chapter11. keep a secret -絶対命令-
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「……おいで」
 
 
 
 少し離れたところから、それだけ言った。
 いつもの昼休みの花壇。
 しばらく天野君を、呼んでいなかった。
 
「今…ですか?」
 小さく身体を震わすと、取り戻したそのか細い声を発した。
 
「そう………いま」
 
 天野君は、ちらりと丈太郎を見た。丈太郎も変な顔をして、天野君とぼくを交互に見ている。
「なんだよ? 天野、どっか悪いのか?」
「……ううん……うん、ちょっと朝起きるのが辛くて…先生に相談してたの」
「…相談?」
「うん……」
 言いながら、泣きそうな顔でぼくを見た。
 
 ぼくは「いい子だね」と、にっこり微笑む。
 
 
 
 
 
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 天野君を初めて手に入れた時、ぼくは本当に感動した。
 どうしても、動いている天野君を見たい。どんなふうに声を出すのか、どんな表情をするのか……。ずっとそう思っていた。
 
 克にいが帰ってこないと聞いて、ぼくはすぐ、何かあったと気付いた。
 ───彼の周りでも、何か起こっている。だからあんなに、目つきが鋭くなっていったんだ。
 
 ぼくは、動くなら今かな………と、計算した。
 厄介な克にいがいなければ、ジャマはない。もし丈太郎に助けを求めても、彼ならなんとでもできる算段はあった。
 シナリオを整えて、実行に移した。
 
 飲まなければ、すぐに効き目は切れる。薬を水に混ぜて、うがいをさせた。
 驚く丈太郎を制して、正体のなくなった彼を、ベッドに運んで……ぼくは思い出して笑ってしまった。
 くすくすと、止まらない。
 だって……
 丈太郎を保健室から追い出すときに、天野君のナイトである丈太郎が、ぼくに言ったんだ。
 
 
『天野を……よろしくお願いします』
 
 
 
 ふふ───素敵な、騎士殿。
 頼まれたよ………ぼくに任せて。
 
 
 
 ぼくは、いつもの悪戯をし始めた。
 天野君のシャツのボタンをはずし、服を脱がせる。ズボンのファスナーを下ろして、足を抜き取る。下着も剥ぐ。
 そうして、横たわった一糸纏わぬ姿を見つめて、堪能する。
 
 ───本当に、綺麗だ……
 
 予想以上に伸びた手足が、顔の可愛らしさと比べてアンバランスで……少年と子供の両面を、合わせ持っている。
 ……成長期に差し掛かってるけど。この身体には、天使の象徴である中性さが、まだ残っていた。
 
 真っ白な肌。滑らかな胸に、ピンクに色付く小さな花弁。骨格が出てない、円やかな腰。
 ……そして、そこから伸びる、しなやかな手脚。
 この生々しい感じが、彼を妖しく艶めかせる。
 
 ……克晴くらいの歳で、この色艶はホンモノになるんだけどね…。
 身体ができあがった少年が、青年になるとき──克晴の肢体は今、さぞかし美しいだろうな。
 
 ぼくはしばらく克晴の裸を妄想をして、目の前のかわいい子に意識を戻した。
 今はもう……こっちのほうが、いいな。
 思わずまた、笑ってしまった。
 
 頬を手のひらで包むと、柔らかい感触。
 無防備に薄く開いた唇……閉じた目……長い睫毛。枕に広がる柔らかな髪。
 
 ……ぼくの天野君。
 
 唇で体温を感じた。手のひらで肌を楽しむ。しっとりと吸い付いてくる。背中に腕を差し込んで掬い上げ、抱きしめてみる。
 
 ──もう、ぼくの天使だ。
 
 垂れ下がった腕も、ぐったりと仰け反った顎も、やがて力を取り戻し……動き出す。ドキドキしながら、そっと横たえなおすと、唇を下へと落としていった。
 脚を開かせ、中心にも丹念にキスをする。後ろの小さなピンクの部分にも舌先を這わす。
 かわいい蕾を刺激して、中に入っていく。
 
