「そこ、ちがうな」
 最近転校してきた先輩に、また注意を受けた。
 
 僕は、吹奏楽部でフルートを担当してる。
 小学校の時の鼓笛隊でフルートをやって、そのまま中学でも吹き続けていた。
 部活も2年目だから、かなり上手いつもりでいたんだ。
 もともと余り注意も受けないで来たし、後輩もいる手前、いちいち指摘されるとカチンとくる。
 ………でも
 先輩が演奏してみせる。
 
 ───はぁ……
 
 聴き惚れてしまう。
 出だしの音…唇の形、息の吹き込み方が、そもそも違う。
 流れる指使い。音と音のつなぎ目の滑らかさ。
 そして、高音………
 
 キンキンと甲高い僕の音とは、比べモノにならない。
 オクターブ飛び越えても、掠れもしない。雑音も入らない。揺らがない……。
 澄んでいて、心の奥底、身体の隅々まで深く染み渡っていく。
 
 指使いも見事だから、目を閉じて聴き惚れるのも勿体ない。
 よく音漏れがしないなって、感心するほど優しい押さえ。
「…………」
 先輩が吹き出すと、僕は瞬きも忘れ、見惚れた。
 自分のフルートを掴んだまま、立ちつくしてしまう。
 身体を揺らすたび、サラサラと流れる髪が、柔らかい動きを醸し出していて……
 僕なんか、一生懸命吹いてるリキミがそのまま動きに出て、息継ぎももっと雑だった。
 
「やってみ、今の」
「あ、……ハイ」
 僕なりに感情を込めて、先輩のマネをしてみる。
「違うだろ、吹きゃいいってもんじゃない」
 イライラしたように、僕を止めた。
「指が遅いのと、吹くタイミングが違う」
「……………」
「あと、もう一拍息を長く。余韻が無いから余裕がなくて、聴いてて焦らされる」
「………ハイ」
 ……やってんのに!
 心の中で反発しながら、返事だけしていた。
「違うって! おまえさ、自分の音、聴いてる? 何でそんな汚い音出せんの」
 ────!!
 僕は、もう限界。そんな言い方しなくったって!!
「聴いてます! 先輩、自分が上手いからって、ヒトを下手扱いしないでください!」
 普段思っている事を、言ってしまった。
「先輩のレベルに着いていかなくたって、充分だと思います!」
 技術ばっか求められて、まともに完奏させてもらえない。
 吹くのが好きな僕にとって、それはすごいストレスだった。
 いっつもいっつも、同じトコ注意されて、壊れたレコードみたいに、同じフレーズを繰り返してばかり。
 先輩が来てからは、他の楽器との音合わせも、させてもらえなかった。
「──おい、純!!」
 僕を呼ぶ声を背中に、音楽室を飛び出してしまった。
 
 カバンは掴んだけど、フルートのケースは、置いてきてしまった。
 むき出しのままフルートを握って、僕は走り続けた。
 よく練習場にしている、近所の河原まで走った。
 鉄橋の下は、練習しやすい。好きなだけ、音が出せる。
 響いてくる音が、心地良いんだ。
 
 いつものポジションにたどり着くと、座り込んだ。
「……………」
 呼吸を、落ち着ける。
 目を閉じて、思い出す。
 みんなとヤル”演奏”を。
 一斉に息を詰めていて、指揮棒が振り下ろされる瞬間を待つ。
 
 その瞬間、全ての生命が動き出すように…音が響き出す。
 モノクロだった世界が、一瞬にしてフルカラーに変わる。
 
 そして、共鳴。
 
 ピアノが…クラリネットが…コントラバスが…トローンボーンが。
 僕のフルート。バイオリン、チェロ。
 合いの手でシンバル。
 可愛いマリンバ。底を打つ、ティンパニー。
 それぞれが違うのに、一体となって、一つの世界を作り上げていく。
 
