chapter10. time and time again 穿たれる楔-調 教-
1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8.
4
「克晴?」
「…………」
小さく顎を引く。
「言葉は?」
「………いか……して」
その声を合図に、俺の下は呪縛を解かれ、オッサンの腰が激しく動き出す。
「あッ、……あぁ」
「克晴……克晴……」
「んッ───!!」
あの“誕生日のプレゼント”以降、朝だろうが昼だろうが、オッサンの気が向くまま、俺は犯され続けた。
ヤル時は必ず、前を拘束具で縛る。「やっぱ、克晴には、青だね」と言って、青い革ベルトを買い直してきて。
そして、”イかせてください”を強要された。
言わないと、絶対俺を達しさせない。自分だけ出して、さっさと会社へ行ってしまうこともあった。
放置された時は、最後は自分で処理するしかなかった。そのベルトは自分で外せるから。
俺には、……そんな事をしなければならない事自体がまた、苦痛だった。
何日続いているのか、わからない。
俺はだんだん「お願い」を言い慣れていった。
頬が紅くなるのがイヤだ。
唇が紅くなるのもイヤだ。
綺麗だの色っぽいだのと、オッサンが喜ぶのを聞きたくない。
俺は、オッサンのためだけの──動く玩具だった。
……前も思った。いっそ、感じなきゃいいのに……
─────早く終わらせてくれ。
でも──調教は、毎日続く。
指の腹が、胸の尖りを弄ぶ。
「んんッ……」
弾かれるたび、腰が痺れる。縛られながらも上を向いて、いきり勃つモノが苦しい。
「……ハァッ」
「克晴?」
「ん……いかせろ……はやく」
指が胸から腹へ、伝い降りていく。
「…なんか偉そう」
「……っ、……お願い」
腹から更に下へ。茂みを掻き分けて、ベルトを摘む。
「誰に言ってる?」
「………?」
指輪でも回すように、摘んだベルトを揺する。
「僕はだれ?」
「……!!」
きつく留められているそこは、揺すっても回転はしない。嵌められたモノが、辛く震える。
俺は、歯を食いしばる。
オッサンの眼。
俺がそうして睨み付けるとき、必ずこの顔をする。
泣き顔…一瞬だけど。
俺には意味がわからない。
その後のオッサンの仕打ちは、ただ、俺を傷つける。
「………強情克晴」
ベルトを嵌めたまま、握って扱きだした。
「ぁッ」
腰がゾクゾクする。
出入りしてるオッサンをぎゅっと締めてしまった。
「身体は、こんなに正直なのになぁ」
はぁ、はぁ、と、荒く息を吐きながら、見下ろしてくる。俺は眼を瞑って、首を横に振った。
「なんで、雅義って……呼んでくれないの」
苦しそうに、呼吸の合間に聞いてくる。俺は仰け反って、疼きを散らしていた。
「………オッサンは、オッサンだ」
反らした顎越しに、ジロリと睨み付けてやった。
「んんぁ、あっ!」
激しいグラインド。打ち付けた後、更にえぐる。
「……っくぅ」
こんなこと、してきたって!
絶対、名前なんか呼ばない。オッサンは、オッサンだ。
悪魔で、鬼畜野郎で、レイプ魔だ。それ以上の何者でもない!
俺の動かない唇、それを見るオッサンのいつもの顔。
睨み合ったまま、オッサンだけ果てた。
「……僕、もう行くから」
ゆっくり身体を起こすと、そう言った。俺の身体はまだ熱い。ちょっとの刺激でも、声が出そうになる。
「……っん」
無遠慮にずるりと抜くと、オッサンはそんな俺を一瞥して、部屋を出て行った。
──ガチャリ。
施錠の音。
「……………」
俺は、その音を聞きながら、心が渇いていくのを感じた。
「……………」
高まった熱を、どう処理しよう。
……なんてのは、フリだけだ。俺の心は、そこにしかない。
初めは屈辱感で、打ちのめされた。こんな事強いられるなんて……。
でも、何回かやってるうちに、気が付いたんだ。“この時”だけは、あの子に会える。
俺は、両手を下に這わせた。忌まわしい革ベルトを外す。
小さな俺の天使。
「…………メグ」