4.
 
 パールの直径だけ開いた蕾は、それを飲み込んだ瞬間きゅ、とまた窄まった。
「ん……」
 
 内側に送り込んだ刺激が、前を嫌でも膨張させる。
 僕は恥ずかしくて、シャツの袖で口を塞いだ。
「…いい感じだよ。次々入れるからな。声、出して…」
 光輝さんが囁く度、僕はぞくりとする。
 背中に快感が走って、パールを咥えているそこにも力が入った。
「あっ」
 半分押し入ってきていた3個目を、僕は自分で呑み込んでしまった。
 つぷんと入った勢いで光輝さんの指先まで少し咥えている。
 挟まった異物感が嫌だけど、一回一回押し開いては閉じる感触と、内側で動くパールが、なんとも焦れったい快感を生み出す。
「…食欲が、出てきたか?」
 ふふ…と笑って、光輝さんが言う。
「……!」
 そんな言い方…。僕は本当に恥ずかしくなって、目を瞑った。
 後ろのはみ出したパールが揺れた。動くと刺激されて、またまた窄めてしまう。
「ほら、…もっと欲しいって、ぴくぴくしだした。…おまえのこっちの唇が」
「……やだ…」
 指先で軽く一つ一つあてがっては、蕾に割り込ませる。途中まで咥えると、僕はその異物感と圧迫感に堪えきれず、つい力を入れてしまう。内側に導くように……。
 きゅっと締まっては、パールを飲み込んでしまう。そのたび、光輝さんは嬉そうに笑う。時々すごい大きいのがある。押開く異物感もひとしおだ。
「んっ」
 うっかり排泄感が勝って、飲み込んだパールを押し出しそうになる。
 そんな時は、光輝さんがうまく僕を快感に導く。半分埋め込みながらその蕾の周りを指でなぞる。円を描きながら、マッサージのように軽く押す。
 僕はたまらず、キュッと力を入れる。
 そうすると、大きいパールでも、ぷるんと入ってしまう。
「…っあ…はぁ…」
 そのたび、声が漏れてしまう。中のパールも動く。
 キュッと閉めるたび、直腸の中で怪しく蠢くので、前への刺激も強くなる。高々と誇張したそれが、びくんと揺れて僕の羞恥を煽った。
 光輝さんは時々、悪戯にせっかく入れたパールを1個引きずり出す。ぷりっと音を立てる勢いで取り出されると、引っ張られた刺激と排出感で思わずまた声が漏れる。
 内側から押し開かされて、蕾も別の快感を受ける。
「可愛い声。巽…もっと啼いて……」
 光輝さんは、舌先で蕾をパールごと舐め回した。
「ぁあ! …光輝さんっ…やぁ……!」
 腰がビクビク痙攣する。
 やめてと言葉では訴えながら、僕は与えられる快感を、総て貪っていった。
 自慰行為しか知らなかった僕には、全てが未知の快感だった。
 かなり大きなパールでも、押し付けられる度に悦び、開かされる快感に露を垂らした。そうして僕は淫らな声を上げながら、ほとんどのパールを呑み込んでしまっていた。
 今は、体内で蠢くパールの質量感が、別の快感を生み出している。
「いやらしいよ、巽…」
 光輝さんが僕の痴態を見つめて、囁く。
 入れ残された2、3個のパールが蕾に挟まっている。異物感で、どうしても無意識にも収縮を繰り返してしまう。飛び出ている数個のパールが、その度にひくひく動く。
「や……見ないで…」
 恥ずかしくて、泣きそうになる。
 窄まるたび、直腸までしぼられて、内壁にパールが当たる。
「んっ…」
 このパールがもたらす快感が、じれったい。微妙に前を刺激してくる。
 光輝さんの視線から逃れようと身体を捩ったら、中で動いて余計快感を煽ってしまった。
「ふ…ぅん……」
 つい声を上げてしまう。
 逃げるどころか、さらにヒクヒクと厭らしく見せ付けてしまう。
 前ははちきれそうにパンパンになっているし。羞恥で、霞んだ目に涙がこみ上げてきた。
「巽…気持ちいい…?」
 光輝さんの掠れた声。探るように聞いてくる。
「……………」
 唇を噛んで、僕は声にならない返事を返す。小さく首を縦に振る。
「…いい子だね。ご褒美上げよう」
 にっこり微笑むと、パールがはみ出している蕾に指を当て、蓋をするように押さえた。
「……ん、…なに…?」
 体内のパールが押されて、身体がびくんとする。
 光輝さんは反対の手で、僕のそっくり返って勃っているモノに上から掌を当てた。そのまま腹に押し付けるように掌全体で押し出した。
「!! ……ぁっ?」
 そこへの直接的な感触と、中からのパールの刺激で、激しい快感がスパークした。
 下腹をゆっくり押してくるのだけど、内部のパールの当たり所が、堪らない。
「や、やぁ、こうき…さん」
 顎を仰け反らせて、喘ぐ。
「ふふ、パールが、中のいいとこに当たってるだろ?」
 涙目で答える僕。光輝さんは満足そうに微笑んで、押していた掌を下にずらして袋を握った。
「っはぁ……」
 不意打ちのように息が漏れる。
 何回か揉みしだくと、誇張してぎちぎちに勃起しているそれに、指は這い上がっていった。
 僕は再び光輝さんの熱い掌に包まれて、喜びに震えた。ゆくりと上下に動き出す。
 恥ずかしい露がいっぱい垂れているので、動きがスムーズだ。厭らしい音まで立てはじめる。
「…んっ」
 だんだん動きが激しくなると、根元に下ろした時の手の側面が、下腹を打つ。
 それに合わせて、蕾をパールごとグイッグイッと押し上げてくる。
「はあぁ…!」
 外部からの圧力で、パールが激しく内部を刺激する。
 前を扱くだけではない快感が、内側から、蕾から、込み上げてくる。
「ぁあん……ぁあ…!」
 恥ずかしい喘ぎが止まらない。
 さんざん弄られた蕾の刺激が、背中を突き上げてくる。中のパールが容赦なく、敏感なところに当たる。
 大きな手の平は僕を上下しながら、その親指が時々鈴口を刺激する。そして舌で舐め回す。
「やぁ…、あ…」
 ……はあ、……はあ……
 荒い呼吸と、くちゅくちゅという厭らしい音と、甘い喘ぎ声……
 それだけの世界の中で、僕は気が狂いそうなくらい、気持ちが良かった。
「ぁ…ぁ…こうき……さん…、ぼく…」
 激しく喘ぎながら、上下される刺激に予兆を感じた。
「…ぼく、…いっ……いっちゃう……よぉ…」
 最後は泣き声になってしまった。こんな所でやだ、と一瞬思ったからだ。
「…いいよ、いきな。俺が最後まで高めてやるから。心配すんな」
 不安をかき消すように、優しく囁いてくれる。動きが更に激しくなる。
 僕は激しい扱きに、体中を揺すられながら喘いだ。
「…あぁ、あぁ、はぁぁ……!」
 いく! その時、いきなり光輝さんは後ろのパールを勢いよく引き抜いた。
「あああぁっ─────!!!」
 快感の絶頂が僕の背中から脳髄へ駆け巡った。
 吐き出された精子が勢いよく滴り落ち、自分とソファーを汚した。それでも尚、快感が止まらない。
「…あぁ…あぁ……」
 行き場のない快感が下半身を襲う。その蕾に指があてがわれ、再度激しく押込むように揉まれた。
「!! あああぁ…こうき…さん……」
 僕は、もう一度絶頂を向えて果てた。2度目は吐精はなかった。
 気持ち良すぎて僕は動けない。ぐったりとして、呼吸だけが肩を上下させた。
 涙でべしょべしょの顔を光輝さんが覗き込む。ちょっと心配そうに。
「……大丈夫か?」
 こくりと小さく頷く。心配顔に、安堵の微笑が広がった。
 僕のすぐ横に腰掛けて、髪の毛を優しく梳いてくれる。汗と涙で顔にべったり張り付いている。
「巽…すごいなあ」
 優しく頭を撫でながら、静かに言った。
「2回、イったな。初めてで、ここまで感じるなんて」
 すごい嬉しそうな光輝さん。でも僕は恥ずかしくて、ソファーに顔を埋めるように隠した。
 まだ身体の気持ちよさが抜けない。光輝さんに触れられると、そこが疼きそうで怖い。
 光輝さんはそんな僕にお構い無しで、僕の顔を上向きにさせると、両手のひらで頬を挟んだ。
「ほんとに、いい子だ。お疲れ様」
 ちゅ、と唇に軽いキスをくれた。僕はびっくりして、真っ赤になった。
「今日の仕事はこれで終わり。シャワー浴びようか」
 社長を振り仰ぎ、了解を得る光輝さんに、
「ほんと、お疲れ様。いいデータが取れたわ。まったく大した逸材ね!」
 にっこり微笑んで社長も頷いた。
 僕を掬い上げる様に抱えると、光輝さんは部屋に直接付いているバスルームへ運んでくれた。
 正面奧にある扉が、それだった。
 
