chapter4. blood ceremony -血の儀式-
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「ん……ん………」
拙い克晴の動き。
苦しそうな、呻き声ばかりだ。
舌を動かすのが、精一杯のようだから、腰は自分で振った。
頭を掴んで咥えさせたまま、腰を前後させる。
「んっ───!」
嫌がる悲鳴が上がるけど、僕は手を離さない。
「もっと、唇締め付けて。克晴の蕾みたいにさ」
僕の声に、始めは反応するけれど、続けられない。すぐに、快感は薄らいでしまう。
「舌、サボっちゃ駄目だよ。先端は舐め続けて」
「唇搾ったまま、吸い上げて」
初めて咥える子に教えるみたいに、細かく指示した。
ヘタすぎる克晴の舌使い。
……そんな訳ないだろ。
恵君に、やってあげてた筈なんだから。
そんな嫉妬心が、なおさら僕を煽る。
そんなに、したくない?
そんなに、僕が嫌い?
そう思うだけで、胸が痛くて………
「う……! ぐ…」
吐きそうに喉を鳴らしたので、一回口から抜いてあげた。
激しく咽せ出した。げほげほと、喉の奥から絞り出すような咳を繰り返す。
腕が後ろに回っているから、身体を上手く支えられなくて。前のめりになって、うなじと背中を僕に見せていた。
後ろ手にくっついた、プレートも見える。その右手首に、今は包帯もない。時々それを外しては、手当をしていた。
プレートのおかげで、あの傷が見えないのは、僕にとっては助かることだった。
痛々しすぎるのと……命を張った、完全拒否。
あれを見ると、一々思い知らされる───
「克晴は、ずるいね」
咳が止まった肩を掴んで、起こさせた。
「…………」
辛そうに目を細めながら喘いで、必死に僕を見上げる。
「僕には、気持ちよくして貰ってるのに」
「────」
「僕を気持ちよくは、してくれないんだ」
克晴の顔が、青ざめていく。顔を横に振り出す。
「──誰が……」
咳き込みながら、声を絞り出した。
「誰が、頼んだよ!?」
怒りで、肩まで震えている。
「されたくて、こんな事されてんじゃねぇよ!」
「………」
「誰がしたがるかよ、こんなこと!!」
睨み上げてくる、その目。憎しみで真っ赤になっている。
大好きな克晴の眼だった。
───僕だって、ほんとは…!
僕も息を呑んで、奥歯を噛み締めた。
また思う…判ってる。
……特にこんなのは、慈しんでやる行為だ。
相手を“好き”ならばこその…。
こんなコトさせられて、好きになるヤツがいるか。
……僕だって、愛してくれなんて言えない。
そんなの、判ってる。
僕は……僕自身が、一番わかってる事なんだ。そんなの。
───でも、してほしかった。
僕のビジョンは、何でも二人ならではのこと。
だから、一人でやろうとするには、ムリがある。
やらせようとするには、もっと無理があった。
命令と服従……
そこには、憎しみだけが、生まれる。
「……わかった」
僕は、小さく呟いた。
「克晴、ヘタすぎ。……もうフェラはいいや」
克晴の膝から退くと、向かい合ったまま、その横に足を投げ出して座り込んだ。
「────」
同じ目線に揃ったその顔を、じっと見つめる。
手が不自由だから、口も拭えないでいた。首まで伝った唾液の跡が、艶めかしく光っている。
「…………」
その口元をぎゅっと結んで。
克晴は、ホッとして、それでも訝しむような、複雑な目の色で僕を見返してきた。
「立って」
「………?」
「早く立って、僕に跨って」
僕の命令に、戸惑って躊躇している。
後ろ手の体勢では、立ち上がること自体、難しいと思う。
緊張した顔で、僕を見つめてくるから、僕は容赦ない二択を突きつけた。
「また、口に突っ込んでもいいけど。克晴が…それが好きなら」
「────」
「それが嫌なら、早く僕に跨って……僕を受け入れて」
「………えっ!?」
小さく、口の中で叫ぶのが聞こえた。
どんどん顔が真っ白になっていく。
「…………」
唇を引き結んで、首を横に振り始めた。
「早く!」
厳しく怒鳴りつけると、身体をビクッとさせて、項垂れて──
「…………」
覚悟したように持ち上げたその顔は、唇を噛み締めて、憎しみでいっぱいの眼だった。
