chapter8. awakening... oblivion time 忘却の扉
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「……泣いてるの?」
 オッサンが俺を見た。這いつくばって、顔を寄せてくる。
「克晴は……涙は流さないけど、よく泣いてた」
「…………」
「泣かせたい訳じゃないのに……。どうしてこうなってしまうんだろう」
 
 ────なに、言ってんだ……
 こんだけのことしといて……
 
「辛いだろ? “うん”て言うまで辞めないよ。……ご飯も……トイレも。……睡眠も。みんなお預け」
「!!」
 ぎょっとして、ヤツを見た。
 ………なんだ、それ……。
 俺の頬に手を当てて、ゆっくり撫でる。
「何回でも、これを繰り返す。薬はまだあるんだ。感度が落ちたらまた挿れてあげる」
 
 ────!!
 ………正気…か?
 俺の心が揺れた。長い責め苦に疲れ切っていた。……ご飯も…トイレも…って…
 ────これがまだ、延々続くなんて……
 
「……克晴?」
 その隙間を覗き込まれた。
 今度こそ、“お願いする?” というその問いかけに……その顔に、俺はゆっくりと視線を合わせた。
 
 そして───小さく頷いた。
 
「……………」
 睨み付けた眼は、怒りで燃えるようだ。
 …悔しい! 悔しい! …心まで陵辱する! 俺のプライドは、ズタズタだった。
「克晴──」
 俺の哀しみなんか、分かりはしない。
 この悪魔は、俺を頭から抱え込んで抱きしめて、自分一人で喜んでいた。
「気持ちよくしてあげるね」
 耳に噛み付きながらそう言うと、手だけ動かして、下の戒めを解 いた。
「────」
 俺は思わず開放感で、溜息をついた。
「かわいい……」
 また耳元で喋る。
「んんっ……」
 顔を振って、追っ払おうとした。首筋がゾクゾクする。
「駄目。ここが弱いの知ってるんだから」
 耳に唇を押し付けたまま喋る。
 降ろした手も、解放されて悦んでいる屹立を、扱きだした。
「一回、イかせてあげる。その後、一緒にイこうね」
「ぁ……はぁ!」
 もう、声なんか聞こえない。与えられる快感に、身体の全神経が集中していた。
 数回扱かれただけで、俺は達してしまった。オッサンが、手に付いた白濁を嬉しそうに舐める。
 俺の疼きは、止まらなかった。薬のせいなのか。後ろへの刺激が欲しくて、前がまた芯を持ち始めていた。
「はは……イヤラシイね、克晴」
 それを弄びながら、楽しそうに言う。聞きたくない俺は、また目を瞑った。
 オッサンが、ファスナーを降ろす気配。足を抱え上げられ、後ろに熱い塊があてがわれた。
「────!!」
 目の前で火花が散った。
「あ……ああぁ!!」
 熱い! 太い! 擦り上げる快感が、背中を這い上がる。
 さっきまでの焦れったい刺激なんかとは、比べものにならない圧迫感。足が、手が痺れてそれでもまだ有り余る。
 ギャグを咥えている口の端から、飲み込めない涎が顎を伝った。
「克晴……克晴っ……」
 背中に腕を回して、俺を抱きしめながら、譫言のように呼び続ける。
「──ッ! ───ッ!」
 擦られて、打ち付けられるたび、俺の身体は、絶頂目指してまた上り詰めていく。
「あぁ………っ」
 ドクンッと、放出する爽快感。身体を駆けめぐる快感。体内にも、熱い欲望が注がれた。
「────!?」
 それでも、律動は止まらない。俺も、身体は満足していなかった。無言の内に、二回目が始まっていた。
 お互いの喘ぎ、荒い呼吸……腰を打ち付ける激しい音……。
 何もない部屋で、それだけが響いていた。
「んんっ…………、はぁ!」
 また、体内にヤツの滾りが広がる。俺も扱かれて、イカされていた。
 
 
 ……ハァッ、……ハァッ……
 
 荒い息が整わない。オッサンも俺の上に突っ伏したまま、動かなかった。
 ───相変わらず、すぐに抜かない。
 薬の名残がある。刺激でまた……なんてのは、嫌だった。
 早く抜けよ……。
 
「克晴……最高……」
 俺を抱きしめたまま、オッサンは呟くけど、動かない。
 体温で温められて、疲れ果てた俺は、次第に意識が薄れていった。
 


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