俺の目の端から、涙が零れた。
泣くのも悔しい――
でも、収まらない身体の熱に、どうにかなってしまいそうで。
「せんせい………」
最後は、なんで呼んだか、判らなかった。
「―――ごうかく」
先生の声も、掠れていた。
そして、やっと右手首を解放してくれた。
上半身から圧迫感がなくなる。
「―――――」
俺は深呼吸と溜息を繰り返した。
「鷹杉……」
腰元に移動した、先生が俺を呼ぶ。
「…………?」
その目は、悪戯っ子のように、輝いていた。
「……これは、生徒には内緒だ」
そう言って、ボクサーを太股まで引きずり降ろすと、後ろの指はそのまま、左手で反り返っているモノを握り込んだ。
「ぁ………」
「男がやるフェラは、……気持ちよすぎてクセになるぞ」
 
「……え!?」
俺の股間に顔を埋めた先生は、握った指を下げながら、唇をまとわりつかせてきた。
「………あぁぁ!」
唇と輪にした指を、両方同時に上下させる。
キツイ締め付けと、ぬらぬらしたなまめかしい感触。
「んぁあああぁ……や……」
…すごっ……!
以前経験した、もどかしい愛撫とは、根本的に違う。
………あっ、……ぁあああ!……
追い上げが半端じゃない。
どこをどれだけどうすると、なにが持続するか……それを、知り抜いた動きだった。
 
吸い付く唇と舌が、俺を絶対逃がさない。
容赦のない出し入れ。ポイントに繰り返し刺激を与えられる。
 
「……あああぁぁっ……ぅぁああ……」
 
俺の快感は、高められては焦らされ、次のに高みに導かれる。
一段一段確実に上り詰めて、ある一点を目指していく。
後ろに入れた指が、それを煽った。仰け反った背中が、もとに戻せない。
「……せんせい……ぁああ……すご………」
突き出した腰は、熱くて熱くて……
自由になった両手は、必死に口を塞いでいた。
 
うあ! ……ぁああっ、……ああぁ……
 
「はぁ……センセ……イク…イク…イク…俺……!」
気持ちいい……
イキたいけど……もっと、このまま――
つい、そんなことを思うほど、快感に酔いしれた。
 
「……うぁああぁ!」
 
腰がビクンとゆれるほど、激しい吐精感。
先生の口の中に、思いっきり放出した。
固い床の上で、あちこちが痛いのも気にならないほど、身悶えて痙攣してしまった。
最後の最後まで、搾り取るように吸い上げると、やっと指も一緒に抜いてくれた。 
「………良かっただろ?」
俺の出したモノを全部飲み下したその唇で、ニヤリと笑う。
「実地テスト、終わり。成績は100点満点だな」 
「…………」
俺は、声も出せないほど、打ちのめされていた。
疲労感、脱力感、爽快感、……そして…激しい羞恥。
冷たい床の上で、今起こった事をぼんやり反芻した。
……俺……先生に…犯られた……これは……そういうことだろ……?
何が実践だよ……ひでぇよ……こんなの……
「……鷹杉」
横たわったまま放心してる俺に、のし掛かるように、先生の体が俺に影を作る。
「オレは、ケダモノじゃないぞ」
「!………こんな、ことして――!」
睨み付けた俺に、飄々と笑う。
「襲ったんじゃない。あくまでもお勉強」
更に、にっこり笑う。
「生徒はいつまでも生徒だな。お前を先生として、見れない」
「……………」
―――……俺は……どう答えていいか、わからない…… 
………まさか……感謝しなきゃ、いけないのか?
「そうそう、オプションは有りだ。希望は受け付けるぞ。最後まで教えてやる」
「…………はあ?」
「頼まれれば、実技研修として、最後までヤッてやるって、言っているんだ」
また、口の端で笑う。
…………な………
悪びれない、この性格。そして……俺の太股に跨ったままの、先生の股間……
「む……むとうせんせい……?」
なんだ? このボリュームと力強さ…… 
「――――いい! ……遠慮しときます!!」
俺は、今度こそ蒼白になった。
襲ってないだって? ………嘘付け!
冗談じゃない! そんなもん、知ってたまるか!
今にもケダモノに変身しそうな先生の下から、俺は抜け出そうとした。
腕の中でジタバタしながら、悔しかった。力では絶対に勝てない。
さっきもどこまで犯られるか、途中から、真剣に怖かった。
先生の逞しい褐色の腕に……俺は、まったく敵わなかった。 
 
「鷹杉」
懲りない先生。熱い眼差しで、鼻が触れるような距離で俺をじっと見つめてくる。
「先生……」
………俺、こんな事ぐらいで泣いてる場合じゃないかも。
その眼を見つめ返した。
先生の太い指……たぶん3本は突っ込まれた。
……思い出して、そこがヒクついてしまった。
ぞくりと……散々いたぶられたあちこちが、疼いた。  
 
俺の楽しいはずの、教職ライフ…… 
いったい、どうなってしまうんだ?
 
「とりあえず………”今は”間に合ってますんで」
負けてたまるか。
俺も、にっこりと返した。
 
 
 
 
-終-

                               
 
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