───克晴……
胸が、ズキンとした。
やっぱり、こうなってしまうんだ。
判っていた、悪循環。……それでも、僕は止められない。
克晴はよろめきながら、何とか脚だけで立ち上がって、僕の腰の上に跨ってきた。
「自分で開くのは、無理だよね。それは僕がやってあげる」
膝立ちの克晴の腰を、両側から掴むと、僕の勃っているモノの真上に来させた。
「あ……ちょ……待て…」
バランスが取れずに、上体がよろめく。膝を詰めて、少しずつ僕の上にあがってきた。
その後孔を、舐めた指で触った。
「ん……ぁあ!」
そのまま、ずぷりと押し込んでいく。
「ああっ!」
克晴の身体がしなった。
「やっ! やだ……やめろ!」
叫んで、腰を捩る。
「うるさいな。解さないと、つらいでしょ」
片手で腰を押さえ付けながら、2本目を入れる。
「……ぁああっ!」
膝がガクガクして、腰が崩れ落ちそうになっている。入った指を、ぎゅうぎゅう締め付けてきた。
───すごい。ほんと、克晴のはよく締まる……
「ほら、もうオッケーだから」
充分ほぐした後、指を抜いて腰を上げさせた。
ほとんど僕にぺたんと座り込んで、悶えていたから。
「………いいよ、克晴。ゆっくり腰を落として」
克晴の尻に両手を添えると、外側に引っ張った。
「………っ」
屈辱に顔を歪めている。眉間に見たこともないシワが寄った。
──その気持ち、僕もわかる。
…だから、さっさとやっちゃった方がいいんだ。
僕の暴走は、絶対止まらない。克晴の腰を誘導しながら、蕾に僕の勃立してる先端を押し付けた。
「ん……」
「いいよ、そのまま」
「………くっ……」
腰を落として、僕を咥え込んでいく。結合部がヤラシすぎる。
上下しながら、少しずつ呑み込んでいく様子は、僕が克晴に挿れる時より、よっぽど興奮した。
途中で何度も止まり、首を振る。
「中途半端は辛いよ。全部挿れて、僕に座っちゃって」
僕の声に、潤ませた眼をチラリと向けた。
「ぅ………はぁ……」
ゆっくり、息を吐きながら僕の熱い塊を、蕾の中に全部沈み込ませた。
「ふ……ぅ……」
克晴の体重を腰に感じたとき、ぎゅっと、締め付けられた。
「んっ……きつ……」
僕も呻いてしまった。
ベッドに身体を倒し、後ろに肘を突いて身体を支えた。この方が、楽だから。
斜めに克晴を、仰ぎ見る。
下から眺め上げたのは初めてだった。
痩せて、ますます胸から腰へと腹筋が搾られている。開脚で張り出した腰骨と、内股に浮き上がる筋が、とても綺麗だ…。
「カッコイイなあ、克晴……」
思わず呟いた。
真っ赤にした眼で、睨み付けてくる。
胸を張り、大股を広げ、乳首も、ペニスも、恥ずかしい部分を隠すことができずに僕に跨り、それでも気丈にも、平気な顔を作って。
その体内に今、僕を埋め込んでいるのかと思うと、めちゃくちゃ興奮した。
「……ッ」
克晴の目が細まった。
僕のが、大きくなっちゃったからだ。
「動いて、克晴」
「…………」
一瞬、泣きそうな顔に見えた。
一呼吸してから、恐る恐る腰を持ち上げている。
「………くっ……」
頬を紅く染めながら、悔しそうに口を噛み締める。
でもやっぱり、手が不自由なせいでバランスが取れない。
前のめりになりながら、やっと上下させた。
………うはあ、気持ちいい……
キツイから、ゆっくりでも充分イケそうだった。
顔のすぐそばで、はあはあという息遣い。それと、僕に捧げるように、突き出された胸の飾り。そこに片手を伸ばして触れてみた。
「…アッ」
身体が揺れて、倒れそうになる。
「やめ……まさよしっ」
僕を睨み付けながら、悶える。それでも弄くっていると、腰を捩りだした。
「やめ……やめろって! …あぁ……っ」
「ん……」
僕も刺激を受けて、また呻いた。痛いほど後ろを搾る。
気持ちよくて、僕はまたやりすぎてしまった。
倒していた身体を起こして、顔を胸に寄せる。硬く尖ったつぶに舌を這わせた。
舐めて、吸い付いて、尖りを刺激する。
「ぁああっ! やめろ……やめろ! 雅義、お願い───!」
「頼むから………やめて………」
ぞくりと、下腹が疼いた。
僕の肩口で……項垂れた克晴が、掠れ声でそう言った。
「俺……動けない……」