chapter2. chirpiness bird -カナリヤ -
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 俺はやっと、人並みに食事が取れるまでに回復していた。
 でもあの鬼畜野郎は、俺の回復をちっとも待たなかった。
 
「──えっ!?」
 布団を剥いでのし掛かって来たときには、今更ながらびっくりした。「もういいよね」なんて言いやがって。
 
 俺の状態は、まだまだそれどころじゃなかった。
 やっとベッドの上で、起き上がっていられるようになった程度なのに。
 オッサンは躊躇うことなく、俺の両腕のプレートをくっつけ合わせ、ヘッドパイプに繋いだ。
「ちょ…雅義! ……まだムリ…」
 俺の悲鳴なんて、聞きやしない。
「あッ」
 パジャマをめくり上げると、胸を舐めてきた。
「くっ………」
 手首の拘束が、忌ま忌ましい。頭上でガチャガチャいわせながら、身体を捩った。
 くそ…まだ腹筋にも、力が入らない。
「あ…やっ…」
 両胸の突起を、指と舌で愛撫してくる。腰元から、ざわつくような感覚が沸き上がる。
「気持ちいいって…」
 オッサンが笑いながら俺を見上げる。
「認めなよ。克晴」
「…………!」
 誰が──! 
 俺は顔を横に背けて、感覚を散らした。
「………んッ」
 それでも、愛撫の唇が下に這っていくと、身体が勝手に震え出す。
 腹筋の筋を舐め下ろして、下腹部に辿り着くと、その下に芯を持ち出す俺がいる。
「はは。恥ずかしいね、克晴。カッコつけたって、ここがこんなじゃ」
 そう言って、オッサンはそれを咥えた。
「───っ!」
 熱い咥内に包まれた俺は、否応なしに反応させられた。
「ん……ぁっ!」
 舌面でぬらぬらとナメクジのように、俺を舐め回す。くびれと割れ目を執拗に扱かれて、熱く脈打ちだした俺のモノは、透明な液体を垂らし始めた。
「克晴……美味しい」
 ────!!
 また、言葉で辱める。
「──やめろ……言うなッ!」
「…なんで認めないの。本当に嫌なら、こんなふうに勃たないでしょ」
 オッサンは、薄く嗤いながら、俺のすっかり勃ってしまった先端を、指で弾いた。
「……くっ」
「その内イヤでも認めるんだから、早いほうが楽なのに」
 そのまま亀頭を、弄くり続ける。
 それに焦れてしまうのを隠して、俺はまた睨み付けた。
「──うるさい…」
「……やっと喋っても、その程度だしさ」
 つまらなそうに言う。
 
 
 俺は相変わらず、会話なんかしなかった。
 達したくなったら「いかせて」と言わされ、いく時は名前を呼ばされる。それだけだ。
 あとは、もっと食べれるようになって、基本体力を復活させたかった。
 ………それなのに。
 
 
「克晴……指、挿れるよ」
「…ふっ……」
 気持ち悪い、挿入感。異物を入れられるのは、何度やられても嫌悪する。
「ん、締まった。はは、感じてる」
「────」
 無言で睨み付けた。もう、言うなと言ってもしょうがない。
「克晴のイイところはね…」
 懲りない顔でそう言いながら、中指をぐいと根本まで押し込んできた。
「────っ!」
 俺の腰が跳ねた。
「まだだよ。イイとこは、まだ触ってないのに」
 オッサンが嗤う。
「ホントにお尻が好きなんだから。克晴」
「…………!!」
 俺は悔しくて、顔が熱くなるのが分かった。
 どうにかこんなのを終わりにしたくて、がむしゃらに腕を揺すって金属音を立てた。
「──ク……クソッ…!」
「そんなことしたって、外さないよ、それ。」
 また嗤う。
「それより克晴……よく感じてみて。僕の中指が丁度いいんだよね」
 奧まで挿れ込んだ中指の先を、掌を上にして、くいっと折り曲げた。
 ─────!!
 
「あぁッ……!」
 
 今度こそ身体が跳ねた。
 下っ腹の内側の一点にビリッと電流が走って、前を熱く疼かせた。
「やっ…!」
 腰を捩って、指から逃げる。
「ほら、いいでしょ」
 嬉しそうに笑いながらも、逃がさずにそこを突いてくる。
「あぁ……やっ……やめろ……!」
 触るたびに跳ね上がる、俺の腰。下っ腹が、どんどん熱くなる。
 俺の大嫌いな感覚が、湧き上がってくる。
 こいつに…この悪魔に教え込まれた、「疼き」ってやつが……。
「いやだ!」
 足を蹴り上げようとした。
「───!!」
 足首に嵌められたプレートが重い。とても今の俺には、足を持ち上げることは出来なかった。
 
 ───悔しい……
 この悪魔の言いなりになると、決めたけど……やっぱりイヤだ……!
 
「……また泣いてる。……どうして泣くの? 克晴」
 困惑したような、罪の無い顔で俺を覗き込む。その顔に、また腹が立つ。
 
 ──お前が嫌だからに、決まってんだろ!!
 
