chapter10. time and time again 穿たれる楔-調 教-
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6
「ん………」
身悶えて、俺は腰を動かした。
「いいでしょ、それ」
悪魔の顔でオッサンが嗤う。
俺の両手は、頭上で一つに繋がれていた。着ていたパジャマの上下は、全部剥ぎ取られて。
そして、後ろには変なモノを入れられていた。あの薬をたくさん注入された後に。
「あぁっ!」
悪魔が指で後ろを押さえてくる。中の異物が暴れた。
「やっ……やめろ! オッサン!!」
「……だから、それがいけないって言ってるのに」
溜息交じりに、俺を見た。
『これは、調教じゃなくて、お仕置きだから。……わかってね』
オッサンはそう言って、俺をベッドに繋いだ。
服も全部、剥いだ。 パジャマの上は、鋏で袖を切り開いて。
「前回もこうすればよかった。うっかり手を拘束しちゃうと、脱がせられなくて、困るね」
何をされるのか……
何が始まるのか、俺はそれだけを恐怖していた。
黙り込んで凝視している俺に、オッサンはふっと笑いかけた。頬に手を当て、顔を覗き込んでくる。
「怖い?」
俺は答えない。
「……お仕置きだから、ちょっと辛いよ。でも克晴がいい子にして、僕をちゃんと呼んでくれるなら、すぐにやめてあげる」
唇を合わせてきた。
「ん……」
「いいね? 言うこときかないと、お仕置きは繰り返すよ」
囁きながら、何度も啄むようなキスを繰り返す。
キスの最後に、またじっと俺を見た。
「──────」
「……ばか克晴」
添えていた手のひらで、俺の顔をぐいっと押すと、その勢いで立ち上がった。
“お仕置きする”と言って持ってきたモノが、ガラステーブルに並べてある。オッサンはこの間と同じように、薄手のゴム手袋を嵌めた。
「!!」
それを見た俺は、氷水を浴びせられたように、背中が冷えた。
「ご明察。まずこれ、挿れるからね」
シリンジを持ち上げながら、顔色の変わった俺を楽しそうに見る。
「や……」
それは、もう嫌だった。俺が俺でなくなる。
理性も感情も全てが吹っ飛んで、体中が性欲に支配される。
俺は自由になる足をバタつかせた。オッサンを近寄らせないように、宙を蹴った。
「──来るな!」
「……克晴ってば。大事なトコ丸見えにして、そんなことする……」
俺は、赤面した。
分かってる! そんなの知ってるけど、それどころじゃないだろ!
そんなの入れられたら、蹴り上げて丸見えになるどころじゃ済まない。構わず、牽制を続けた。
「どこまで、……君は……」
溜息をついたオッサンは、シリンジを置いて、違う物を手に取った。
「その脚、先に封じる」
「!!」
ベッドサイドに立つと、真横から、俺の右足首を両手で掴んだ。
「克晴が悪いんだからね!」
文句をつけながら、オッサンは俺の足首に革製のアンクレットを嵌めた。
太股の付け根にも同じ素材のベルトを巻き付けた。
「えっ……」
膝を曲げさせると、それぞれに付いているフックを引っかけ合った。太股と足首を、二本の輪で括ったのだ。
………なに!?
もうこれでは、蹴ることはおろか、脚をベッドで踏ん張ることもできない。
左足首も同じように、太股に固定された。
「……いい眺め。寝たまま、M字開脚だね」
おっさんが舌なめずりをしながら、目を細めた。
「────っ!!」
俺は羞恥で声も出せない。
膝を曲げたまま括られた両脚は、外側に開いて、股間を晒け出していた。
俺は頭上で一つに繋がれた手首を引っ張って、藻掻いた。どうにか身体を反転させたい。せめて脚を閉じたかった。でも膝の重みで、開いてしまった脚は、なかなか動かない。
「………くっ」
藻掻く俺を、オッサンはずっと眺めていた。
「克晴……知ってる?」
「……?」
目線だけ、動かした。悔しくて、下唇を噛み締めながら。目の端に捕らえたその顔は──
嗤ってる……悪魔が……楽しそうに。
「“快感”ていうのはね、基本的に身体には負担なんだ」
手のひらを俺の喉に、這わせた。
「身体って言うか、……精神かな」
少しずつ、指を鎖骨に滑らせていく。
「だから、愛撫の時も、セックスの時も……脚を踏ん張ったり、相手に抱きついたり……シーツを掴むのも、そうだよね」
胸の尖りを摘み始めた。身体が跳ねる。
「んんっ……」
「そうやって、与えられた“快感”を散らすんだ。そうでないと精神が、感覚について行かない。自然に身体がリキんでしまうのは、そう言う訳」
「…………」
指は臍から下腹部へ、伝って行った。
「あ……や……」
「それら全てを封じられた身体は……」
「あぁッ!!」
身体が、ビクンと跳ね上がった。腰から、感じたことのない疼きが湧き上がってくる。
剥き出しになっている蕾に、指を当てた……それだけで、そこが痺れ上がった。
「あり得ない快感を体験することになるんだ。今感じているのが、それだよ」
指を軽く当てて、こすっているだけ……
なのに、俺の身体は、腰は、喜びの声を上げ続けている。ゾクゾクと湧き起こる快感。
「やっ、止めろ! やめろっ!!」
無意識に足は動こうとするけど、完全に固定されている。僅かに膝が、揺れるだけだった。
突き上げてくる疼きは、ダイレクトに前を興奮させた。あっという間に上を向いて、露を垂らし始める。
「はは、克晴はイヤラシイなあ。薬を使うまでもないみたい」
悪魔が嗤う。
俺は、疼きをやり過ごすのが精一杯だった。唯一リキめる顎で、奥歯を噛み締めた。
悪魔はさっき手にしたシリンジを再度掌中にすると、俺の腰元に回り込んだ。
「────っ!!」
俺は、恐怖で目を見開いた。シリンジの先が、後ろにあてがわれるのが見える。同時に、無機質の物体がめり込んでくる感覚。
「うあっ! やめっ…! やめろーッ!!」
背中が激しく仰け反った。否が応でも快感を受け容れさせられる。
「あっ、ああぁ!」
中に押し込まれる冷たいゼリーでさえ、声を失くすような疼きを生み出した。
容赦なくピストンを、押し込み切る。
「200cc。まるまる一本入れちゃった」
嬉しそうに言いながら、後ろを指で押さえた。
「あっ、……くぅ……」
強すぎる快感に、顎の力も入らない。
噛み締めるどころか、唾液も飲み込めなくて、口の端から顎を伝った。
ビクン、ビクンと、そそり勃っているモノが、腹に着く勢いで痙攣する。絶頂を目指そうと、快感の全てを取り込むように内壁まで動いた。
「ダメ、ダメ。イかせないよ」
片手で蕾を抑えたまま、いつもの青い革ベルトを引き寄せ、前を括ってしまった。
「うわ、すごい大きいよ。いつもの穴じゃベルトが締まらない」
「───あぁっ!」
圧迫感が俺を苛む。
悪魔の声なんか、何も聞こえない。締められてなお、ビクンビクンと痙攣するそれに、指が這ってきた。
「ふぁ………っ」
唇と舌先で、先端を舐めまわす。
「ああ! ………やっ……!」
その間も、蕾に蓋をした指は、そこを押さえ続けている。
俺は首を振って、抗った。下半身が、どんどん熱くなっていく。この間と同じ動悸がしてくる。
「あっ………はぁ……」
息まで熱くなってきた。喉を反らせて、大きく息を吸った。