 お尻を庇う様にバスタブの中に横たえさせると、シャツを脱がせられ、僕は初めて全裸になった。
 息を詰めて見つめてくる光輝さん。
 僕はあらためて、恥ずかしくなった。
 視線を遮るものが何もない。闇雲に気だるい手を動かして、あちこち隠そうとした。
 その手を押さえ込んで、光輝さんは僕の顎を捕らえた。上を向かせて、唇と唇を合わせる。
「…っ!?」
 さっきの軽いキスと違って、濃厚に吸い上げてきた。
 唇の線を舌先でぐるりとなぞる。歯列もなぞって少し開いてた隙間から、口内に侵入してくる。
 僕はディープキスは初めてだったので、未知の舌の感触に怖くなった。
 生温かくてぬめりがあり、別の生き物のように口の中で蠢く。
 最初は優しく僕の舌を探し出し、絡め取り、吸い上げる。
「ん……はぁ…」
 舌の側面を擽られると、くすぐったくて、光輝さんの舌を押しやる。
 その舌を根本から絡め取られ、吸い上げる。だんだんその動きが激しくなっていった。
 僕は苦しくて、藻掻いた。何度も何度も吸い上げて、離さない。唾液が顎を伝って、垂れていく。
 あんまり激しい吸い上げを繰り返すので、眩暈がした。このままじゃ死んじゃう。
「……んんんっっ!!」
 力一杯抵抗してみる。目からは涙が伝った。
 はっと我に返ったように、光輝さんが唇を離した。突然開放されて、僕は咽せた。
「ごめん…、ごめんな!」
 心配そうに何度も背中を擦る。僕はその温かい手に絆された。
「もう何もしないから、…ほんと、ごめんな。…身体、洗うぞ?」
 優しい声で必死に言う光輝さんに、僕は潤んだ目で頷いた。
 
 光輝さんはこの後、優しく全身を洗ってくれて、僕サイズの新しい着替えを用意してくれた。
 僕はこの時、光輝さん自身もコントロール出来ないほどの衝撃的なキスの意味を、知らなかった。
 
 
 


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