chapter1. bird fancier ≫lock in -標的捕獲 -
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僕は、やるときは確実にやる。
克晴を襲うときは、周到に計画を練って、用心に用心を重ねた。
取り逃がしたら次はない、と、いつも絶壁の上の覚悟で。
あの日も。
克晴が一人で外を歩くのをずっと待っていた。今日がダメなら明日。そのくらいの気長さで克晴を張っていた。
───来た!
何も気付かずに、細い道を歩いていく。緊張で掌が汗だくになった。
ハンドルが滑らないように、ズボンの脇で両手を拭く。後は勢いだ。塀と車の間に克晴を追い込み、クスリを嗅がせて、抵抗を奪った。
力を失った体を助手席に押し込めて、急いで車を走らせる。
───やった!
胸のドキドキが止まらない。ぐったりとシートに凭れながらも、僕を睨み付けてくる克晴。そうでなくっちゃ。
僕の大好きな、克晴のその目。
「……その目、もっとして」
思わずリクエストだ。
呻く克晴を左に感じながら、ハンドルを捌いた。この助手席の質量感。
こないだ襲った時、育った厚みを、直に手で感じた。骨格、筋肉、力強さ…そのバネ。遠くから眺めてた時より、遥かに、確かに。
あの小さかった子供の克晴じゃあ、ないんだなって、思い知った。
でも、変わらないでいてくれるトコもある。僕はそれが物凄く嬉しかった。
……それでこそ、克晴なんだから。
暫く走っていると、克晴が不安そうに訊いてきた。
「…どこ…いく?」
「ん~。この間の車の中は、きつかったからねえ」
僕は、ホテルに連れ込むと決めていたけど、会話を長引かせたかったから、適当なことを言って笑った。
そしたら克晴ってば、酷いことを言い出した。
「恥ずかしくないの…大のおとなが……こども、つれこんで」
僕は咄嗟に何も言い返せず、克晴をチラリと見た。
「やるなら…さっさとやりゃ、いいだろ。……度スケベの、鬼畜オヤジめ!」
───!!
思わず車を端に寄せて、停めた。
僕は、克晴との歳の差をとても気にしている。だから、オジンとかオッサンとか言われるのは、とてもとても我慢が出来ない。聞くに堪えないんだ。
その言葉を、克晴だけは言っちゃいけないのに!
「……オッサンとか、オヤジとか。僕に向かってそんな呼び方は止めろって言ったよね。ちゃんと、その身体に教えなきゃな…」
本当に、身体の随まで教えてあげなきゃ。
……でも、もう少し我慢。もうすぐで、二人の愛の巣が出来上がる。
そしたらそこで、徹底的に教えてあげるんだ。前みたいに。二人っきりで……
「克晴の言う通りだ。さっさとやっちゃおう」
気を取り直すと、僕は車を河原の方へ向かわせた。
長い手足をぐったりと芝生に投げ出して、横たわった克晴。その生々しい肢体は、僕を興奮させるには充分だった。
思ったよりクスリが効いているみたいで、まるっきり動けないでいる。苦しそうに傾けている横顔がまた、堪らない。
僕は嬉しくてしょうがなかった。以前の克晴みたいに、僕のお人形になるんだ。
「……触るな!」
必死の形相で、僕を睨み付けてくる。
可愛い克晴。その目が…本当に好き。
「だめだめ。逃げられないよ」
唇を奪う。興奮している僕は、限度が判らない。舌を絡めたら、思いっきり吸い上げてしまい、最後は突き飛ばされちゃった。
怒りと困惑の顔で、僕を睨み付ける。精一杯の虚勢のように見えて、子供の頃を思い出す。
「克晴……かわいい」
自分の唇を舐めながら、可愛い克晴にもう一度跨った。キスの後は、上唇をつい舐めてしまう。克晴の名残を味わうんだ。
前回の車の中とは違い、ここでは克晴の身体がよく見える。