 ぴくんと、身体が動いた。
 舌先を指に変え、差し込んでいく。膝が震え出す。蕾が時々指を締めてくる。これが、かわいい。
 
 額に汗を光らせて、顔を何度か左右に振った。
 ぼくはゆっくり、身体を高めていってあげた。出入りする指は、さらに深く。前のかわいいモノを口内に含んで。
 温かくて柔らかいそれは、ぼくの口の中で嬲られて、少しずつ芯を持ち出す。唇をすぼめて、上下に扱いた。
 はぁ……はぁ………
 開いた唇から、熱い吐息が漏れ始める。
 
 ──あ……克にぃ……ゆっくりして……もっと……
 
 前回までは、散々その言葉を聞かされた。何度でも言うんだから……この子は。
 でも、今は……ぼくは、目覚め出す小さな身体に、もっと愛撫を与えた。
 
 
 声が出せない。呼んでも来ない。
 ……君を助ける者は、誰もいない。
 
 
 
 
 
 ───もう君は、ぼくの手の中に堕ちた天使だ。
 
 
 
 まだ正体のない、開かない瞼。
 悩ましげに眉だけ寄せる、その無防備な顔をとても愛おしく思った。
 どんどん熱くなっていく、天野君の身体。口の中のものは、しっかりと勃起していた。腰を捩って逃げを打つ。無意識に嫌がっているのがわかる。
 ───逃がさない。
 一回、イかせてあげようか。後ろに入れた二本の指をちょっと曲げて、内側から前を刺激した。
 ビクンと、腰が跳ねる。
「───っ」
 微かな喘ぎ。声が出たなら、また克にいに文句を言っていることだろう。
 舌先で、小さなくびれをなぞりながら唇は上下させた。
 はぁはぁと、喘ぐ呼吸が激しくなる。腰の痙攣が頻繁になってきた。背中を仰け反らせては悶え震え、腰を前に突き出しては、ぼくに捧げた。
「……っ………っ、……っ!!」
 唇を離して手に持ちかえて……ぼくは見惚れた。
 口を小さく開けて、熱い吐息を吐く。そこからは、赤い舌が覗いていた。
 頬も、唇も、紅い。
うなされたように、その唇は何かを叫ぶ。
 
 ………天野君。
 
 口に含みなおすと、一際激しく扱き上げて、頂点まで導いた。
「────っ!」
 引きつれた音を喉から出して、天野君はぼくの口内に吐精した。全身を痙攣させて、弛緩する。
 ぼくはそれを飲み干しながら、後ろの指は抜かなかった。口を離しても、後ろの刺激は与え続けた。
 いつもなら、そこで止めていた。それ以上なんて、当然危険だったから。
 でも、今日は……。
 根本まで埋め込んだ指を、殆ど全部抜いてしまう。そしてまた深々と奧を探る。丁寧に出し入れをして、蕾の収縮を楽しんだ。
 押し込むたびに、ぷるぷるとお尻と内腿が震えて、目でも楽しませてくれる。
 
「…………」
 ちらりと、天野君の顔に目をやると、真っ赤になった頬で、額に汗を掻いている。瞼がしきりに痙攣していた。
 ぼくは後ろの指を挿れたまま、天野君の頭の方へ移動した。
 
 何度も何度も、細かい瞬きを繰り返して、目がうっすら開く。
 その瞳が……動く。
 唇が震える。
 彼の意識が───戻る。
 
 
「っ…………!!」
 
 
 微かな叫びを発して、天野君が身体を捩った。ぼくの指を嫌がり、手を伸ばしてくる。
 
 
 その手を、ぼくは掴んだ。
 
 
 
 
「……起きた? 天野君」 
 
 
 
 
 びくん、と震えた手。
 紅く染まった頬。
 悩ましく寄せられた眉の下で、閉ざされていた双眸が見開かれて…
 
 ………ぼくを見つめた。
 
 
 
 
 ────天野君………綺麗だ……
 
 
 
 背筋を何かが、ぞくぞくと走った。予想を遙かに超えた、妖艶さだった。
 
 
 
「天野君。……綺麗だ。想像以上だよ」
 
 呟かずには、いられなかった。掴んだ手を、離すのも忘れた。
 


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