chapter4. lost world -落ちた天使-
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「なあ、天野。貧血の方はもう平気なのか?」
 いつもの花壇で、昼休みに霧島君が聞いてきた。
 僕は膝を抱えて、地面にレンガの列で縁取っただけの花壇に、座っていた。霧島君は、膝までの高さがあるコンクリートの花壇に腰掛けている。
 その霧島君を見上げて、僕は首を振った。
 そのことは、僕が一番わからない。
 
「……もう、3回はそんなことあったよな。あの後……」
 克にぃが保健室まで迎えに来てくれた、あの時からだ。
 僕も頷いた。保健室で目が覚めることが、連日続いたりしたんだ。
「すっかり天野の方が、保健室の住人になっちまったな」
 ためいき混じりで僕を見る。霧島君は、最近あまり怪我をしなくなっていた。
「俺がちょっと目を離した隙だよな、いっつも」
 僕はまた頷く。
 下駄箱……トイレの前……そんな場所で、僕は意識を失っているらしい。保健室で目が覚めるたびに、何も覚えていなくて、戸惑っていたんだ。
 ただ、いつも身体が怠くなっていて、本当に病気になってるんじゃないかと、不安にも思っていた。
 
 “昼休みか放課後、声の調子を見たいから、保健室に来てね”
 
 そう、桜庭先生に言われていた。
 ……放課後はもしかしたら、克にぃが来てくれる。そう思って、昼休みに行くことにした。
 
「やあ、来たね。今までとは反対だけど」
 保健室に入ると、桜庭先生が笑った。
「丈太郎がおまけなんて」
「先生、俺が怪我してる方が、ずっといいよ」
 霧島君が口を尖らした。くすりと笑って、僕を手招きする。
「これで喉をうがいして。丁寧にね」
 水の入ったコップを僕に手渡した。
 部屋の窓際の隅っこにある洗面台に行って、僕はうがいをした。少しずつ口に含んでは、何度もガラガラと喉を鳴らす。
「センセ、俺さ、中学行ったらやりたいこと見っけたよ」
「へえ、なに?」
 向こうで霧島君達が話している。僕はその気配だけを感じて、無心にうがいをしていた。
「……天野!?」
 叫ぶ声が聞こえた気がした。コップを落とした事はわかった。立っていられなくて、その場にしゃがみ込んだらしいのも。
 駆けつけてくる、霧島君と先生。その顔はもう、見えなかった。
 
 
 
 
「ん……」
 身体が熱い。とても、気持ちいい。
 
 あ……
 ぴくんと反応してしまう。
 もう僕の中には、指が入ってきてる。
 
 ゆっくりと動かして、僕が困るのを嬉しそうに見るんだ。
 ……克にぃ…僕、起きたから、もうちょっと優しくして。
 
 あ、あ……
 やだ、そんなしたら……僕、すぐに……っ
 
 後ろの指が僕を掻き回す。同時に、克にぃの舌が僕を包む。
 
 あっ、……気持ちいい……あったかい……
 やぁ、そんなにすぐに動かさないで。
 
 いつもみたいに、もっとゆっくりして……
 
「ん……っ」
 はぁ……はぁ……
 
 どこからか、吐息が聞こえてくる。身体が熱い。
 気持ちよすぎて、おかしくなりそう…
 
 はぁっ……はぁっ……
 あれ、これ……僕だ。
 しつこく耳元で聞こえていた、他人事のような荒い呼吸……。
 
 霞む目が少し開いた。
「ぁ……?」
 よく見えない。……克にぃは?
 気持ちよくて起きるとき、必ず顔を覗いてくれる。僕がどんな顔してるか見るのが、楽しいんだって……。
 でも、ちょっと待って……これは……
 
「ぁ……っ!!」
 後ろに入れられた指が、激しく動いた。前を吸い上げている唇も、締め付けてくる。
「…………っ」
 僕は必死に声を出そうとした。
 やめて!! 
 叫びは、まったく音にならない。
 ──やぁ、やだ! やめて!
 ……誰!? 僕をいじくるの、やめて!
 心で叫びながら、自分を追い上げる気持ちよさに戸惑った。後ろの指は、僕の感じるところを触り続ける。刺激が強いたびに、腰が跳ねてしまう。
 突き出した前のをすっぽり根本まで咥えられて、唇で上下される。
「ぁ……、ぁ………っ」
 出ない声で喘ぎながら、僕はむりやり高められていった。
 ……なに、これ? ……なんでこんな……
 やだ…やだ…克にぃ、たすけて───!
 
