3.
 
 背中を這い上がる痺れが、身体を反らせる。
 小刻みに出し入れしながら、入れる時だけちょっと強めにして、だんだん中に入ってくる。
 さっきの唾液のおかげで、その動きがとても滑らかでよけい生々しい。
「ぁ…ぁ……」
 光輝さんの片腕にしがみつく様にして、声を殺す。
 その腕を振り解くと、反対に僕の顎を捉えて、上に向かせた。
「我慢するなって。良いならそう言えって、言ったろ?」
 言いながら、ずぷりと、中指全部を僕の中に押し込む。
「んはぁ……っ」
 上を向かされている僕は、遮れずに高い声を出す。うらはらに、中で蠢く中指に酷く嫌悪した。
 ……気持ち悪い。
 異物感と排泄感を同時に押し付けられているようで、感覚をもてあます。
 それとは別物のぞくぞく感が背中を這い上がる。その感覚に煽られて、つい声が漏れる。
 
「だんだん良くなるよ」
 耳元で背後から光輝さんが囁いた。よく響くバリトンが、首筋をくすぐった。
「ん、また閉まった」
 光輝さんが嬉そうにまた言う。
「やっぱり、俺に反応してるじゃん」
 自覚のない僕はやはり首を横に振る。話しかけられたって、答えられない。
「指、増やすよ。力を抜いて…」
 顎を仰け反らせて、僕は身体を振るわせた。更なる圧迫感。
 出入りするたびに、入り口が擦れて背中を痺れさせる。
「……んぁ…」
 涙が滲む。僕の前のモノは情けないほどビンビンに反り返っている。
 恥ずかしい露が止めどなく垂れて、後ろを濡らす。
「3本に増やすよ。ゆっくり入れるから、切れそうなほど痛かったら、言えよ」
 また後ろから優しく囁くと、一旦全部引き抜いて、僕の露で指を満遍なく濡らす。
 僕の下の涎はそれでも有り余るほど垂れている。
 
「力、抜いて……」
 3本をそこにあてがうのが判った。ゆっくり押し入ってくる。
「………はぁ……」
 ゆるい出し入れを繰り返しながら、僕を押し開く。
 擦れるたびに、僕の背中は震え、進入の圧迫感は更に強い。
「あぁ……」
 息を漏らしながら、光輝さんの腕にしがみ付く。
「名前…名前を呼んで。…俺の名を…」
 甘い声が囁かれた。
 僕は頭の中で、何かが弾けた。
「ぁ…こうき……さん……」
 吐息とともに、吐き出された声。それは自分でも驚くほど、甘い声だった。
 その瞬間から、僕の中の異物感、違和感が、全て背中を這うぞくぞく感に持っていかれた。
”快感”。
 認めたくなかったそれを、僕は受け入れた。圧迫感でさえ、悦びに変わる。
「…こうきさん……光輝さんっ」
 もはや激しく出入りする指の動きに、身体ごと揺さぶられるようにして、全てを受け入れた。
 入るたび、出るたび、内壁の刺激と出入り口の擦れがたまらなく身体を痺れさせる。
 時々中でばらばらに動かされると、突き上げる刺激で何が何だかわからなくなる。
「あぁ、…光輝さん……」
 喘ぎがもう止まらない。涙で霞んだ目で光輝さんの目を探す。
「ぁぁ…僕……おかしくなっちゃうよ……」
「…気持ちいいか?」
 僕のうなじに顔を埋めるようにして、囁いてくる。その声も上ずっている気がした。
 僕は、一生懸命首を縦に振った。
 こくこくと頷く僕に、背後から優しくほお擦りをしてくる。
 
「…あっ!」
 その時、僕の身体は更に跳ね上がった。違う疼きが走ったのだ。
 蠢いていた指が、挿入を繰り返しながら、ある一点を触った。
「やぁ!?」
 刺激が強すぎる。ダイレクトに前を刺激する。
「巽のいいとこ、見っけ」
 嬉しそうに、首筋にキスしてきた。
 そこ一点に集中して挿入を繰り返す。僕の頭はおかしくなりそうだった。気持ち良過ぎて。
「あぁ、光輝さん…、光輝さん…」
 快感をただただ貪る。身体が勝手に、逃げを打つ。危険すぎて。
「ぼく…いっちゃいそう……」
 前がぎちぎちに反応している。
 最早触ってもいないのに、もっと直接な快感を脳に感じる。
 