シャツのボタンを外し、アンダーシャツをたくし上げながら、露わになる肌の色を楽しんだ。
ほどよく焼けていて、真っ白でも褐色でもない。そこに付いている胸の中心部は、更にちょっと濃い肌色だった。
───綺麗だなあ。
堪らず、しゃぶり付いてしまった。
「あっ……!」
克晴がいい声を上げた。更に舐めまわすと、身体を震わせた。
──懐かしいな。
克晴は最後まで、胸はくすぐったがった。もっと開拓したかったのに、時間がなかった。
誰かに克晴を奪われたら……
誰かが、僕がまだ手を付けていない所を開拓してしまったら……それどころか、全てを塗り替えられているかもしれない。違う声で啼かされ、違う喘ぎを強いられて……
それを想像すると、居ても立ってもいられなかった。
でも、アメリカで日本の誰にどれだけ嫉妬しようと、僕に為す術はない。何も情報が入ってこないのが、返って幸いだったくらいだ。
「やぁ…、やめろ…」
僕の粘っこい舌使いに、克晴が喘ぐ。その声は、直接、僕の股間に刺激を与えた。
愛撫を身体の下の方へ移していく。
「んっ」
腰が跳ねる。
……はは、克晴、いい反応。
下腹部へ辿り着くと、半勃ちになっている克晴の熱いモノを口に頬張った。
本当に大きくなった…僕の口に入りきらない。一瞬湧く、悲しい気持ち。でもこの淫猥な熱と臭いに眩暈もする。……克晴……舌に包んで、丹念に味わった。
「ぅあぁ…」
仰け反って、掠れた声を出した。僕の腰にビンビン響く。
「もっと…。もっと、イイ声聴かせて」
「あぁ……はあ……」
首を横に振りながらも、喘ぎが漏れている。
堪らない、克晴。色っぽすぎるよ。
目はぎゅっと瞑り、吊り上がった眉根を寄せて、悩ましい。怒った表情なのに、頬は赤く、食いしばった口が今にも泣きそうに見えたりする。
手と口で交互に克晴のペニスを扱いた。
「や……やめ…!」
イキそうな気配で、克晴も焦って抗った。僕は唇を離して、その顔を眺めた。
「………っ」
肩で荒く息をしながら、僕をじろりと見下ろしてきた。
「何が、持続力はない…だよ!」
悔しそうに言ってくる。いつまでも抗えない身体に、戸惑っているようだった。
僕だって、驚いている。
このクスリは、そんなに効くもんじゃないんだ。……人によって、随分効き方が違うらしい。
「克晴には、合っているのかなあ」
なんて、当の本人にはいい迷惑かもね。楽しくなりながら、後ろを覗いてみた。きゅっと締まった蕾が見える。
僕の熱いモノが震えた。早くここに入れたい…。
指を添えて、押しつけるように揉んでみた。こんなコトしたって、克晴はまだ抗えないんだ。
「はぁっ…や…やめろ……!」
懸命に腰を捩ってくる。その腰を押さえ付けると、指を蕾の中に押し込んだ。
「あっ」
克晴の思わぬよがり声。
めちゃくちゃエロいよ。
「イイ声。…克晴」
僕、声でイッちゃいそう……。
その唇は塞いでしまった。まだイキたくないもん。
挿れた指を、ピストンする。奥に入れるときは、付け根を腰に打ち当てるように激しく。
「あぁっ、あっ…!」
キスの合間に喘ぎが漏れる。ダメだよ、そんなに僕を興奮させないで。
衝動が、愛撫を激しくさせる。指を増やして、もっと虐めた。
「あっ…あぁ! ……やぁ……んんーっ」
抑えても出てしまう喘ぎに、克晴自身、困っているみたいだ。必死に声を殺す。指も3本咥え込んで、蕾もだいぶほぐれていた。
「そろそろいいよね…」
僕の身体も、我慢の限界……。膝立ちになって、ズボンのジッパーを下げた。テントの中は、先走りでビショビショだ。
「あっ、やめ……っっ!」
嫌がる克晴の足を抱え上げて、熱くなった自分をあてがうと、奥まで一気に押し込んだ。