「……っ、ぁ……っ!」
 口の中に、いかされちゃった…。
 身体中がケイレンしている。なのに、後ろの指を抜いてくれない。
 ……やぁ……!
 何が起こっているのか、僕がどうなっているのか、わからない。出ない悲鳴をあげ続けた。
 後ろを解放してほしくて、手を腰へ伸ばす。身体が重くて、腕を上げるのもやっとだった。
 その手首を誰かに掴まれた。
「!!」
「起きた? 天野君」
「────!?」
 
 桜庭先生───!?
 
 なんで……なんで!?
 霞んでる僕の頭は、わけがわからないままだ。身体だけが、先生の手に、反応していた。
 
 ベッドの上で、先生が僕に跨っている。僕は全裸だった。
 
 僕の腕を掴んだまま反対の手で、僕の中の指を動かし続ける。
「ぁ……っ」
 僕は身体をよじって、悶えた。
 はぁ……はぁ……
 自分の呼吸がうるさい。
 やだ……先生、やめて……
 そう言ってるのに、届かない。
「天野君。……綺麗だ。想像以上だよ」
 掴んだ手を離すと、頬に触れてきた。
「この双眸が、開くといいのに……。そう思ってたんだ」
「………?」
「君が感じ出すと、頬が紅色になって、目の縁までピンクになる」
 先生が指を動かし続けるから、僕のお腹の中はまた変な気分になってきた。
「動かなくても、君なら楽しかった。でも、君だからこそ、もっと見てみたくなっちゃったんだ」
 ……なに……何を言ってるの…せんせい。この指、抜いて……
 僕は仰け反って、息を吐いた。
 ……嫌なのに、気持ちいい……そんなの…やだ……
 頭を振って、そんな気持ちを振り払った。懸命に先生を見る。
「綺麗……。天野君は…どうやってそんな目付きを覚えたのかな……?」
 唇を重ねてきた。
 
 ───あっ!
 
 これだ! 僕が違和感を感じていたキス!
 
 無遠慮に舌を入れられ、あちこち動き回る。僕が逃げても探し出して、強引に絡めて吸い上げられる。
「んんっ……!」
 やだ! こんな苦しいキス、嫌いだ……!
「んっ……」
 舌を吸い上げながら、また後ろの指を動かす。さっきいったばかりなのに、僕の身体はすっかり熱くなっていた。
 ──先生! やめて!
 舌を押し返して、抵抗する。
「はっ……!」
 唇が離れたとき、先生も声を上げた。
「天野君は……そうとうな色好み? ……キスが上手すぎだよ」
 舌なめずりをしながら、怯えて見上げる僕の頬を、優しく撫でた。
「…………」
 声にならない思いを、首を横に振って伝えた。
 
 ──もう、やめて…
 
「天野君…ぼく、我慢してたけど、もうしないんだ」
 顔を近づけてきて、耳元で囁く。長めのさらさら髪が、僕の頬に掛かる。
「君がどんなに綺麗か、教えてあげる。残念ながらその声は聞けなくなったけど。……そのうち聞けるよね」
 ふふ、と笑う。
「そうしたら、ぼくを呼んでね」
 先生の唇が、顎や喉をそっとつつきながら、下に降りていく。尖ってしまっている僕の胸の所でとまると、舌先で舐めだした。
「………っ!」
 やっ! やだ! 
 気持ちよくなんか、なりたくない! 
 いつも克にぃがしてくれるから、僕のそこはとても感じやすいんだ。後ろの指を出し入れしながら、胸を吸い上げる。
 あぁ……っ
 腰からむずむず湧き上がってくる“快感”と教えられた、その感覚。
 やだ……せんせいっ…!
 顔を上げて先生を見る。感覚が辛すぎて、僕は泣いてしまった。
 そのためか、先生は後ろの指をやっと抜いてくれた。思わずふうと、息を吐いた。
 でも桜庭先生は、もっと酷いことを僕にしだした。腰を抱え上げると、さっき指を入れてたところに、舌を入れた。
「ひっ……っ」
 喉が鳴った。
 身体も、激しく波打った。柔らかくて温かいモノが動く。
 あぁっ……やだ……
 足を振って、先生の肩や背中を蹴った。でもそんなの、ちっとも役にたたない。もっと奥まで舌を入れられた。
「───っ!」
 背中を反らせて、感覚に耐える。しつこく舐め回されて、やっと解放されたと思ったら……、
「ここまではね、もう味見済み」
「……?」
「貧血なんて嘘だよ。……薬で眠らせてね、悪戯してたの。君の身体に」
「────!」
「天野君の感度がよくわかった」
 そう言って、先生は自分のズボンの前を開けて……
 
 
「ここからは流石に、初めてなんだ。楽しませてね、天野君」
 
「────!!」
 


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