 初めてそれを味わったのは、小学校の運動会で、鼓笛隊行進が成功したとき。
 一体感が気持ちよくて、ずっとそれを感じたいと思った。
 
 あの感覚を思い出すと、身体が熱くなってくる。
 そして、最近加わったもう一つの感覚。
 先輩が吹く、もの悲しい旋律。
 なんでか、先輩の音は感情を掻き立てる。
 ソロのパートで、それを僕はやってみたかった。
「…………」
 周りみんなの気配を感じて、先輩のマネをしながら、僕はマウスピースに息を吹き込んだ。
 歌い出す、筒の中に響く僕の音。
 しばらく吹いていたら、鉄橋の上を電車が通った。
 うるさくて聞こえなくなるので、この時ばかりは、吹くのを止める。
 電車の音が消えるのと入れ替えに、砂利を踏む足音が響いた。
 
「………先輩」
「こんなトコで、練習してるから……」
 言いながら、僕のフルートのケースを手渡してくれた。
 ───これ持って、追いかけて来てくれたんだ……
 
「音が、変に響いて……却ってわからないだろ?」
「………え……」
 ───僕は、響くのが気持ちよかった。響くのが良くないなんて、考えたこともなかった。
「生の音を聴かないで、反響した音を聴いてるから、テンポがずれてたんだ」
 納得したような顔で、先輩は言った。
「こっち来い」
「あ……」
 僕の手首を掴むと、鉄橋の下から出た。
 ………先輩。
 振り返りもしない。
 さらさらなびく髪の毛が、先輩の耳を見え隠れさせていた。
 僕は手首をしっかり掴まれたまま随分歩いて、見晴らしの良い緑地公園まで、引きずって行かれた。
 その公園と河原の間、足首まで青草が生えている吹きさらしの場所で、先輩は止まった。
「ここで、吹いてみろ」
「……はい」
 掴まれていた手首が、痛い……。
 フルートを構えながら、何となく、ドキドキした。
 
 ………あれ
 
 鉄橋の下で吹くときとも、音楽室で吹くときとも、違う気がした。
 
 ………なんか、懐かしいな。
 
 もう一度、吹いてみた。
 いつも演奏をすぐ止めさせる先輩が、今は僕の好き勝手に吹かせてくれる。
 
 色々試してみて、やっぱり懐かしいと思った。
 
 そして、いつも注意を受ける場所で、何故か音が引っ掛かった。
 なんで……ちゃんと吹けてたのに……
 指が息とあわない。
 耳で聴く音と、身体で感じているリズムが違う。
 息を吸って、吐く瞬間の出る音が、指より一瞬早い。
 
 僕は初めて、先輩の前で、自分から吹くのを止めた。
「……………」
「わかっただろ?」
 そう言って、先輩は笑った。
「……………!」
 
 ……笑った。
 ──初めて見た……先輩の笑顔。
 
 いつも注意ばかり受けて、怖い印象しか無かった。
「なに?」
 訝しんだ先輩が、首を傾げた。
「いえ………なんで引っ掛かかっちゃうのか、わかんなくて……」
 僕は、慌ててごまかした。
「ちょっと貸してみ」
 先輩は僕からフルートを取り上げると、口に当てた。
 ────あ……
 いつも通り、実演で教えてくれた…んだけど……
 
 先輩の口が、僕が使っているマウスピースに触れている。
 
「判った? もう一回、吹いてみ」
 そのフルートを、返してくる。
「……………」
 僕は、さっきよりドキドキしてしまった。
 ───どうしよう……呼吸が……
 
「どうした?」
 半端に構えたまま動けない僕を、もう一度覗き込む。
 僕、先輩が嫌いで、まともに顔を見たことが無かった……
 
 綺麗な瞳。
 
 演奏してるときは、目を伏せてるし。指ばかり見てたから……知らなかった。
 真っ赤になってしまった僕に、また笑いかける。
「自分の下手さに、びっくりしてんだろ」
「えっ!」
「ウマイつもりで、いたろ?」
「……………」
 そういう気持ちもあったから、何も言い返せなかった。
「オレが今吹いたの、聴いてた?」
「……はい」
「そのまま吹いてみ」
「…………」
 ドキドキしながら、先輩が触れたそこに、唇を付ける。
 ……ツキン……
 鼓動の音だけじゃない、何かが心臓を走った。
 ………集中しなきゃ。
 唇を当てたまま深呼吸すると、先輩の音を忘れないうちに、そのフレーズを吹いてみた。
 
 ………あ!
 
