chapter10. time and time again 穿たれる楔-調 教-
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 3
 
 この部屋に時計はない。
 カーテンの向こうが暗くなってきて、日が暮れたのだと判断するしかなかった。
 一旦、部屋を出て行ったオッサンは、言った通りに誕生祝いのケーキやらを用意した。俺がそんなのを食べる筈もなく、それは部屋の隅にずっと放置されていた。
 それよりも滑稽なのは、そのケーキを横目にしながら、俺はまた身体を貪られていた。
 
「………あっ」
 根本を縛られていて、食い込みが痛い。………今度は、真っ赤な革ベルトで。
 悪趣味もいいとこだ。
「克晴に似合うと思って買ったんだ。…青い方がよかったなあ」
 言いながら、指を増やしてくる。
「………んんっ」
 今は両手も口も、自由だった。
 でも、ヘタに抗って、いつ拘束されるかわからない。そのことが、自然と俺の動きを封じていた。
「克晴……」
 俺を呼びながら、ヤツが入ってきた。
 ────くうっ!
 抉られるような圧迫感。オッサンはズボンの前だけ開けて、俺に乗っかっていた。
 背中に腕を差し込み、俺の両腕ごと抱きしめている。
 俺は自分とオッサンの隙間で、少しでも距離を取るように腕を曲げていた。煙草臭いシャツの肩にしがみつき、押し返すように自分を支える。
「───あ!?」
 オッサンの腰が、……動きが変わった。
「はは、気持ちいいとこ、当たる?」
 呼吸を乱しながら、聞いてくる。真っ直ぐな出し入れではなく、抉って突き上げてくる。
 ………嫌だ!
 グラインドさせた腰が、俺の中でヤツを暴れさせる。今までにない、変な感覚が湧き上がってきた。
「……こんな動き」
「……ぁっ……、………あぁ!」
「克晴にしたこと、なかったよね」
「………ぅっ………くぅ…」
 打ち付けられる激しい音と律動に、心まで揺さぶられる様だ。合間に囁いてくる声が、自分の喘ぎと、交互に聞こえる。
「初めての体験を、誕生日プレゼント」
 そう言うと、俺の中の悪魔は一段と膨張し、硬くなった。
「───!!」
 喉を反らして顎を上げ、なんとか息を吸った。
「克晴……かわいい…」
 言葉とは裏腹に、容赦のない抽挿を繰り返す。腹の裏を擦っては突き刺してくる。
「あぁ!……や……やめっ!!」
 首を振りながら、叫んだ。高まっていく絶頂感。
 俺の前も、大きくなっていった。
「……痛っ!!」
 嵌められた紅い戒めのせいで、それ以上勃つことを許されない。それでも激しく突き上げられた。蕾と内壁への刺激のせいで、身体は上り詰めていく。
「オ……オッサン……、やめ……!」
 ───はぁっ……はぁっ……
 
「違うでしょ、克晴。……勉強したじゃないか」
「…………?」
 
 
 
 ……はぁっ………はぁっ……
 
 
 
「“お願い”しなきゃ。僕に。───イかせてってさ」
「─────!!」
 オッサンはそれ以上、何も言わない。ただ答えを待って、ピストンを続ける。
 
 
 
 ……はぁっ……はぁっ……
 吐息と、打ち付ける肉音。
 
 
 
 ───あぁ……体が…
 
 ……嫌だ、嫌だ! 
 もう、あんな惨めな気持ちは……イヤだっ!
 
 
 
 
 
 
 
 
 はぁッ…はぁッ…はぁッ…はぁッ…はぁッ…
 
 
 はぁッ…はぁッ…はぁッ…はぁッ…はぁッはぁッ…はぁッ…はぁッ………………!!
 
 
 
 
 
 
 ……………
 
 
 
 
 
 
「お……ねが……ぃ…」 
 
 
 
 
 
 
「………いい子だね」
 
 頭を抱えて、髪の毛にキスしてきた。
 
 ───悔しい…、悔しい…ッ
 屈辱と怒り、そして達せない苦痛で、頭も体も全部が熱い。オッサンの手が下に伸びて、戒めを解いた。
「────うぅ!」
 一気に血液が流れ込んでいく。
「うあぁっ、アッ、アァッ!」
 熱くいきり勃ったそれを、掌中にされ、呼吸も整わないうちに扱かれ始めた。
 
 ハァッ、ハァッ、ハァッ!
 俺のかオッサンのか、荒い息が突き合わせた顔の間で、熱く渦巻く。
 
「イク……かつはる…一緒に……」
「───ぁ……ああっ!」
 力一杯、打ち付けられた。最後はぐいっと突き上げる。仰け反った俺の体内に、熱い滾りが放出された。オッサンの手の中で、俺も吐精した。
「……っ、ぅぅ」
 出し切るとき、思わず呻いた。こんな感覚は、初めてだった。
 握り続けられるオッサンの掌の中で、俺のそれは、いつまでも脈を打っていた。
 
 
 額を汗が伝っていく。
 鳴りやまない動悸のせいで、いつまでも苦しい。呼吸の度、肩や胸が上下していた。
「……………」
「克晴……カッコイイ。高校生がスポーツした後みたいな、顔してる」
 放心状態の俺を暫く眺めていて、ぽつりと呟いた。
「……綺麗だなあ」
「…………」
 腹の底からイラッとした。その、呑気な声に。
 俺は耐え難い責め苦に折れてしまったことへの嫌悪感と、闘っていた。
 そして身体の熱を冷ますのにも、集中していた。冷めきらない余韻みたいな感覚が、腰の辺りを彷徨っていたから。
「…………」
 瞑っていた目を薄く開いて、横目でオッサンを一瞥してやった。
 いったいどんな顔して、そんな声出してんだか……。
「はは、克晴だー。やっぱ、その眼、好き」
 真横に並んでひっくり返っていたオッサンの顔は、無邪気な子供みたいだった。
 


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