chapter10. time and time again 穿たれる楔-調 教-
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 ……うあ…あッ…!
 打ち込んだ楔の先で、ローターが押されて動く。ありえない奥まで剔られた。
 
 唇を剥がして、俺は叫んだ。
「やぁ、おっさん! やめっ……」
 揺すられる振動、肉壁を擦る快感、突き上げる衝動……
 またさっきと同じ現象を、繰り返し始めた。
「……アアァァッ!!」
 頂点に達した快感、背中を走り続ける疼き。それでも、快楽を貪り続ける俺の腸壁は、飽くことなく、出入りする肉棒を締め上げる。
 
 ──あぁっ……また……気が遠くなる……
「行かせないよ」
 ふいに、声が降ってきた。
 俺の顔の両側に手を付いて覆い被さり、服従強要の楔を打ち込んでくる悪魔。その顔が、真っ正面から俺を見下ろした。
「行かせない、克晴。正気のまま、この地獄に耐えて」
「…………!!」
 俺は、気が付いた。この悪魔の腰使い……異常に、長い。パンパンと、打ち付ける音が、ずっと響いている。
「……く……はぁ、……はぁっ」
 俺は薬でおかしくなっていて、しかも根本を搾られてんだから…ともかく……
 ───えっ! ……まさか!?
「───!!」
「気が付いた? ……僕もね、縛ってる。初めに克晴に嵌めた、赤いヤツで」
「…………ッ!?」
「しかもね、……君の中に、まだ残ってる。──さっきの薬が」
「─────!」
 声にならない驚きを、見開いた目で悪魔にぶつけた。
「指なんかじゃ、ダメなんだ。こうでもしなきゃ、根を上げてくれない」
 腰をグラインドさせてきた。打ち付けた後、更にえぐる。
「…あッ、…あぁッ、…あぁぁッ……!」
 前への刺激が激しくなる。縛られた根本が食い込んで痛い。
 
 ──擦って欲しい! イかせて欲しい! もっと刺激を…!
 
「───くぅッ……!」 
 後ろでは充分、イってる。今もイき続けてる。なのに、前が欲しがって啼きだしてしまった。
 欲求が高まって、後ろの穿ちだけでは満足しなくなっている。
 
「アッ…、アッ……!」
 俺は首を振って、悶えた。
 
 
 ここ数日犯られっぱなしで、イかされることに、身体が慣れてしまっていた。
 “お願い”と一言。その時だけ心を潰せば、どれだけ楽になるか知っている。
 
 ────お願い、お願い! ……イかせて、イかせて!! 
 言い慣れた言葉が、頭に反響して俺を追い立てる。
 
 ──でも、今回は“お願い”じゃない。そんなのしても、ダメなんだ。
 
「うっ………あぁ………」
 俺の悶絶を悪魔が見下ろす。
「克晴……これが最後。……ハァ……これ以上はもうないから」
 打ち付ける呼吸の合間に、囁く。
「───!!」
 
「……うわあぁッ!!」
 俺は、本当に地獄を見たと思った。
「やぁ……おっさん、やだっ!! やめっ……やめろ────ッ!!」
 腰のスピードを速めながら、ローターのスイッチをオンにしたのだ。
 腹の奥底まで挿れられたそれは、未知の生き物となって俺の中で暴れ出した。それをこれでもかと押し込むように、オッサンの肉棒がピストンする。
 ……も……だめ………
「……克晴……克晴……」
 首を抱え込んで、肩口に顔を押しつけながら、俺を呼ぶ。
「あッ、あッ、あッ、あッ、………」
 俺は揺すられるまま、声を上げていた。
「克晴……克晴……克晴…………かつはる!!」
 
 
 
 ……………おっさん………
 
 
「まさ……よ…し…」
 
 
 
 飲み込めない唾液が伝い続ける、口の中で。
 叫ぶことしか出来なくなった、舌の上で……それだけ、声にした。
 
 
 
 
「───克晴!」
 
 力強く、抱きしめられた。
「嬉しい。やっと呼んでくれた……」
 
 俺の目はもう何も映らない。
 でも、顔に落ちてくる温かい滴で、オッサンが泣いているのは分かった。
 
 
 
「くぅ、……あッ……ああぁ!!」
 その後、戒めを解き放たれた俺は、欲望のまま前を扱かれ、何度も頂点を目指した。
「克晴……克晴……克晴………」
 揺さぶられ、打ち付けられ、高められていく興奮状態の中で、俺を呼ぶ声が、いつまでも耳に付いた。
 
 
 最後なんて、覚えていない。俺はまた、途中で意識を手放した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 誰かにずっと抱きしめられていた気がする。
 時々俺を呼んでは、肩口に顔を埋めて………。
 この、感覚は……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 人肌の温かさが懐かしくて、眼を覚ました。
 恵が隣りに寝ているのかと、起きる瞬間、錯覚しそうになった。
 
「───────」
 ぼんやりした視界の中で、俺の横で眠っているのはオッサンだった。
 ………………。
 色々なことが、脳裏を掠めていく。
 
 ……思い出したくもない。
 俺は、深く溜息をついて、眼を瞑りなおした。
 
 
「………かつはる」
 オッサンの腕が伸びてきて、俺を抱き寄せた。
 寝言なのか起きてんのか、知る術もなく、俺はまた眠りに落ちていた。
 


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