 ウソみたいに、スムーズに指と音が重なった。
「………先輩」
「純はね、ホントは上手いんだよ」
「…………」
「それは、判ってた。だから、ちょっとテンポずれるのが勿体ないと思って、煩く言ってたんだ」
 申し訳なさそうに、また笑う。
「変な自主練で、妙なクセを付けてたんだな。やっとさっき、判った」
 
 ………ああ、そうか。
 何で、懐かしい音なのか、僕もわかった。
 フルートが好きだと思った、あの時。
 小学校の鼓笛隊は、校庭で練習していた。音を響かせる環境なんかじゃ、吹かなかったんだ。
 だから、生の音をしっかり聴いていた。
 
 僕は、自分が上手いつもりで、自分の音なんかまるで聴いていなかったんだ。
「………先輩」
 情けなくて、恥ずかしくなった。
 さっき先輩に、言い捨てた言葉。
 偉そうなこと言って、文句付けちゃった。
 なのに、ケースを持って、追いかけて来てくれた………
「ごめんなさい……僕……」
 
「………純」
 先輩の顔が、不意に近づいた。
 
 ─────!?
 さっきマッピに触れていた唇が、僕に押し当てられていた。
 
「………っせん…ぱい……」
 驚いて、それしか声に出せない。
「……ごめん……間接キスじゃ、我慢できなくて……」
 先輩の顔も、赤かった。
「さっきの……わざと」
「………え」
「お前のフルート。言葉じゃ説明できないのもあったけど」
「…………」
「純と間接キスでもいいから……したかった」
 
 ───先輩……
 
「お前さ…オレが吹くの、いっつも瞬きもしないで、見つめてるだろ?」
「………はい……」
「オレ、ドキドキして、トチらないように必死だった」
 今度は苦笑いをして、舌を出した。
 ───うぅ……
 その顔を見たら、なんだか泣きたくなってしまった。
「僕……先輩に、嫌われてると……思ってました」
「……厳しいもんな、オレ」
 また笑みを零した。
 考えてみたら、こんな風に喋ったこともなかったんだ。
「……ハイ。すごい怖かったです」
 こんなに笑う人だとは、思わなかった。
「僕……先輩が怖かったけど……フルートの音色が…好きで……」
 僕も照れながら、笑った。
「感情の込め方は、先輩のマネばっかしてました」
「………どんなふうに、聴こえた?」
 目を細めて、優しい声で訊かれた。
 僕はますますドキドキしながら、思い出してみる。先輩の音色。
「……どことなく、悲しい……なんか、胸が締め付けられるんです」
 ふふ、と声に出して笑われた。
「わ……笑わないでください! 本当にそう、感じるんですから…! いつも…」
「それはね」
 声が被せられた。
「…………」
 僕は先輩を、じっと見た。
「純を想って、吹いてたから。こんな想い、伝わらないよなって……哀しかった」
「………!!」
「だから、それは…オレの音。純が真似しても、ダメだよ」
 
 …………先輩
 
 さぁっと風が吹いて、先輩と僕の髪が揺れた。
 制服のズボンの裾が、軽くはためく。
 足元の草も、サワサワと音を立てた。
 
 風が収まったとき、時間も止まったような気がした。
 草むらの中で突っ立ったまま、先輩と僕は見つめ合った。
 
 
「オレは、これからも……その音色で演奏しなくちゃ、いけないか…?」
 何も言わない僕に、哀しげな顔をしながら、先輩は首を傾げた。
「………せんぱい……」
 僕は……なんて、返事していいか、判らなかった。
 さっきまで、怖くて、嫌味で……嫌いだと思ってた。
 でも、先輩の指使い、息使い、音色……演奏は大好き。
 