 オッサンの目を見据えて、目線でそう言ってやった。
 言葉にしたら、逆上して何をされるかわからない。
 オッサンは一瞬、息を呑んだ。そして、何もなかったように喋り出した。
「克晴の意識が無いときにさ、指を一本一本入れて…探したんだ」
 目線を俺の腹に落として、空いてる方の手でヘソの下辺りを撫でる。
「中指をうんと奧に入れた先に……」
 言いながら、指を動かす。
「! …んん……っ」
「あったんだ。意識がないのに、腰が跳ねてさ」
 ぐりぐりとその一点だけを、責め続ける。
「ぁあっ、………あぁぁ……」
 背中を何かが、ぞくぞくと這い上がる。手のひら、足先まで指を曲げて、力んだ。
 体中が熱くなって、汗を掻き始める。
 疼きに耐えて声を抑えると、全身が震えた。
 そんな俺を、オッサンは満足そうに見下ろす。
「意識が無くてもね、イク時は声をあげてたよ。…ヤラシイ声」
 笑いながら、確実にポイントを擦り上げる。
「………くぅっ」
 俺は、脚が勝手に開いてしまうのが嫌で、無理矢理、膝を閉じた。
 指が動く度に、びくんびくんと腰が跳ねてしまう。歯を食いしばることでしか、抵抗できない。何も言い返せなかった。
 
 ───悔しい! 悔しい! 嫌だ……このままじゃ、イヤだ!!
 
 俺は身体を落ち着かせようと、仰け反って息を吸った。
 
「克晴…可愛い。見て見て。触っていないのに、ペニスが愛液でトロトロだよ」
 オッサンが、嬉しそうな声をあげる。
 
 ────っ!!
 
「……やめろッ!」
 無視も耐えかねた。荒い息で叫ぶ。
「それ以上、言うな!」
「やだよ」
「……んんっ」
 ことさら強く責められた。
「ぁっ……あぁぁっ」
 我慢出来ない。仰け反って膝をすり合わせた。
 弄られ続けて、どんどん感覚が鋭くなっている。内側から与えられる刺激は、俺の屹立を容赦なく高ぶらせた。
 オッサンがまた、嗤う。
「どれだけこの身体が悦んでいるのか、言葉で教えてあげる」
「………っ!」
「ちゃんと聞いてね」
「…………」
「あ、締まった。今、きゅって。僕の言葉で感じた?」
 
「──────」
 
 俺はピクリとも動くのをやめて、奥歯を噛み締めた。呼吸も殺す。
 ただ真っ直ぐ、オッサンを睨み付ける。
 束ね上げられている両腕も、重力に任せて鎖に垂れ下がった。金属音が収まり、部屋の中がシンと、静まりかえった。
 
 その中で、オッサンの指だけが動いている。俺の中を出入りする。
 クチュクチュと恥ずかしい水音が、耳に付き始めた。
「はは、イヤらしい音。コレは克晴の愛液の音だよ。…濡れ濡れだね」
「─────っ」
 俺は横を向いて、耳を閉ざした。
 
 ……なんで…こんなに、俺を辱めることばかり、言うんだ。
 
 無視しても抗っても、容赦なく指を動かして、身体を高められる。
「くっ……ぅあ……」
 その反応を、あざ笑う。
「そんなに、よがって。……克晴の紅い顔、めちゃくちゃエロいよ」
 
 
 ───悔しい。反応する自分が…拘束を解けないこの手首が。
 ……俺をいいようにする、こいつが───憎い。
 
 
 腹の底から燃えるような憎しみを、視線に込めて。目の前の悪魔にぶつけた。
 
 何故ここまでするのか、何故、俺なのか……
 この悪魔には、俺の悲しみなんか分からない。
 嗤いながら、いつまでも俺を喘がせる。
「んあぁ……」
「すごいよ、克晴。すごい締め付けだよ」
「……ふ………」
 
 ───歪められてしまった、俺の人生。むりやり性の対象にされて。
 さんざん玩具にされて、いきなりほっぽり出された……。
 そしてまた、むりやり恵と引き剥がされた。
 
 何がしたいんだ? なんで、俺なんだ!
 ───何がどうして
 ………俺はこんなにも、自分の足で道を選べないんだ?
 
 “俺に構うな!”と、また叫びたかった。悪態ならいくらでも、口から出る。
 この悪魔が卒倒して死んでしまうくらい、強烈な罵倒を浴びせてやりたかった。
 
 ……でも……今は……
「んッ、……ぁぁああ!」
 口を開けば、喘いでしまう。言葉なんか、発せられなかった。
 腰はいちいち跳ね上がり、前は情けないほど露を垂らして、腹に付くほど反り返ってしまっている。
「あぁ……や、……やめ……んああぁ!」
 中の指がポイントを擦るたび、下っ腹が搾られるように内蔵が収縮した。ビンビンと神経を直接弾くような快感が、俺を襲う。
「まさ…よし……もう…ぁあっ!」
 


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