chapter8. awakening... oblivion time 忘却の扉
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 5
 
「もうちょっと、強い刺激をあげる」
 
「!!」
 オッサンは、ずっと添い寝するように俺の横にいて、指だけ動かしていた。その身体を、俺の足の間に移動させた。
「…………?」
 不安になる。
 ……なに、……する?
 焦れた快感に、頭は麻痺している。霞む視界で、オッサンを追った。
 腰の下に手を差し込み、持ち上げられた。
「ぁ……」
 舌が入ってくる。
「んっ、……ぁあ!」
 ぬめった舌が、蕾の内部で蠢く。俺は、その舌も締め付けてしまった。
「ん……克晴。それ、いいね」
 もう一度挿れてくる。
「ぁあ……」
 俺の後ろは、何度でも舌を締め付けて、吸い付いた。
「ぁ…、………んっ」
 舌が蕾から出て、その上に這い上がってきた。
 蕾の堅さを確かめるように、淵をぐるりとして、少しずつ、少しずつ、前の方に上がってくる。
「んっ……」
 ビクンと腰が跳ねた。
 袋の裏筋に辿り着くと、その付け根を執拗に舐め始めた。同時に蕾に指があてがわれた。ゆっくり押し込まれる。
「ぁッ……ぁッ……」
 さっきより硬いモノが、奧に奧に入ってくる。
「んん────っ!」
 俺は首を振って、嫌がった。刺激が強すぎる。身体はすぐ、頂点を目指そうと熱くなる。
「あっ………あぁっ、…やぁ……」
 体内の一点を見つけ出し、指がそこを探る。その間も唇と舌は、俺の屹立をいたぶった。
 縛られた根本…袋…竿…と、舌先を尖らせて、這い上がる。オッサンの熱い息まで、感じた。鈴口まで辿り着くと、湿った唇で全体を覆われた。
「ふ………ん……」
 割れ目に舌先を食い込ませながら、唇の柔らかい部分で竿を上下する。
 そこから生まれる快感が、後ろの指が生み出す刺激に絡まる。
 俺は膝を曲げ、オッサンの両側にしっかり足を付けて……
 高々と自ら腰を上げて、その責めを受け入れていた。
 
 ────っ!!
 それでも、腕に力を入れて、俺は首を振り続けた。
 ───やめろ! 俺は感じたくない! 
 ……こんなの、うそだ!
 
 ───あッ
 イきそうな高まりが、全身を襲う。
 どんなに嫌でも、身体はそれを求める。
「くぅ……!」
 後少しで、すべてが解放される……そんな上り詰めていく快感の中で、いきなり指の動きが止まった。
 咥えた唇も舌も、生温かいだけのものになった。
「はぁ………」
 顎を反らして、長い吐息で、渦巻く快感をやり過ごす。
 その顔を、オッサンが覗き込む。一言、“お願い”しろと、その眼は言う。
 イきたい……イきたい……イきたい……! イかして!! 
 身体が叫ぶ。入ったままの指を、これでもかと締め付ける。
 
 ………でも、俺は──
 
「……ハァ…」 
 潤んだ目で、オッサンを睨み付けていた。
「……いい加減、強情だね。……克晴」
 指はそのまま、口だけ外してオッサンは俺を見た。
「もう、何度イっててもおかしくないほど、触ってるのに……」
 竿の裏を人差し指が滑る。
「……んっ」
「こんなに感じて、こんなにイヤラシイ露を垂らしてさ」
 濡れた指を俺に見せる。
「………っ」
「なんでかなあ。……克晴は、けっこう好きだったはずだよ」
 ………?
「あれだけ、身体を弄くってたんだもん。僕は知ってたよ」
 ────!!
 やめろ……それ以上、言うな!
 凝視したまま、嫌々をするように、首を振った。オッサンは、嬉しそうに眼を細めた。
「特に車で、膝に乗っけてここを、こうしてるとき……」
「ぁ……あぁ!」
 不意に体内で指を動かされ、俺は仰け反った。
「うぁ……やぁっ……」
「ヤじゃないはずだよ。ちゃんと感じて……」
「んんっ……」
「そうそう。僕が言うと、こんな風に締めてくるんだ」
 ────やめろ! やめろ! 聞きたくない、そんなの!
「かわいい克晴。僕が意地悪して指を止めちゃうと、ずっとがまんしてそのままでいるんだけど……。だいぶ経ってから、恐る恐る顔を上げて、僕を見るんだ。首を捩って、上目使いにさ……」
「…………」
 動き続ける指のせいで、息が上がる。
「“して”って、その目は言うんだ………“続きをして”って」
 
 ─────ッ!
 
 俺は目を瞑って、言葉を追い払った。
 聞かせるな、そんなこと! 俺は、覚えてない!
「あの頃の克晴は、もうちょっと素直だったよね」
 グイと、中の一点を突き上げてきた。
「っ、……あぁ!!」
 刺激に勝てない。嬌声は、求められるたびに上がった。
「そんなにイヤなの? ……僕にお願いするのが……」
 悲しそうに聞いてくる。俺は、ヤツの眼を見た。
 
 そして……初めて頷いた。
 
「────!!」
 眼を見開いて、口も開きっぱなしで、オッサンは顔を真っ白にした。
「克晴……」
 中の指が激しく動き出す。オッサンの唇はまた、俺にしゃぶり付いた。
「………くっ」
 腹いせのように擦り上げる。
「克晴……克晴……」
 口が離れるたびに繰り返す。
「ぁ……はぁ……!」
 眼の裏がチカチカする。もう何度目の絶頂の予感だろう。
 ……いく……いく…今度こそ──!
「ん!………ぁ……」
 
 絶望感。
 ……また、止まってしまった愛撫と律動……
 
 
「ふ………」
 悔しくて、声が漏れた。
 辛い……辛いよ………
 どれだけ繰り返すんだ、こんなの…………
 


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