「ぅ…はぁっ…!」
克晴が仰け反る。
様子を見ながらなんて、できなかった。僕はもう、暴走する。
熱い克晴の中……僕を凄い締め付ける。気持ちよすぎる───
「克晴……克晴……」
その名を呼んで、気を散らす。すぐにイッてしまいそうで。
……克晴も、同じだけ感じてるかな。
堪らずに呼んでしまうその衝動。──それがあるなら、僕を呼んで欲しい。その声で、僕はますます絶頂へ登り詰める。
「んんっ、……はぁ…はぁ…」
喘ぐだけのその声に、呼びかける。
「克晴……かつはる………呼んで。…その声で」
でもこの強情っ張りは、首を横に振る。
どうしてくれよう……なんて、思ったとき、遠くで人の気配がした。
流石に僕もこれはヤバイと思って、咄嗟に克晴の口を掌で塞いだ。通行人が行き過ぎるのを待とうと。
事の事態を把握した克晴が、視線を頭上の植え込みの方へ飛ばした。真っ青になって。
僕は、何となくムッとした。
だって、意識が僕から離れたから。身体は繋がってるのに!
僕は何も考えずに、腰を動かし始めていた。驚いた克晴が、口を押さえられたまま僕を凝視してきた。
僕は嬉しくなって、囁いた。
「そうそう。ちゃんと僕を見て。よそ見するなんて、駄目だよ」
興奮してしまい、もっと刺激を与えたくなった。
克晴のペニスに手を伸ばす。ビクンと震える腰、締まる内壁。
うわ、僕イキそう…。
もうピストンが本格的に、止まらない。流石に打ち付ける訳にはいかないから、その分スピードを速めた。
通行人の声が、左から右に通り過ぎていく。この緊張感が堪らない。僕は克晴の首元に顔を埋めて、荒い呼吸を殺した。
蕾の締め付けが一段ときつくなる。
克晴も興奮しているんだ。
もうだめ、僕イク……! 腰を激しく動かして、熱い滾りを克晴の中に思いっきり放出した。
「んっっ、ぁ……はぁ!」
克晴も、堪らず喘ぎ声を漏らした。僕の手に白濁を吐き出して。
……ああ、なんだこれ。めちゃくちゃ気持ちいいな……。
まだ克晴の中で、ドクンドクンと脈打っている。余韻が堪らなくイイ。
ダメだ僕、興奮が収まんない。
「早く抜けよ!」
いつまでもそのままの僕に、克晴がそう怒鳴ってきた。
でも、また勃っちゃってるんだ僕。温かい克晴の中。気が付かないのかな、痙攣しては時々搾って、僕を刺激してる。
「やだ。このままもう一回、イケる」
余韻を楽しむのは終わりにして、またピストンを開始した。
「な……っ!」
直ぐさま後ろがきゅっと締まった。
うはぁ……イイよ克晴…。
蕾を擦るように、打ち付ける。二人して同じ気持ちだと思ったのに。
「うそ……だろ? オッサン…んんっ!」
またその言葉を言ってきたから、急いで唇を塞いだ。濃厚なキスを与える。
余計なことを喋らなくていい。僕を感じていればいいんだ。
舌で舌を愛撫しながら、お仕置きのように腰を激しく打ち付けた。さっきは無かった、違う快感が沸き上がる。
「やめ……、もう、やだ…っ」
まだそんなこと言って、抗う。
なんでこんな、強情なんだろう。身体は正直で、こんなにも喜んでいるのに。
後ろの締まりが凄いんだ。これでもかって、ぎゅうぎゅう搾ってくる。
僕はちょっと苛ついて、克晴の顎を掴んでその眼を見据えた。
「名前で呼んで。克晴。…雅義って」
なんで呼んでくれないんだ。お互い呼び合って抱きしめ合えば、もっと気持ちいいのに。
……それに克晴には、心底名前で呼んで欲しかった。
「ま・さ・よ・しって、言って!」
顎をがくがく揺さぶってしまった。
それなのに……克晴は凄い鋭い目で僕を睨み付けてきて、ただ一言、叫んだ。
「嫌だ!」
また、僕の中で何かが壊れた。
もう言葉も出ない。可愛さ余って……それでも可愛いんだ、克晴が!