 
「だ・め・え―――――っ!!!」
 
 奇声が部屋中に響いた。
 僕はその奇声より、いきなり光輝さんの動きが止まったことに戸惑った。
 頭は朦朧として、耳元の甘い声以外は、届きにくくなっていた。
 高まっていた快感がぷつりと途切れて、荒い呼吸と期待感だけが、取り残された。
「……っはぁ…」
 指はまだ中に入ったままだ。僕は焦れて、思わず力を入れた。
「ん…?」
 肉壁の圧迫を受けた指が、反応してちょっと動く。
「ぁ…」
 それすらも貪る。
 僕は、滾ってしまった自分の欲望を、吐き出したくて焦れていた。
「…こうき……さん」
 無意識に懇願する。行き場のなくなってしまった下半身の高まりが、快感を求めて疼く。
 光輝さんは、ため息を一つついて、ゆっくりと僕から指を抜いた。
「……ぁ?」
 そんな擦れさえ、ぞくりと背中を這う。
 開かされていた其処は、指を離すまいとするように、最後まできゅっと締め付けて、きつく閉じた。
 僕は目もぎゅっと瞑った。
 ふと、置き去りにでもされた様な、切なさがよぎりそうになったからだ。
「……たつみ」
 ゆっくり僕を呼ぶ声。
 僕の身体を反転させて、自分に向かせる。
 光輝さんは、正面から覗き込んで、もう一度僕を呼んだ。
「巽……、ごめんな、中途半端で」
 僕は掠れた視界でコクンと頷く。
「……お前、かわいいなあ。気持ち良くなってくれて、嬉しいよ」
 本当に嬉しそうに、言ってくれる。
 僕は多分、ちょっと微笑み返した。
 光輝さんはぎゅっと僕を抱きしめると、身体を振るわせた。
「まってな。今、もっと、もっと、気持ちよくさせてやるから」
 
 ソファーに僕を横たえさせると、光輝さんはそこから降りて、社長へ向き直った。
「はい、解し終わりました」
 にっこり笑う光輝さんに、女社長は苦々しく一言。
「はい、じゃないでしょ! このばか者!!」
 べちっと頭をはたく。
「未遂だったから、よかったものの…。あと5秒でイっちゃってたわよ!?」
 怒り収まらぬという感じで、べちべちと叩く。
「うわっ、ごめんて、社長!」
 たまりかねて、光輝さんは避けながら苦笑する。
「いや、やばかった。俺、止まんなかったもん、ほんと」
 言いながら、僕をちらりと見る。
「社長、ほら、せっかくいい具合に仕上がってんだから、早くしないと……」
「あら、そうね」
 女社長は、はたと動きを止めて、つぶやいた。
 すでにその瞳には怪しい光が宿っている。
「まずはこれかな~。基本中の基本」
 カバンから、数珠状のパールを引っ張り出した。大小様々なパールが連なっている。
「ん、入り口感度計るなら、それだよな」
 光輝さんも舌なめずりする。
 
「………」
 僕は霞む目で二人を眺めながら、萎えていく快感と共に高ぶっていた気持ちも、落ち込んでいくのを感じていた。身体が冷えていく。
 ソファーは皮張りで、ベッドのシーツ等とは違うから、剥き出しの足をうっかり動かすとひやりとする。
「ごめんな、放っちまって。お待たせ」
 にっこり笑って、光輝さんがまた僕の前に腰を下ろした。
 顔を覗き込みながら、お尻を触ってくる。柔らかく、擦るように揉みしだく。
「ん……」
 ちょっと拗ねていた僕の心は、光輝さんの温かい手のひらで、すぐ解された。
 
「……今度は、何するの?」
 手にしているパールが不可解で聞いてみた。
「巽の感度を、調べるのさ」
 僕の両膝に手を当てて、さっきの様に脚を開かせた。
 僕は今更、あらためて恥ずかしくなった。ちょっと抵抗すると、優しく蕾に触れてくる。
「ぁ……ん」
 ぴくんと身体が反応する。
「ここにね、これを一個一個埋め込んでいくわけ」
「……それ、全部?」
 優に20cmはある。数にすると幾つだろう。
「そう、殆ど全部。それで、あとで一気に引き抜く」
 僕はぞくりとした。痛そうな気がしたから。
「力、抜いて……。どのサイズが好きか、なんか感じたら教えろな」
 パールにローションをたっぷり付けると、その人差し指でちゅぷちゅぷと蕾を軽く揉んで刺激する。
 そっと、1個目のパールをあてがう。
 ひやりとした。
「……ん」
 普通サイズのパールが、押し広げて入ってくる。
 舌や指と違って、無機質なそれは、改めて違和感を感じさせた。
 つぷんと中に入って、収まった。何かが挟まっている異物感は、かなり嫌だった。
「ん…これ……いやかも」
 僕は光輝さんに、訴えた。
「始めはね…、みんなそう」
 光輝さんは優しく微笑み返してくれる。
「でも、最後まで入れる頃には、違う感想も出るかもよ」
 一粒入ったままのそこの周りを軽く押すように、円を描いて揉む。
 中のパールが動いて、内壁に変な刺激を生み出した。繋がって外に垂れているパールも蕾の際を擽る。
 
「……やぁ…」
 
 たまらず、つま先に力が入る。
「…2個め、入れるよ。今度は、ちょっと大きい…」
 2個目をゆっくり、押し付けてくる。閉じてしまっている蕾をあらためて押し開く。
「ぅ……ん…」
 やはり、無機質は嫌だと思う。無意識に押し出そうとしていたらしい。
 あてがってくる圧力が強くなった。
「力、抜いて…。パールの動きだけを、感じて…」
 くいくいと、パールを押し付けながら、囁く。
 つぷり、と2個目が入った。
「…ぁっ」
 
 
 


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