chapter10. time and time again 穿たれる楔-調 教-
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 4
 
「克晴?」
「…………」
 小さく顎を引く。
 
「言葉は?」
「………いか……して」
 
 その声を合図に、俺の下は呪縛を解かれ、オッサンの腰が激しく動き出す。
「あッ、……あぁ」
「克晴……克晴……」
「んッ───!!」
 
 
 
 
 
 あの“誕生日のプレゼント”以降、朝だろうが昼だろうが、オッサンの気が向くまま、俺は犯され続けた。
 
 ヤル時は必ず、前を拘束具で縛る。「やっぱ、克晴には、青だね」と言って、青い革ベルトを買い直してきて。
 
 そして、”イかせてください”を強要された。
 言わないと、絶対俺を達しさせない。自分だけ出して、さっさと会社へ行ってしまうこともあった。
 放置された時は、最後は自分で処理するしかなかった。そのベルトは自分で外せるから。
 俺には、……そんな事をしなければならない事自体がまた、苦痛だった。
 
 何日続いているのか、わからない。
 俺はだんだん「お願い」を言い慣れていった。
 
 
 
 頬が紅くなるのがイヤだ。
 唇が紅くなるのもイヤだ。
 綺麗だの色っぽいだのと、オッサンが喜ぶのを聞きたくない。
 俺は、オッサンのためだけの──動く玩具だった。
 ……前も思った。いっそ、感じなきゃいいのに……
 ─────早く終わらせてくれ。
 
 
 
 
 でも──調教は、毎日続く。
 指の腹が、胸の尖りを弄ぶ。
「んんッ……」
 弾かれるたび、腰が痺れる。縛られながらも上を向いて、いきり勃つモノが苦しい。
「……ハァッ」
「克晴?」
「ん……いかせろ……はやく」
 指が胸から腹へ、伝い降りていく。
「…なんか偉そう」
「……っ、……お願い」
 腹から更に下へ。茂みを掻き分けて、ベルトを摘む。
 
「誰に言ってる?」
「………?」
 指輪でも回すように、摘んだベルトを揺する。
 
「僕はだれ?」
「……!!」
 きつく留められているそこは、揺すっても回転はしない。嵌められたモノが、辛く震える。
 俺は、歯を食いしばる。
 
 オッサンの眼。
 
 俺がそうして睨み付けるとき、必ずこの顔をする。
 
 泣き顔…一瞬だけど。
 
 俺には意味がわからない。
 その後のオッサンの仕打ちは、ただ、俺を傷つける。
 
 
「………強情克晴」
 ベルトを嵌めたまま、握って扱きだした。
「ぁッ」
 腰がゾクゾクする。
 出入りしてるオッサンをぎゅっと締めてしまった。
「身体は、こんなに正直なのになぁ」
 はぁ、はぁ、と、荒く息を吐きながら、見下ろしてくる。俺は眼を瞑って、首を横に振った。
「なんで、雅義って……呼んでくれないの」
 苦しそうに、呼吸の合間に聞いてくる。俺は仰け反って、疼きを散らしていた。
「………オッサンは、オッサンだ」
 反らした顎越しに、ジロリと睨み付けてやった。
「んんぁ、あっ!」
 激しいグラインド。打ち付けた後、更にえぐる。
「……っくぅ」
 こんなこと、してきたって! 
 絶対、名前なんか呼ばない。オッサンは、オッサンだ。
 悪魔で、鬼畜野郎で、レイプ魔だ。それ以上の何者でもない!
 
 俺の動かない唇、それを見るオッサンのいつもの顔。
 睨み合ったまま、オッサンだけ果てた。
 
「……僕、もう行くから」
 ゆっくり身体を起こすと、そう言った。俺の身体はまだ熱い。ちょっとの刺激でも、声が出そうになる。
「……っん」
 無遠慮にずるりと抜くと、オッサンはそんな俺を一瞥して、部屋を出て行った。
 ──ガチャリ。
 施錠の音。
「……………」
 俺は、その音を聞きながら、心が渇いていくのを感じた。
「……………」 
 高まった熱を、どう処理しよう。
 ……なんてのは、フリだけだ。俺の心は、そこにしかない。
 初めは屈辱感で、打ちのめされた。こんな事強いられるなんて……。
 でも、何回かやってるうちに、気が付いたんだ。“この時”だけは、あの子に会える。
 
 俺は、両手を下に這わせた。忌まわしい革ベルトを外す。
 
 小さな俺の天使。
 
「…………メグ」
 


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