僕は欲望に突き動かされて、激しく腰をピストンさせた。
しなやかな身体が跳ね上がって、全身を振るわせる。
「あぁ…、やぁ…っ」
啼き声を上げ始めた。
許さない! 許さない!
僕の中で、何かが叫ぶ。
何で僕の言うことを聞いてくれない? 何でそんなことを抗う?
……振り向かない心。
身体を自由にされても、心は与えない!
そう全身で叫んでいるようだよ……克晴……
悲しくて、ことさら乱暴に腰を打ち付けてしまった。
抱きしめている身体が、どんどん熱くなる。後ろが痛いほど締められた。
「あ…克晴……気持ちいい…」
思わず囁く。今までにないほどの締め付け、この状況に緊張しているのがわかる。
可愛い克晴……
やっぱりそう思ってしまう。再度、克晴のペニスを掌中にして、快感を与える。せめて、一緒にイこう。愛液で滑りがいいそれを、大きく扱いた。
「ああっ…はあぁぁっ!」
顎を仰け反らせて、首を振りながらも、ドクンと掌に吐精した。僕も、もう一度熱い滾りを克晴の中に打ち付けた。
「───ぅ…」
克晴がうめき声を上げる。辛そうに額に汗を掻いて。
そんな顔を、僕がさせたのかと思うと、嬉しかった。
「……克晴の中に、僕がいっぱいだ。このまま、蓋しときたいなあ」
どれだけ注いでも飽き足らない、僕に振り向いてくれるまでは。
もっと僕を感じて、僕を喜んで受け容れて……。
ずっと挿入したまま抱きしめていたかったけど、力が回復してきた克晴に突き飛ばされてしまった。
……やっぱり、クスリがないと克晴を自由にできないや。
育ってしまった克晴を、突き放すように見上げた。
「とうとう、汚しちゃった。でも、上手いこと言い訳できるよね。もう、大きいから」
僕の拗ねた心が、ついそんなことを言わせた。
「────!!」
蒼白になった克晴が、僕を睨み付けてきた。
「確信犯かよ! 最後はこの秘密を、俺の責任で、隠させるなんて!」
────!
あっ! て、思った。
何故か胸が痛くなった、その言葉。
そして、泣き出しそうな克晴の顔。
でもそれをじっくり考える余裕もなく、僕は克晴に思いっきり殴り飛ばされていた。
鈍い音が耳の中でして、自分の叫び声も聞こえない程だった。
結局僕は、奥歯が2本折れてしまい、その後の活動に支障をきたしてしまった。
野球の試合に出れなくなっちゃったのが、一番悔しい。先輩の信頼を得て、克晴を更に追い込もうとしているのに。先輩の役に立てないんじゃ、本末転倒だ。
その苛立ちを、克晴本人にぶつけちゃった。
ていうか、それを理由に最後の青姦を楽しんだんだ。
大学のトイレなんて、興奮する。
克晴にも言ったけど、本当にこれが最後、外でのセックスは。だって、もう計画は90%出来上がった。後は、時を待つだけだ。
そして、来たんだ。待ちに待った時が。
───もう、捕まえた……僕の小鳥。
心は自由に飛んでいけるなんて、いつまでも思わせてはおかないよ。
鳥かごの中で、僕がじっくり教えてあげる……。