chapter12. defender of the memories -1秒の記憶-
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「あ……」
先生が、小さい声をあげた。
「飛んだ……」
「…………」
僕も空を見上げた。
窓の外。青い空が、木の後ろに広がってる。
そこに黒い点が横切って、吸い込まれていくのを見た気がした。
克にぃと見上げた空。毎年ちがうのに、おんなじ空……
…………克にぃも、この空…見てるかな……
「………先生」
「……うん?」
「セミが飛ぶとき、おしっこ引っかけるの………なんでか知ってる?」
「…………」
「逃げるためじゃなくて、……飛ぶためなんだよ」
僕は、克にぃだらけだ。
忘れない。
いっこいっこ、大切にする。
克にぃが積み重ねてくれた時間。
遊んだこと。キスや、えっちも。………あのホテルのことも。
もっかい、約束……
明日の僕が、いられるように……今をちゃんと、僕…がんばる
だから、ねえ……
もっかい、やくそく……声を聴かせて………僕を呼んで
……逢いたいよ……克にぃ……