 緊張して、唇を噛み締めて、先輩を見つめ続けた。
 ───なんて言っていいか、わからない。
 ……でも、たぶん……
 
「……………」
 僕は、首を横に振っていた。
「……オレの音色、変えさせてくれる?」
「……………」
 今度は、ゆっくりと縦に振った。
「───純…」
 先輩は嬉しそうに、顔を綻ばせた。
「……抱き締めても、いいか?」
「…………!!」
 急な展開に、ますます僕は声を失う。
 真っ赤になって、先輩を見つめ続けて………小さく、頷いた。
「……じゅん」
 嬉しそうな声と、先輩の腕が僕を包む。
 …………あ……
 押し付けられた、先輩の胸で……
 ──トク、トク、トク…
 心臓の音が、かなり早い。
 …………先輩の鼓動だ……先輩の、リズム…
 今の先輩の気持ち。それが身体のリズムそのもの。
 たぶん、ホントに先輩の音色は、変わると思った。
 
 ……いいな
 自分の音を持つ先輩を、すごい羨ましいと思ってしまった。 
 
「先輩──」
 無意識に、背中に手を回して、フルートごと先輩のブレザーを掴んだ。
「僕も……僕の音色が、欲しい…」
 見上げて、先輩の目を見つめた。
「………うん、どんなのがいい?」
「──どんなの?」
 僕が目を丸くすると、そっとまた口づけをくれた。
「こういう、甘いのか…」
「………うん?」
 見下ろす先輩の瞳が、煌めいた。
「………んッ」
 また、キス。
 でも、今度のはすごかった。
「んんっ……んーーーッ!!」
 舌を入れて来て、めちゃくちゃ吸われた。
 背中を抱きしめられていて、離れられない。
「んっ……ぅんん……っ」
 なま温かい先輩の舌に、僕は大パニックになっていた。
 口の中をあちこちくすぐられて、必死でその舌から逃げた。
「んん……ん…」
 絡み合った唾液が、口に溜まっていく。
 息が熱くなってきた。
 一瞬薄く目を開けた時に見えた、先輩の頬がとても紅くて……
 閉じている目と眉が、怖いくらい真剣で………
 
 僕も慌てて目をぎゅっと瞑った。
 ───先輩……
 すっごい、ドキドキしてしまった。
 いつも優雅にフルートを吹く先輩と、全然違う。
 
「…………はぁ…」
 やっと離してくれた時は、目も潤んで、顔も身体も熱くてしょうがなかった。
「……こういう…エッチな感じ」
 いたずらっぽい目で見つめてきて、先輩は笑った。
 真っ赤になってしまった、僕の頬を撫でる。
「でも……エッチな感じは……オレの前だけがいいな」
 先輩も頬を紅潮させて、ちゅっとほっぺたにキスをくれた。
「ハイ……甘いのがいい…です」
 えっちなのは……凄すぎる…。
 僕はぼーっとしながら、抱きしめてくれる先輩に、体重を預けていた。
「純……もうイッコあるけど……オレもよく知らない」
「……?」
 僕は顔を上げて、また先輩を見つめた。
「……試してみる?」
 僕はこくんと頷いた。
「……あ」
 その場で、草むらに押し倒された。
「せ……せんぱいっ?」
「……たぶん、気持ちいい感じ…だよ」
 そう言うと、僕の制服のズボンを、半分降ろした。
「やっ……」
 僕は怖くて、身体を捩った。立ち上がろうとしたんだ。
「……純」
 先輩の手が、僕のパンツの中に入ってきた。
「や……先輩……やだ」
「…………」
 もう返事もしてくれない。
 僕の……それを握って、上を向かせた。
「あッ……」
 腰が…全身が振るえた。
 先輩が、握った先端を舐めたから。
「先輩……やめて……」
「ジュン………」
 僕をチラリとみると、先輩は手を上下しだした。
「あぁ! ……せんぱ……」
 今度は、口に全部頬張られた。
「……ぅあ……!」
 僕は気持ちよくて、草むらに背中を倒した。
「…ぁ……あ……せんぱい…」
 温かくてぬめったものが、僕の全部を舐め回す。
 ──…ぁあ……きもち……いい…
 恥ずかしいのと、気持ちいいので、しばらく言葉を無くした。
 でも───
 だんだん、気持ちだけ、不安になってきた。
「──せん…ぱい」
 もうやめてほしい。そんなに、いつまでも弄くったら…
 でも先輩は、どんどんスピードを早めるばかり。
 ああ…出ちゃう……出ちゃうよ………
「やだ……やだ……先輩……!」
 何も言ってくれない先輩に、必死に頼んだ。
 クチュクチュいう音が、恥ずかしい。
 先輩の、はぁはぁと言う呼吸も、時々聞こえる。
 
 ───こんな、恥ずかしいこと、ヤダよ……
 
「純……オレの口でイッて」
 我慢してる僕に、そう言って笑ってくれた。
「……先輩……」
 顔を少し起こして、先輩を見た。
 ──先輩……唇、紅い……
 ドキドキして見つめていると、また咥えられた。
「…ん……ん……ぁあ」
 口と、手で交互に交互に、上下されて……
 腰を、背中を、ゾクゾクと何が駆けめぐる。
 足先は無意識に、青草を蹴り散らしていた。
「ぁ……あ……いく………いく……んんぁっ!」
 びくっと、身体が震えた。
「………んっ…」
 先輩の小さな呻きにも、顔が熱くなった。
 ………恥ずかしい
 草むらに仰向けに寝っ転がったまま、僕はハァハァと息をしていた。
 
「───どんな、感じ?」
 先輩が、僕を覗き込んできた。
「……………」
 見上げると、頬と唇が紅い。
 目も潤んでいて、やっぱり普段の先輩とは思えない。
 僕のせいでそうなったのかと思うと、ますますドキドキした。
 その煌めく目に見つめられて、僕の紅い顔も、もっと紅くなった。
「先輩……手を…貸して下さい」
「…………うん?」
 身体を支えている片方の手を、僕に差し出してきた。
 僕はその手を取って、自分の心臓に持って行った。
 さっき、先輩の胸の鼓動を聴いたときのように。
「僕の、今のリズム……こんな感じ……」
 トッ、トッ、トッ、トッ……小動物の心臓のように飛び跳ねてる。
 興奮と…気持ちいいのと、…嬉しいので。
 
「僕、すごく楽しい音が出せそう」
「うん。純の音は、元気いっぱいが似合ってる」
 また笑ってくれた。
 
 ……僕、先輩を好きになりそう。
 その笑顔を見せられると、そう思わずには、いられない。
「……先輩が転校してきて、よかった。フルート教えてくれて、よかった……」
「───うん。…すぐ卒業だけどな」
 ……卒業。
 胸がぎゅっと、痛くなった。
「その前に……先輩と二重奏、やりたい」
 先輩と僕の音が、上下に絡み合いながら、追いかけっこをする。
 それは絶対楽しい。先輩と、もっと楽しい思い出を作りたい。
「うん。もっともっと、呼吸を合わせような」
「……はい。先輩の言うこと、ちゃんと聞くようにする。今まで……ごめんなさい」
 思い出すと申し訳なくて、また謝った。
「……なんでも?」
「……? ……はい…」
 ふふと、先輩は笑ってまた僕を抱きしめた。
「その言葉。守れよ」
「………?」
 そのずっと後、僕は先輩の部屋に連れ込まれ、後悔することになった。
 
 でも、先輩とずっと一緒にいられるなら……それもいいかと思ったんだ。
 
 
 
 
 -終-  


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